第394話 合流
ゼークトたちの部隊と合流したリクレールは、街道をさらに北上していき、10日かけてユルトラガルド侯爵領の首都リヴォリ城に到着した。
リヴォリ城の場外では、シャルンホルストをはじめとした士官学校の学生たちが、リクレールの姿が見えるのを、首を長くして待っていた。
「お、リクの姿が見えたぞ! おーいリク! 元気だったかーっ!!」
「シャルっ!!」
軍の先頭をネージュに跨って進んでいたリクレールは、シャルンホルストたちの姿を見るや否や、拍車をかけて彼らの元に駆けつけると、すぐに馬を降りて、シャルンホルストと抱き合った。
「シャルっ! しゃるぅっ! 無事でよかったよシャル!」
「おおっとと、いきなり抱き着いてくるとかお前は犬かよ、もう! 俺は平気だし、むしろお前のほうが心配だったんだからな!」
年齢と身長差的に、まるで弟が仲のいい兄に甘えるようにリクレールがシャルンホルストの胸に飛び込んで、強く抱き着いて顔を無邪気にうずめて来た。
シャルンホルストにかなりの負担をかけた自負があったのもあるが、シャルンホルストが無事生きて戦いを終えられたことがよほどうれしかったらしく、今にも泣きそうなくらいだった。
そして、周りにいる一部の女子学生たちが、なぜかキャーキャーと黄色い声を上げるのだった……
また、シャルンホルストだけでなく、ほかの紫鴉学級の生徒たちも、大任を果たして帰ってきたリクレールを、ある意味盛大に歓迎してくれた。
「おりゃーっ、リクレール! 君だけ美味しいところ掻っ攫って行って、ずるいぞーっ!! 私の人間騎兵突撃をくらえーっ」
「わわっ、スーシェ!? 人間騎兵突撃ってなに!?」
「くくく……我が盟友よ、よくぞ我を現世の生贄として敵を地獄の釜へ叩き込んだ。闇に抱かれて苦しむがよい」
「ちょっ、サンシール……胸が口に、く……苦しい!?」
「やれやれ、とんだ手荒い歓迎もあったもんだ。アウグスト、お前は片足を持ち上げてやれ」
「は、はいっ!!」
「モンセーは何を指示しているの!? アウグスト君も無理にやらなくていいから……うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「まてまて、俺も巻き込むなぁぁぁっ!」
他の生徒たちも、リクレールがとんでもない功績を上げて帰ってきたことを喜んだのと、自分たちをちゃっかり囮にしたことへの報復を込めて、彼をもみくちゃにした後、ヤケクソ気味に胴上げするのだった。(なぜかシャルンホルストも巻き込まれたが)
まるでボールか何かのように、ポンポン上空に持ち上げられて目を回すリクレールを…………担任のウルスラは、微笑ましく見つめていた。
「ふふっ、みんな嬉しいのは分かるけど、程々にしておくのよ。リクレール君が目を回して、吐き戻しちゃ困るでしょう」
「お前、もっと言い方ってもんがあるんじゃないか」
ライバルのローレル先生は若干あきれていたが、ともあれ、生徒に何人か犠牲は出たが、戦い自体は自分たちの側の勝利に終わったことを、彼女もようやく実感しているようだった。
『あの、主様……大丈夫でしょうか?』
(な、なんとか……)
エスペランサに心配されつつ、仲間に揉みくちゃにされた後何とか立ち上がったリクレールは、すぐ表情を切り替えると、シャルンホルストに重要な会話を切り出した。
「シャル、帰って来て早々だけど、君の城の地下牢を貸してほしい。それと、数日以内に、闘技場を使えるようにしてほしいんだけど、お願いできるかな」
「それは構わないが……地下牢はいいとしても、闘技場なんて何に使うんだ? まあ、お前のことだからまた突拍子もないことを考えてるんだろう」
「ありがとう。それともう一つ聞きたいんだけど、ブレヴァン侯爵家の一族の誰かが、この城に捕らえられていたりしない?」
「ブレヴァン侯爵家の一族? いや、うちの牢屋にはそんなに大した捕虜はいないはずだ。それがどうかしたのか?」
「…………だったら、みんなでこの後すぐにやらなきゃならないことがあるから、会議ができる部屋を貸してほしい」
「お、おう……」
戦いに勝ったばかりだというのに、何やら若干焦っているようなリクレールを見て、シャルンホルストは急に不安に駆られるのだった。




