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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第413話 感謝の気持ちは金貨の形

「なるほど……ガムランたちは、僕たちがセダン城を陥落させたタイミングを見計らって、リヴォリ城の人たちに不足している物品を売りつけたと。なんというか、相変わらずさすがの嗅覚だね」

「売りつけたとは人聞きが悪いですなリクレール様。現にリヴォリ城は長期間の包囲により物資が底をつきかけておりましたゆえ、地元の商人や貴族たちからは、大いに感謝の気持ちを受け取りましたぞ!」

「その「感謝の気持ち」は金貨の形をしているんだけどね」

「だ、大丈夫ですよ侯爵様っ! 私たちは決してぼったくったりはしていませんよ! ……とはいっても、ちょこっとお気持ち上乗せさせていただきましたが」

「まあ、あまりがめつく利益を貪らないようにね。それで恨みまで買われちゃったら、元も子もないし」

「勿論ですとも! 交易都市同盟の商人らと異なり、我が傘下の商人たちは根こそぎ搾り取るような真似は致しませんぞ!」


 あの後、5人はリクレールの部屋で夕食を食べることになり、特にガムランたちがこの場にいる理由を改めて聞いていた。


 ガムランたちはリクレールが戦っている間も、全軍の補給が絶えないよう物資輸送の手配をしていたと同時に、多数の人口を抱えるリヴォリ城は籠城で深刻な物資不足に陥ることが予想されていたため、予め生活必需品を優先的に運び入れる算段を整えていた。

 ここまではリクレールが計画していたことなので特に問題なかったが、流石は商人一家の家系であるガムランは、前線から送られてくる情報からリヴォリ城の包囲が終わる時期を予測し、リクレールすら予想していなかった速度で物資を運び込んだのだから驚きである。

 案の定、リヴォリ城は50万人以上という膨大な人口を抱えながら数か月に及ぶ包囲攻撃に晒されたため、食料の備蓄は別として、塩や油、木材、布製品、そして酒などあらゆる物資が底をつきかけており、ゼルモスやカドマー達の商人たちが運び込んだ商品は、市場に並べられるや否や、いつもより高値であろうとも猛烈なスピードで売れていったという。

 金を稼ぐことにかけては、時に戦場の軍師すらも凌ぐ知恵を見せる商人たちのたくましさに、リクレールは思わず苦笑いを浮かべるのだった。


 だが、それはそれとして、ガムランたちが今この場にいるのは、なにも儲かった自慢をしに来たわけではない。

 彼らを呼んだのは、他ならぬヴィクトワーレだったからだ。


「話は変わるんだけどリク、うちのお父様やレオニス様たちが今どうしているのか、ずっと気にしていたわよね」

「うん、このところ連絡があまり入ってこないから、どこで何しているのか気になってね。コンクレイユ侯爵領に引き上げて来たって話も聞かないから、まだ北方で帝国軍とニライ合っているのかなって考えていたんだけど」

「それがね、どうもつい数日前に、クサーマトン城を陥落させて、帝都タイラスルスまで迫っているらしいの」

「クサーマトン城だって!? それは本当なの!? それが本当なら、ベルリオーズさんのコンクレイユ軍本隊と、レオニス様の蜂起軍だけで、帝都の目と鼻の先まで迫ったってこと!?」

「ええ、どうやらそうみたいね。私もそれを聞いた時は、俄かには信じられなかったけれど」


 二人の言うクサーマトン城というのは、帝都タイラスルスから東に向かってわずか1日の距離に位置する要塞で、北方街道の宿場町というだけでなく、帝都タイラスルスそのものを守るための最終防衛ラインとも呼ぶべき重要拠点である。

 ロディ―渓谷からここに至るまで、いくつもの強固な城や要塞が存在するが、それらをすべて陥落させたうえでクサーマトン城まで到達するというのは、彼らが保有している戦力からは考えられないスピードであった。

 もっとも、リクレールもセダン城までの道のりをそれ以上の速さで踏破しているので、決して不可能ではないのだろうが、それにしてもベルリオーズやレオニスが、そのような思い切った侵攻に踏み切ったことは驚きであった。

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