第395話 凱旋
シャルンホルストたちの再会を喜んだあと、リクレールたちは改めて兵士たちを率いてリヴォリ城内へ歩みを進めた。
ユルトラガルド侯爵ランツフートたっての願いということで、アルトイリス軍は戦勝を祝ってメインの大通りを行進することになり、自分たちを危機から救ってくれた彼らに、リヴォリ城の人たちから惜しみない歓声と拍手が送られた。
「あれが新生アルトイリス軍…………かっこいいんじゃねぇの!」
「彼らがあのブレヴァン侯爵の大軍を打ち破った精鋭か、凄い威容だ! 彼らがいれば、帝国は安泰だな!」
「よくやってくれたーっ!! ありがとなーっ!!」
「アルトイリス侯爵軍万歳! そして、この城を守り切ったランツフート様やシャルンホルスト様たちにも、万歳!」
絶え間なく浴びせられる歓喜の声と、時折舞い散る色とりどりの紙吹雪――――これらを一身に浴びたアルトイリス兵たちが、もとはと言えば東帝国から大量に仕入れた質の悪い傭兵が主体だったと、誰が信じられるだろうか。
つい半年前までは、明日をも知れぬ惨めな人生を送っていた彼らを大いに喜ばせ、また、このような栄誉を与えてくれたリクレールに感謝するのだった。
「すごい、私たち……まるで英雄になったみたい」
「実際この城の奴らにとっては英雄なんだろうさ! だったら英雄っぽく、胸を張ってやろうぜ!」
「いつか死ぬんじゃないかって思っていたのに…………僕、アルトイリス軍に入って、本当によかった」
地獄の訓練で幾度もくじけそうになり、その後も長期間の行軍と戦いに次ぐ戦いで、精神をすり減らしつつあった兵士たちの大半は、この戦いが終わったらアルトイリス軍から離脱したいと思ったことも何度かあった。
それでも、度重なる会戦に勝利して勝者となった快感を味わい、しかもこうして、かつて惨めだった自分たちが人々から英雄扱いされた喜びは何物にも代えがたく…………もはやだれ一人として辞めたいと思う者はいなくなったのだった。
エスペランサの言う通り、人間はたとえ途中が苦難に満ちていても、結果が帰ってくればその苦痛さえも良い思い出として受け入れる、都合のいい生き物であることがよくわかる。
その中でも特に注目を浴びたのが、やはりリクレールだった。
「あれがアルトイリス侯爵様だ! 我らの救世主だ!」
「わぁっ、カッコイイ!! こっち向いてくださーい!!」
「キャーっ!! ね、ねえ今見た!? 手を振ってもらっちゃった!!」
(ああ……僕はこんなに大勢の人たちを救うことができたんだ。それだけで今、すごく報われた気分だ……)
『主様、わたくしも誇らしいですわ。今や主様は、帝国の民衆にとっての救世主であり、この恩恵に授かった者たちは生涯主様のことを崇拝することでしょう。これも、主様が今までに下してきた決断の成果でございます』
(僕が下してきた決断、か)
人々の心からの笑顔と歓声を受けて、リクレールはそれに応えるかのように、左右に満遍なく手を振った。
以前であれば、何の取り柄もない無力な子供だった彼が、今では強大なブレヴァン侯爵を打倒した、新進気鋭の最強侯爵とたたえられるのだから、世の中分からないものである。
また、リクレールはどうも生まれつきファンサ精神を持ち合わせているようで、大勢詰めかける沿道の人々に分け隔てなく笑顔で手を振ってあげて、視線や表情も一人一人に合わせるなどして、民衆たちは次々に虜になってしまった。
すぐそばでリクレールと共に進むヴィクトワーレも、こんなところは姉そっくりだなと思うのだった。




