第417話 帝都奪還
「ははは、今どきの子供らは謙虚だな! 謙遜は美徳だが、時には自分の手柄も主張しないと、他の小狡い奴に横取りされちまうかもしれんぞ!」
息子たちのことをレオニスがきちんと評価してくれていることにご満悦なランツフート。
彼らの照れ顔を横目で見つつ、レオニスから送られてきた書状に目を通していく。
内容は予想通りランツフートたちの奮闘を労う文章と、用意が出来たらで構わないのでこちらに合流してほしいということが書かれていた――――のだが、読み進めているうちに、ランツフートの眼がぴたりと止まる。
「あー、使者殿……キトレルと言ったな。この書状には俺たちに「帝都に来てほしい」と書いてあるんだが……これは、正しい内容なのか?」
「帝都に?」「来てほしい?」
傍にいたリクレールとシャルンホルストが、ランツフートの言葉に首を傾げた。
数日前に聞いた話では、レオニスたちの軍はクサーマトン城にいると聞いており、合流するとしたらクサーマトン城に赴くことになるだろうと思っていたが、帝都への招集ということはそれすなわち……
「はい、間違いございません。ああ、そう言えばお伝えし忘れておりました。3日前、帝都タイラスルスにおいて、僭称者マルセランに従っていたはずの貴族や騎士たちがクーデターを起こし、マルセランとその一族を捕らえました。帝都からはアゴスティーニという者が貴族たちを代表して我々の元にやってきて、マルセランが不当に所持していた皇帝の権威――――杖と剣、そして冠を差し出すのと引き換えに、無血開城と相成ったのです」
「ま……まさか、帝都が無血開城するなんて!」
「そ、そうかそうか! そうだったのか! 帝都を戦火に晒すことなく奪還することができたとは実に目出度い! これも全て、レオニス殿下の威光によるものであるな!」
帝都の攻略には時間がかかるだろうと踏んでいた、ランツフートやリクレールたちは、まさか戦闘が行われることなく帝都が陥落したと聞いて驚きを隠せなかった。
リクレールもブレヴァン侯爵家の首都セダン城を無傷で落としたが、あれはそもそも圧倒的軍事力差で脅した成果であり、まさか敵が内輪もめの末に僭称者と言えど皇帝となった男の身柄を拘束して、それを手土産に降伏なんてことが起こりうるとは微塵も思っていなかった。
『主様、どうやら最後の最後でとんでもないどんでん返しをされましたわね。さすがのわたくしも、そこまで敵の結束が緩んでいるとは思ってもいませんでした』
(で、でもエスペランサ。これで予想よりかなり早く戦争が終わったとになるよね! だったら、喜ばしい事なんじゃない?)
『いいえ主様、これは少々面倒なことになりそうな予感がしますわ。此度の戦いで、反乱軍の主力を叩き潰し、リヴォリ城を解放したことで主様が功績で他を圧倒すると思っておりましたが……北方戦線での想定外の快進撃に、帝都の無血開城、これらの出来事は場合によっては主様が獲得した功績より、更に評価される可能性がございますわ』
(僕は別にアルトイリス侯爵をそのまま継ぐ許可を得られれば、それで十分だと思うんだけど)
リクレール自身は相変わらず自身の功績にやや無頓着のようだが、エスペランサはリクレールの言葉に強く首を振った。




