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第458話 乱れる足並み

「むむむ……ベンジャミンが言うように、このままでは交易都市同盟との戦いの功績の大半は、リクレールに持っていかれることになる」

「で、ですが隊長っ! いくらなんでもこんなところで味方同士で仲たがいして、西帝国を乗っ取ろうとしている奴らをみすみす生き残らせるのはバカげてます! 確かに俺は、ヴィクトワーレとの結婚は、是が非でも勝ち取りたいですが、挽回するチャンスはいくらでもあります!」


 ヴィクトワーレがどちらと結婚するかの競争は、すでに西帝国内の貴族や騎士たちの間で広く知れ渡っている事実であり、リクレールとザイドリッツの好敵手同士の一挙手一投足に、大半の人々の注目が集まっている。

 もしここで、リクレールが大幅にリードすることがあれば、有力者たちの中にはリクレールを応援し始める人が増える可能性は高い。


 だがザイドリッツとしては、西帝国の敵に利することをしてまでもリクレールの足を引っ張ることには否定的だった。

 敬愛する主君にして、大親友でもあるレオニスがこれから治める帝国を、個人的な感情で歪めることは本末転倒だと思っているのだ。

 しかし、ベンジャミンはあくまで冷徹だった。


「ザイドリッツの気持ちはよくわかる。しかし……もう一つの見方はできないだろうか」

「もう一つの見方?」

「ビュラン様、妙だと思いませんか? 我らがこうして必死になって城攻めを行っているにもかかわらず、なぜアルトイリス侯爵軍だけで、この短期間に普通であればありえない速度で敵地を占領できたのか……僕は、彼らに何かしらの裏があると考えています」

「すると、リクレールたちは何らかの方法で自由交易都市同盟に工作を仕掛けていて、レオニス殿下から許可を得たのを機に攻撃したということか……確たる証拠はないが、確かにそれなら納得はできる」


 皮肉なことに、リクレールたちの猛烈な活躍が、却って味方の疑心暗鬼を生んでしまったのである。

 確かにリクレールは都市同盟への攻撃のために事前準備を徹底したが、決して卑怯な手を使ったわけでも、敵側に内応者がいたわけでもないが、その場にいない者たちにしてみれば、何かしらの卑怯な手段を使ったとしか思えないのもまた事実であった。


「隊長、アルトイリス侯爵には申し訳ないですが、ここは我らも講和に賛成いたしましょう。アゴスティーニが敵方と内通している可能性は捨てきれませんが、今ここで都市同盟の商人たちを全滅させてしまえば、内乱の傷跡が深い今の西帝国は飢餓で屋台骨が折れることも考えられるでしょう。懲罰と言う意味でも、彼らが責任者を処罰のために差し出すと申し出ていますし、二度と帝国に逆らわないよう身の程を弁えさせたのではないでしょうか」

「そうだな……私もその意見に賛成だ。ザイドリッツ、肝心のお前はどう思う?」

「俺は正直、まだ納得はいっていないが、キトレルも重傷を負った上に遊牧民たちも負担が大きい。リクレールが功を焦るあまりこの戦いを引き起こしたのであれば、俺たちが付きあう義理はない」

「決まりだな。改めてアゴスティーニを呼び、我らは停戦命令を受諾すると伝えることにしよう」


 こうして、ビュランたちはアゴスティーニの目論見通り、クライペダへの攻撃を取りやめることを決断した。

 そして、今なお都市同盟への攻撃を継続しているアルトイリス軍にも、攻撃をやめるよう伝えに行くのだった。

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