第418話 真の野望
『全くをもって不十分でございます。これでは、将来的に西帝国を乗っ取る算段が破綻しかねませんわ』
(ちょっ!? 今聞き捨てならないことを言ったね!? なんで僕が西帝国を乗っ取るの!? 暴君になることと関係ないんじゃない!?)
『それはもちろん、主様のやることが西帝国皇帝なる者に振り回されることを危惧しているからですわ。かくいうお姉様も、主様のご両親も、帝国の都合に振り回されたがゆえに戦死したとも言えますでしょう。もちろん、西帝国自体をお姉さまの仇というつもりはございませんが、皇帝と諸侯はいわば騎手と馬の関係ですが、だからと言って主導権を握らせるのは危険でございます。幸い、次期皇帝陛下はユルトラガルドの家系に連なる方ですので、ユルトラガルド家とコンクレイユ家をアルトイリス家の影響下に置けば、帝国自体を思うままにすることも可能となるでしょう』
(それは、いくらなんでも…………僕に、トライゾンのようになれってことじゃないか!)
エスペランサのとんでもない構想を聞かされたリクレールは、心の中でエスペランサと口論しているが、横にいるヴィクトワーレも漏れ聞こえる会話を聞いて、不安でいっぱいだった。
(リク……だから言ったのよ。あまり、エスペランサを信用しすぎないでって……これは、私が一生リクについてあげないと危ないわ。そう、一生…………)
二人が黙り込む間にも、ランツフートとキトレルの話は進み、結局3日以内に準備を整えて帝都タイラスルスに赴いて、次期皇帝となるレオニスに拝謁することが決まった。
キトレルは準備ができるまでの間はリヴォリ城にとどまり、リクレールたちが帝都に赴く時に案内として同行することになるという。
「聞いたかお前たち、大変なことになったぞ。リクレールも、シャルンも、そしてトワも、急いで用意をしてくれ」
「わかった、俺も士官学校の友人たちに掛け合って、動けるやつをできるだけ動員してみる。リクはすまないが、そっちの家臣たちやコンクレイユ軍の支度を助けてやってくれ」
「うん!」
こうして、彼らは慌ただしく帝都行きの準備を進めることとなった。
ヴィクトワーレは急かに出していた配下の騎士たちに緊急招集をかけ、リクレールやシャルンホルストもリヴォリ城内でつかの間の休息を満喫していた学生たちを急いで呼び戻した。
彼らは最初こそ休暇が短くなったことに少々不満そうだったが、帝都がレオニスの手に戻ったことで、内戦がおおむね集結したと知ると、たちまち目の色を輝かせた。
特に士官学校の生徒たちにとっては、いつ命を落とすかもわからない戦いの日々が終わったことは大変喜ばしく、大多数の者たちは懐かしの士官学校に帰る日がようやく来たことに安堵するのだった。




