第436話 囚われのフランシール
フランシールが、他の破滅した者たちと違ったのは、自分が危機に陥ったとわかった際、瞬時に「自分の行動が甘かったせいだ」と認識したことだった。
ただ単に避難所のようにジオーネ商会に滞在している間に、もっと危機感を持って動いていたらこのようなことにならなかっただろうと思うと、フランシールは自分の無能さに涙が出そうなほどだった。
「くっ……私がフォルゴーレ達に甘えすぎたから、こんなことに……」
「いえ、諦めるのはまだ早いですよ姫様。もし、まだ生き残りたいという気持ちがあるのであれば、どうかこの私を信用いただけないでしょうか」
「……どういうこと?」
「姫様には少々辛い思いをしていただきますが……もし、私の策に乗っていただければ、アルトイリス軍が来る前に姫様をこの町から脱出させて見せましょう」
「わかったわ、一か八か、あなたを信じてみる」
その後、二人は少し相談した後、フォルゴーレは商会の執務室にいる父親のムジェロに声をかけた。
「父さん、今少しお時間よろしいでしょうか」
「フォルゴーレか……私はこれから緊急の評議会に赴かねばならん。何かをしている暇はないのだが」
「まさにそのことで相談なのですが、父さんの不在の間、フランシール様が逃亡しないよう、彼女を地下に監禁する許可をいただきたいのです」
「なに?」
フォルゴーレの申し出に、ムジェロは眉をひそめる。
「我が商会はブレヴァン侯爵家と関係が深かった故、こうしてフランシール様の身柄を預かりしていますが……もし「例のこと」があの方の耳に入った場合、逃げ出さないとも限りません。その場合、交渉材料をみすみす逃したとして、我が家は執政官の地位を剥奪されるかもしれません」
「なるほど、よく気ぞ気が付いた我が息子よ! では、留守の間にフランシールを逃さぬよう、地下牢を使うとよい。これが地下牢のカギだ」
「確かに受け取りました。それと、もしもの時に備え、見張りとしてレガーミさんをお借りしたいのですが」
レガーミとはジオーネ商会が雇っている用心棒の一人で、凄まじい長身で筋肉質な女性剣士だ。
「うーむ、レガーミまで必要かどうか……」
「フランシールさんは親があのような方でも、かなりアグレッシブですので、それなりに武闘派です。僕だけでは万が一のことがあった時に抑えきれません」
「そうだな、分かった。保険をかけておくことは重要だからな。それでは、私はもう行くから、逃げ出さぬようきちんと閉じ込めておくのだぞ」
こうして、フォルゴーレは父親のムジェロから邸宅の地下牢のカギを受け取ると、レガーミを伴ってフランシールを中庭から連れ出し、地下牢へと押し込めたのだった。(なお、地下牢は主に密かに仕入れた奴隷などを閉じ込めておくために使われる)
大勢の使用人たちが唖然と見守る中、フランシールは喚きながら長身の女性剣士レガーミに連行され、地下へと姿を消した。
これを見たムジェロは安心して評議会に出席するのだが……これこそが、フォルゴーレの狙いだった。




