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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第428話 僕だってできない

「待たせたな二人とも、ようやく私の中で考えがまとまった」


 アゴスティーニから献策されたレオニスは、改めてリクレールとザイドリッツの前に立った。


「まずリクレール、そなたの方がヴィクトワーレと古くから付き合いもあると聞いているから、婚姻を認めてやりたいのは山々だが……やはり年齢がまだ若すぎる。それに、立場的にもあまりにも有利しぎてザイドリッツに対し不公平ともいえる」

「不公平……」

「だがザイドリッツの方も、今のまま婚約を強行しようにも、ヴィクトワーレ本人が拒んでいる以上私としても後押しするわけにはいかない。いくら男同士の約束は重いとはいえ、嫌がる女を無理やり手籠めにするのは賊と変わらん」

「これは手厳しい……」

「ここはお互いが公平にアプローチできるよう、私から以下の条件を命じよう。まずヴィクトワーレ、そなたの意思を束縛するのは心苦しいが、今後3年は双方と「婚約」でとどめ、婚姻はしないこととする。リクレールも結婚するのであれば17歳であれば何とか周囲の理解も得られるだろうし、3年もあればザイドリッツの為人も十分わかる頃だろう。その時改めて、ヴィクトワーレ自身がどちらと婚姻を結ぶか、はたまたそれ以外のものと結ばれるでも構わない、自由に決めるとよい」

「左様でございますか……わかりました、ほかならぬレオニス殿下のお考えであれば、受け入れます」


 やや強引な案ではあったが、ヴィクトワーレがどちらと結婚するかを決めるのは3年後ということになり、その間リクレールとザイドリッツは恋のレースで相手に勝つ必要が出て来た。

 リクレールとザイドリッツは、改めてお互いに顔を見合わせた。


(ザイドリッツさんとは仲良くしたかったんだけど、トワ姉を取られるというなら話は別だ。僕には、トワ姉が必要なんだ)

(約束の形は変わっちまったが、これはこれで面白い。俺の方がヴィクトワーレさんにふさわしいと認めさせ、なんとしてでもビュランとの約束を実現してやらねば)


 いつの時代も、女を巡る争いは男の総力戦と相場が決まっている。

 そして、これが原因で国が分裂するという愚かな歴史は、過去から幾度も繰り返されてきた。

 もし……この二人の争いがなかったら、西帝国の歴史はまた違うものになっていたかもしれないが、この時の当事者たちにそこまで思い至る余裕などなかった。


 リクレールとザイドリッツが、今後3年でどちらがヴィクトワーレを娶れるか競い合うことは、その日の大宴会でも正式に発表され、出席していた者たちに伝えられた。

 リクレールとザイドリッツがヴィクトワーレに思いを寄せているという情報は、すでに宮殿内でも周知の事実であったので、特に驚きはなかったものの、3年後の婚姻をどうするかについては人々の間で大いに議論されることになる。

 また、今回の戦いでリクレールもザイドリッツも大きな功績をあげ、次期皇帝からの覚えも目出度いということで、宴会中は多数の貴族たちが二人の元にひっきりなしに訪れ、その対応に追われることとなった。


「リクレール様……いえ、アルトイリス侯爵閣下! 此度の戦いの活躍は都の誰もが知るところとなっております! まだ若いにもかかわらず、見事な戦いぶり、吟遊詩人たちもすでに閣下をたたえる歌を町中で披露していますぞ!」

「某に出来ることがあれば何でもお申し付けくだされ! これからの西帝国を担うリクレール様をお助けすることは、それすなわち次期皇帝陛下のお心にもかなうことでございます!」

「コンクレイユ候の姫君を巡って、功を競うとのことですが……実はわたくしの家にも、ヴィクトワーレ様ほどではございませんが、親から見てもなかなか器量のよい娘がいましてな。後日ぜひご紹介にあずかりたいと……」

「いやはや、リクレール様のようなお方がマリア様の後を継いで、アルトイリス侯爵家も、西帝国も、大安泰! リクレール様に万歳! 新しい皇帝陛下にも、万歳!」

(まったく……調子がいい人ばっかりなんだから)


 出来ればともに戦った仲間たちと一緒に宴会を楽しみたかったリクレールだったが、次々に挨拶に来る貴族たちの好意を無碍にするわけにもいかず、食べ物に手を付ける暇すらなく、ひたすら彼らと言葉や握手を交わし続ける。


 また、ふと見ればシャルンホルストも、リクレールと共にブレヴァン侯爵軍を打ち破った若き将軍ということで持て囃され、これまた大勢の人々に揉みくちゃにされていた。

 一瞬目線があった時、シャルンホルストは「助けてくれ」と目線で訴えていたが、リクレールも「僕だってできない」と返すほかなかった。

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