表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
424/429

第424話 あげません!

 リクレールとヴィクトワーレたち、そしてビュランとザイドリッツたちが鉢合わせしたのは、ちょうど宮殿の中心部に位置するだだっ広い廊下だった。

 常に大勢の役人や兵士たちが行きかう、宮殿のメインストリートと呼ぶべき場所で両陣営がタイミングよく相対することになったせいで、文官武官問わず注目を集めることになり、周囲に次々にやじ馬が集まってきた。


「おいさしぶりです、ビュランさん」

「リクレールか、久しいな。以前顔を見たのはまだ士官学校に行く前の頃だったな。姉のことは無念だっただろうが、そのような逆境にもめげずアルトイリス家を切り盛りしているようで何よりだ。だが――――」


 突然ビュランがリクレールの下腹部目掛けて拳を繰り出すも、リクレールは素早くその上からビュランの腕を制した。


「いきなり何するんですか」

「なにっ!?」

(え、エスペランサ……今の良く止めれたね!?)

『この程度は見切れて当然ですわ。ヴィクトワーレ様の御兄さまと言えども、主様への狼藉は許しませんわ』


 エスペランサが反応したおかげで、出合頭にリクレールに腹パンしようとしたビュランは自分の拳が止められて驚愕した。

 どうも、ビュランもまたリクレールの情報がかなり前の弱いころのままアップデートされていないようだ。


「ビュラン兄さん! 久しぶりに会ったリクレールに拳を繰り出すなんて、何考えてるの!」

「ビュラン、阻止されたとはいえ今のは流石にやりすぎだ」

「くっ……すまん、つい」


 おかげでヴィクトワーレとベンジャミンに暴力はいけないと諭されることになり、面目を失ったビュランの代わりにザイドリッツが前に出て来た。


「すまない、隊長が失礼した。俺がエスマイル伯爵ザイドリッツだ、失礼だが、君が噂のアルトイリス侯爵なのか?」

「あなたがザイドリッツさん…………いかにも、僕がアルトイリス侯爵のリクレールです。ザイドリッツさんの話は、キトレルさんから聞いています。想像していたより、すごく立派な方で驚きました」

「ははは、それはどうも」


 アルトイリス侯爵リクレールと、エスマイル伯爵ザイドリッツ。

 後に西帝国内でお互い好敵手として、幾度に渡ってぶつかり合うことになる二人の初顔合わせは、比較的穏やかで、お互い相手に予想以上に好印象を持っていた。


(この人が、トワ姉に一目ぼれしてプロポーズしたって言う……レオニス殿下をずっと守り抜いてきただけあって、すごく堂々とした偉丈夫だ。男の理想と言ってもいいくらい……これは、僕もうかうかしていられない)

(この子が、ヴィクトワーレの言っていた心に決めた婚約者、リクレール。随分と年下の男に好意を寄せているようだが……本当にこの子が、コンクレイユ候に策を授け、ブレヴァン侯爵軍の主力を一方的に壊滅させたのだとしたら、底が知れないな)


 目と目が合った瞬間から、お互いがただものではないと認識した二人は、数瞬無言が続いたが、先に口を開いたのはザイドリッツの方だった。


「リクレール、もしかしたら話は聞いているかもしれないが、君もヴィクトワーレさんと婚約したと主張する気なのかな」

「……もちろんです。トワ姉は、マリア姉さんが亡くなってからずっと、僕のことをマリア姉さんの代わりに守ってくれて、気を配ってくれて、そして慰めてくれました」

「慰める……」


 何やらザイドリッツに引っかかる単語があったようだが、少なくとも彼が想像しているようなことはまだ起きていない。


「まだ弱い僕にはこれから先もずっとトワ姉のことが必要なんです! それに、トワ姉もその……僕のことを大切に思ってくれる。そしてこれからも、トワ姉にはずっと隣にいてほしいから…………」


 そこまで言い切って、リクレールは軽く息を吸って、カッと目を見開くと――――


「トワ姉は、あげません!!」


 ザイドリッツに向って、力強く言い放ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ