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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第415話 あの子が欲しい

 ヴィクトワーレやクラスメイト達に諭されたことで、リクレールは決闘の翌日もしばらくは公務を保留にして体を休めることに専念した。

 朝ものんびりと起床し、朝食を食べたらその場で昼までクラスメイト達と駄弁り通し、午後はヴィクトワーレとその部下の騎士たちと共に、活気を取り戻した市場で買い物を楽しんだりした。

 もっとも、シャルンホルストたちとの雑談も、興ついが乗ってくると政治談議や戦術論の話に逸れそうになったり、市場でもついつい商品の価格を比べてしまうなどして、そのたび必死になって自重するなどしたが、ともあれ緊張からある程度解放されたことで、リクレールの顔には笑顔が戻ってきた。


 そして、夜の祝賀会には一時的に任務から戻ってきた「紫鴉学級の秘密兵器」ことダーレンも加えて、士官学校生徒全員で過酷な戦いを生き残ったことを祝いあった。


「やったなダーレン! お前のくれた情報のおかげで、俺たちは何度も命拾いしたぞー!」

「お前たちこそ、こんなに生き残ってくれてて助かったぜ! 俺だけ安全なところで生き残ったとあっちゃ、男が廃れるからな! それにリク、お前の物騒な噂が港町まで流れてきて、どんな悪魔になったんだと思ったら、今まで通り花飾りの似合いそうな男っぷりで安心したゾ!」

「それは褒めてるのかなぁ……でも、僕からもお礼を言うよ。貴重な情報を集めてくれただけじゃなくて、ブレヴァン侯爵家の生き残りの情報を集めてくれるなんて。アルトイリス侯爵を代表して、特別なプレゼントを上げたいくらいだ」

「いやー、それほどでも……」


 他のクラスの生徒たちからはやはり「あんな奴いたっけ」と言われるほど影が薄いダーレンだが、リクレールやシャルンホルストとしては、彼の情報が戦局を左右することも多かったため、今回の殊勲賞を上げたいほど感謝していた。


『主様、この男は非常に貴重な人材ですわ。逃す手はありません、この際贈り物攻勢をしてでもわが軍に迎え入れるべきでしょう。逆に、他国の手に渡ったら危険ですわ』

(エスペランサはすぐ人をモノみたいに扱うんだから……けど、その意見には賛同だ。シャルも狙っているかもしれないけど、この先専門の諜報部隊を作ろうと思っているから、ダーレンはぜひ手元に置いておきたい……)

(リクの奴随分熱心に口説くじゃないか。さてはダーレンを狙っているな? うちとしてもダーレンがいてくれると助かるんだが、どうすっか……)


 珍しく親友二人が一人の「男」を巡って水面下で火花を散らしていたが、ほかの生徒たちはそんなことに気が付く由もなく、もう完全い戦いが終わったかのように暢気にはしゃぎながら、思う存分宴会料理を口にするのだった。

 どうにかしてダーレンを譲ってもらえないか思案しながら、リクレールも宴会料理を口にしていたところ、思いの外美味しく、彼にしては珍しく次から次に口に運んでいた。


「うん、このパスタ凄くおいしい! これってきっと海鮮の味だよね、僕これ好きかも! シャルの家の料理人さんが作ったのかな?」

「このパスタか? どうだろう、俺もよく知らないな」

「あのっ、そのパスタは僕が作ってみました! えへへ、先輩たちに褒めてもらえるなんて、作った甲斐がありました!」

「アウグスト君……まさか君が、この人数分作ったって言うの!?」


 リクレールが特に気に入った、海鮮系の素材で作ったスープパスタは、なんと紫鴉学級最年少の衛生兵アウグストが作ったものだという。

 アウグストは今回の戦いでは地味ながらも縁の下の力持ちのような活躍を見せていた。

 戦いではもちろん衛生兵として、傷ついた味方を治療術で回復させることで戦線維持に貢献したし、何より陣地で食事の調理を担当をしていたのは、彼が東帝国から率いてきた施療院の者たちだったのだから、その貢献は計り知れない。

 また、噂によれば、危なくなった味方をその小さな体でメイスを振るって守ったこともあるとか……


(治療もできて、後方支援もぬかりない……新入生なのに、すごく将来性がありそう! どうしよう、アウグスト君も欲しくなってきた……)

(こいつ、アウグストにまで色目使い出しやがったぞ。人が足りねぇのは分かるが、少しは俺にも有能な人材分けろ)


 この日は珍しく、シャルンホルストは親友のリクレールの人材漁りの節操のなさを忌々し気な目で見つめることになった。

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