↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
457/510

第457話 虎の威を借りる狐

「嘘だろう!? まさか殿下が、攻撃命令を撤回するなんて、その書状は本物なのか!?」

「ザイドリッツ殿、いくら其方とはいえ無礼であるぞ。この書状に押印されている、レオニス様の刻印が目に入らぬのか」


 あまりにも不自然なレオニスの心変わりに、ザイドリッツは書状が偽物ではないかと疑うも、アゴスティーニはまるでレオニスの威を借りるかのように、偉そうな態度でザイドリッツを咎めだした。

 その態度に一同は一気に敵愾心を抱いたが、レオニスからの書状が本物であることは疑いの余地もなかった。


「アゴスティーニ、貴様さては……」

「とにかく、殿下の直々の命令に逆らうことがあれば、そなたらとて反逆罪に問われかねないことは、肝に銘じるのだな」


 ビュランはアゴスティーニの態度から、レオニスを誑かした人物が目の前にいると半ば確信したが、彼にレオニスに逆らうなどできるはずもなかった。

 とはいえ、一旦要件の整理が必要だと言い訳をして、アゴスティーニを一時的に司令部から退出させ、改めてどうすべきか話し合うことにした。


「どうする……騙されたも同然とはいえ、レオニス様の命令に逆らうことはできんぞ」

「だが、自由交易都市同盟をここで潰しておかねば禍根が残ることは、リクレールからの情報でも明らかだしな。ここは一度ビュラン隊長が帝都に戻って、なんとか殿下に攻撃再開の許可をもらうしかないじゃないですかね」

「今はそれしかないか……ベンジャミン、お前はどう思う?」

「ビュラン様、そのことについてですが、つい先ほど別の伝令がやってまいりまして、新たな情報が得られました」

「別の伝令? どこからだ?」

「はい、それがアルトイリス侯爵からです」

「リクレールが? 一体何事だろうか」


 どうやらベンジャミンは、アゴスティーニが偉そうな態度をとっている間、リクレールたちからの連絡を受け取っていたらしい。

 彼はその内容に目を通していたようだが、その表情はあまり思わしくなく、ビュランはリクレールたちが自分らと同じく苦戦しているのかと思ったのだが……書状に目を通した途端、ビュランはレオニスからの書状以上に驚愕することになる。


「な……なっ!? これは、どういうことだ!? こんなことがあり得るのか!?」

「ど、どうしたんです隊長?」

「アルトリス軍は……アマンディを攻め落としただけでなく、昨日、ハキナトリアの南区画を占領したとのことだ」

『はぁっ!?』


 ザイドリッツを初め、諸将は自分の耳を疑った。

 自分たちはクライペダを攻撃して5日経過し、未だに攻略の足掛かりすらつかめていないのに、彼らはなんとハキナトリアの半分を攻略したというのだから、いくらなんでも信じられるものではなかった。


「その知らせは本当なのか!? 本当だとしても俄かには信じられん、かといって、噓であるなら、何のために嘘をつくのかわからん!」

「ビュラン様、そのお気持ちはお察しいたします。僕も偽情報の可能性があると、伝令に色々問い詰めたのですが、どうも内容は本当らしいと」

「ま、まあまあ、本当なら本当で別にいいじゃないか! レオニス様にはあともう少しで交易都市同盟を滅ぼせるって説得できるし、味方が大いに有利なのは嬉しいことだ!」


 根が素直なザイドリッツは、仮に伝令の内容が本当なら、自分たちにとってもいいことずくめだと考えているようだが、ベンジャミンはそうは思っていないようだ。


「ザイドリッツ、それにビュラン様……もしこの内容が本当であれば、我らにとっては非常に拙いことになります」

「拙い事? なぜだ?」

「我らがここで苦戦している間に、アルトイリス候は一方的に功績を挙げたということは……ザイドリッツとヴィクトワーレ様の結婚が遠のくことを意味するのですよ」

『!!』


 ベンジャミンの指摘で、ビュランとザイドリッツは初めて事の重大さに気が付いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。