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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第429話 僭称者の末路

 楽しいことが終わると、次は辛いことが待っている。

 もっとも、世の中にはこちらの方が楽しいと言う人もいるものだから、分からないものである。

 少なくともリクレールは、慣れたとはいえちっとも楽しいとは思わないし、これから先も思うことはないだろう。


「これより、自ら皇帝を僭称し、帝国を内乱へと陥れ、人心を惑わした稀代の極悪人マルセランとその一族、および彼に従いて国を乱した悪心逆賊の処刑を執り行うものとする! 獄吏、罪人どもを柱に括り付けよ!」


 中年の文官が仰々しく口上を読み上げると、厳つい兵士たちが、マルセランや生き残りの一族、そして彼に従った貴族や騎士たちを、乱暴に引っ張り出してきた。

 まず、今まで地下牢に厳重に閉じ込められていたマルセランは、トライゾンがそうさせられたように粗末な食事しか与えられず、身を清めることすら許されなかったため、少し前まで玉座に座っていた男の姿とは思えないほどボロボロにやつれ、その見た目はまるで乞食のようであった。


「いやっ! どうして私がこのような目に遭わなきゃいけないの!? 私は、何もしてないのにぃっ! お願い……誰か助けてください……、何でもしますからぁっ!」


 マルセランの横で嫌々と首を振るいながら泣き叫ぶのは、マルセランの娘の一人にして、トライゾンの妻、そしてあのアヴァリスの母親であるエーゼリンだ。

 トライゾンはエーゼリンを戦場に連れていくわけにもいかなかったので、帝都に留め置き、トライゾンの代わりに皇帝のご機嫌伺いやほかの貴族との折衝に努めていたのだが、トライゾンとアヴァリスが生死不明という報告を聞いてからショックで寝込んでしまい、その後のクーデターでも何もしないうちに捕らえられることになる。

 いつぞやのフォントラル侯爵夫人とは違い、エーゼリンは本当に「何もしていない」と言っていいのだが、だからと言って反乱のトップに立た男の娘、そして首謀者の妻を生かしておくことはできなかった。

 本来であればトライゾンやアヴァリスも、この処刑の列に加わるべきだったのだろうが、彼らはリクレールの手によって既にあの世に送られているため、この場にはいない。


 反乱に加担したとされる貴族や騎士たちは、張本人はもとより、寝返った一部の者を除き一族全員が刑に服されることとなる。

 内乱罪というのはそれほどまでに重い罪であり……最終的に刑の対象となった人数は実に1000人近くに達したのだった。


「なぁ……本当に、彼ら全員を、殺すのか? せめて、子供くらいは許してやるべきでは……?」

「いいえ、それはなりませんレオニス様。お優しいレオニス様には辛いと思いますが、帝国への反乱は、その首謀者だけではなく、関係者すべてに責任を問うのが習わしなのです」


 処刑を見守ることになるレオニスは、傍らに控えるビュランをチラリと見やりながら「わかっているが……」と言葉を濁す。


「リクレール、そなたは……」

「僕もビュランさんと同意見です。ここできちんと処罰しなければ、今後も軽い気持ちで反乱を起こす人が現れかねません。許すなんてもってのほかです」


 リクレールにまでこう言われてしまうと、レオニス個人ではもはやどうすることもできなかった。


 そうこうしているうちに、普段は訓練場として使われる広場にずらりと並んだ木の柱に、マルセランたちの身体が縛り付けられて、足元に乾いた藁の束がどっさり積み上げられていく。

 今までずっと視線が地面に固定されたかのように項垂れていたマルセランだったが、ふと何を思ったか顔を上げると、視線の先にいるレオニスを、長く垂れ下がった前髪の間から覗く瞳でじっと見つめてきた。

 口も開かず、一言もしゃべらず、ただただじっと見つめる……その視線があまりにも不気味だからか、レオニスは思わず背筋に寒気を感じた。

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