第438話 消えた商人たち
「連中め、一体どこに姿を消した! キトレル、君の方はどうだった!?」
「残念ながら……私たち遊牧民は、平原で獲物を追うのを得意としておりますが、このような複雑に入り組んだ建物の間を探すのは、とても……」
「このあたりが潮時ってとこですかね、隊長。あとは警備兵らに任せ、我らは次の作戦に移りましょう。幸い、奴らの物資も、保有していた商船も、すべて我らの手中に収めましたし、もはや何をする力も残っていないでしょう」
「それもそうだな。このようなところで無駄な時間を消費するのは愚策だ」
ザイドリッツの進言に頷いたビュランは、キトレルと共に部下を率いて撤収する。
彼らにしてみれば、タイラスルスの都市同盟系商人の掃討は、本命の作戦の前準備にすぎないのだ。
以前述べた通り、自由交易都市同盟には拠点となる5つの港町があり、地図の北側から順に、帝都タイラスルスより北方に位置する海峡都市エーレスンド、帝都のやや南に位置するクライペダ、ミッドルタ大河の河口に位置する大都市ハキナトリア、そこからやや南に位置する最も小規模な港町アマンディ、そしてブレヴァン侯爵領があるあたりに位置するロンブローゾである。
リクレールが提案した作戦としては、最終的にハキナトリアを孤立させるために、隣接するクライペダとアマンディを攻め落とし、1回の航海で寄港できる場所を失わせた後、腰を据えて本拠地攻略に望む予定だ。
エーレスンドとロンブローゾについては後回しになってしまうが、ハキナトリアさえ落とせばその2都市は機能を停止するため、攻略する必要は薄いと判断された。
また、ハキナトリア自体にも陸路からの補給を遮断するために、ユルトラガルド軍が動き出しており、すでにハキナトリアへと続く主要街道の封鎖が始まっていた。
「シャルン、リクレール、俺たちは街道封鎖を開始した。お前たちの方も頼んだぞ」
「任せとけよ親父! 奴らに痛い目見せてやる!」
「もしかしたらブレヴァン侯爵の娘さんが都市から脱出するかもしれません。もし見かけたら、最優先で確保をお願いします」
「ああ勿論だとも、奴らには散々煮え湯を飲まされた、見逃す理由は、ねぇ!」
リクレールとシャルンホルストは、ハキナトリアへの対応をランツフートに任せると、自分たちは学生らと共にアルトイリス軍3000人を率いて、港町アマンディへと進軍した。
ここまでで、レオニスが自由交易都市同盟に宣戦布告してから5日が経過していたが、これはむしろ驚くべき速さであり、ただでさえ共和制という政治的判断が遅いシステムを導入している都市同盟は対策を立てる暇すら与えられなかった。




