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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第419話 国か想い人か

 リヴォリ城から帝都に向かう道すがら、リクレールら一行がとある町で宿泊した時、ヴィクトワーレは寝る前にふと思い立ったことがあり、部屋を抜け出して町からやや離れた高台の上で、ただ一人思いにふけりながら夜空の星を眺めていた。


「あの時エスペランサは、リクに帝国を乗っ取るように促していた。どこまで本気かわからないけど……リクがそれを否定したことはわかってる。けど、もし今後リクが心変わりして、帝国を私物化しようとし始めたら、私はリクを止められるんだろうか…………」


 確かにヴィクトワーレにとってリクレールは家族と同じくらい大事な人だし、キスまで交わした間柄だが、それはそれとして、彼女自身はコンクレイユ騎士団を率いる将であり、西帝国に仕える臣下であることに誇りを持っている。

 今までは考えもしなかったが、もし帝国とリクレールを天秤にかける日が来るとしたら、ヴィクトワーレはどちらを選ぶべきなのだろうか?


「というかそもそも、仮にリクが魔剣の意思に飲まれて、暴走するようなことがあったら……私が止められるの? マリアが、そして私にとっても、すごく大事な……」


 リクレールは最近、ことあるごとに「最悪の事態を常に想定しておかないと」と口癖のように言っている。

 ヴィクトワーレもまた、リクレールにとっての最悪な事態に備えておくべきなのか、悩ましいところだった。


「できればリクには、道を違えてほしくない。そうしないようにするために、リクをサポートするのも私の役目かもしれない」


 そのようなことを考えていると、ヴィクトワーレが見上げる夜空に流星が流れた。

 しかも、一筋だけでなく、複数の光の線が空を横切っている。

 どうやら小規模な流星群が偶発的に発生したようだが、ヴィクトワーレは何となく自分の願いに、天が応えてくれているかのように思えて来た。


「そうだ、もうこれ以上、大切な人を失なわないためにも、リクのためにも、帝国のためにも、頑張らなきゃっ!」


 そう決意するヴィクトワーレだが、皮肉にもこの願いを自身に誓ったのがこの日が最初で最後となってしまうのだった。


 ヴィクトワーレがエスペランサに自らの真意がばれないよう、夜中にこっそり思いを吐露してから3日後、一行は帝都タイラスルスの城門をくぐった。

 今回の帝国内乱では一番最初に戦闘が巻き起こった場所であり、城下のいたるところで第二皇子や第三皇子派閥、そしてそれを鎮圧しようとしたマルセラン旗下の帝国軍が衝突した結果、そろそろ半年たとうとしている今となっても、戦いの爪痕が残っているのが見て取れた。

 さらに、先日のクーデターでも蜂起軍と親衛隊の間で戦いが起こったらしく、宮殿の入り口付近の損傷が激しい。

 それでも…………帝都に住む人々の顔は明るく、希望に満ちていた。

 行方不明になっていた本来の後継者であるレオニスが戻ってきただけでなく、彼らは帝都に被害を出さないために蜂起軍と交渉して、無血開城を実現したことで、市民たちの不安が一気に取り除かれたことと、何よりこれで今後は戦いに巻き込まれる恐れがなくなったのが大きかった。


「レオニス様万歳! 正当な次期皇帝陛下がお戻りになられて、本当にうれしい限りでございます!」

「これからはレオニス陛下の下で平和に暮らせますように……ああ、神よ感謝いたします」

「僭称者マルセランは帝国に忠誠を誓う諸侯によって捕らえられたそうだ! 帝国を私物化しようとするから、罰が当たったのだ!」


 平民たちは口々に帰還したレオニスを称え、捕らえられたマルセランを卑下していた。

 もっとも彼らは半年前には、第二皇子と第三皇子による帝都内での戦闘を鎮圧したマルセランを次期皇帝として讃えていたが、彼らの頭にそのような記憶はもはや微塵も残っていないだろう。

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