第406話 ルールチェンジ
「あの時の続きか、いいだろう、喜んで受けて立ってやる! そして今度こそ、お前を、殺す! どうせこの闘技場で、愚民どもの前で見せしめの決闘をしてやろうという魂胆だろうが、今度こそこの俺が勝って、帝国人たちに俺の強さを思い知らせてやる! 言ったからには、絶対に逃げるなよ!」
「うんうん、そう来なくっちゃね! ただし、あの時とはいくつかルールを変更させてもらうけどね」
「何だと? まさかお前だけ有利な条件つけようってのか?」
「いいや、場合によっては君たちの方が有利かもしれないよ。まず決闘にはアヴァリスだけじゃなくて、そこにいる全員が一度に参加してもいい」
「なにっ!?」
「言っておくけど、僕は一人で戦う気だということはあらかじめ約束しておくよ」
リクレールは決闘のレギュレーションを変更することを告げたが、なんと白竜学級側はアヴァリスの他の生徒も全員加勢していいとした。
しかも、リクレール自身はシャルンホルストなどの手助けを受けず、たった一人で戦うというのだ。
「それと、君たちが望むなら、当日は好きな種類の武器を渡してあげる。もちろん、不正がないように事前に不正がないか確認する時間を上げよう。まあ、だからと言って僕の魔剣を使いたいとかはナシだけどね。僕としては、なるべくきちんとした条件で君たちを倒したい。ずるして勝ってもあまり意味がないしね」
「…………まあ、いいだろう。その条件で受けてやる」
一体どんなルールを提示するかと思えば、聞いている限りではむしろアヴァリスたちにかなり有利な条件だった。
流石のアヴァリスも、ここまでするのには何か裏があるのではとも思ってしまったが、リクレールの思惑を読み取ることはできなかった。
(こいつは俺たちのことを舐めているのか? 本当に勝てると思っているのか? だとしたら、相変わらずお目出度い奴だ……今度という今度こそ、俺の勝利という形で決着をつけてやる!)
ここまで有利な条件を提示されたのだから、アヴァリスはもはや自分が負けるなど微塵も考えていなかった。
むしろ、リクレール以外の者たちが、きちんと約束を守って自分たちを解放するのか、むしろそちらの方が気がかりになりだしたのだった。
一方のリクレールは…………
(これでいいよね、エスペランサ。僕としても、弱い者いじめで勝つより、きちんと相手の言い訳を全部潰して勝ちたい)
『もちろんですわ主様。わたくしが負けるはずはないのですから、とことんお膳立てして差し上げましょう。この条件で主様が勝てば、大勢の人の前で主様はさらなる栄誉を手にし、そこにいる薄汚い男は、ここまでされてもなお負けたという事実を、大勢の人の前で晒すのですわ。ふふふ、主様、今から楽しみですわね』
こうして、決闘の約束を改めて取り付けたリクレールは、試合当日までアヴァリスたちにきちんとした食事や、一般兵が使う寝具などを差し入れ、牢から出さない以外はそれなりに丁重に扱った。
なるべく万全な彼らと戦い、体調不良だったといういい訳すら潰すつもりなのだが、アヴァリスはそのようなことを知る由もなく「ようやく俺様への待遇を少しは見直す気になったか」と、出された食事を遠慮なく食い散らかした。
このあたりは、貴族としての矜持を誇るトライゾンとは大違いであった。
そのようなわけで、アヴァリスはしばらく闘技場内の檻の中で「飼育」され、決闘の当日を迎えることとなった。




