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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第393話 見落とし

「おー……そんなことがあったなんて。さすがはゼークト、見事な作戦勝ちだね」

「おうよ、あんなに荷物をごちゃごちゃ持ちながら戦う奴らなんか、屁でもなかったぜ。まあそのおかげで、敵が残した物資を味方に回収してもらうまで、追撃できなかったけどな」

「ロパルツさんも、かつての仲間を討つのは心苦しかっただろうけど、よくやってくれた」

「心苦しい? ははは、あんなのはもう仲間とは言わんよ。私も人のことは言えんが、常にお互いがお互いを出し抜こうとしてたからな。そう言った連携のなさが、我らブレヴァン侯爵軍の敗因なんだろう」


 降伏してから仲間を討ったことで、ロパルツは却ってすっきりしたらしく、もう古巣への愛着は微塵も残っていないようだった。

 それはそれでドライな考えだなと思いつつ、ブレヴァン侯爵トライゾンに有能な臣下が少なかったのは、結局臣下たちを無意味に競わせて間引いてしまったからではないかとリクレールは考えたのだった。


「そういやリクレール、さっき見たこともない鉄製の馬車にアヴァリスが囚われているのを見たぜ。思いっきりからかってやったが、なんか今一反応が薄くてな。何があったんだ?」


 ここでゼークトは、捕虜になったアヴァリスのことについて話し始めた。


「まあ流石に維持分の運命を悟ったんじゃないかな。トライゾンも何とか死ななかったけど、未だに意識不明で囚われの身、頼みの綱のブレヴァン軍は全滅……僕が同じ立場だったら、ショックでそのまま死んじゃうと思うよ」

「アルトイリス候は……あの二人をどうするおつもりか。まさか、助命するとは言わないだろうな」

「まさか、僕もそこまでお人好しじゃないし、何より僕はあの二人に……言葉では言い表せないくらい、恨みがある。もしロパルツさんが、まだブレヴァン侯爵家に忠誠心があるなら申し訳ないけど――――」

「それはない。むしろ、さっさと処刑してくれた方が助かる」

「だよねー」

「どんだけひどい扱い受けて来たんだ、あんたは……」


 元主君を除名することはないと断言したリクレールに対し、むしろ早く処刑してほしいと即答するロパルツ。

 彼をここまで追いつめた元主君の扱いのひどさが垣間見え、ゼークトは何となく同情してしまった。

 まあ、ロパルツの場合は仮にトライゾンやアヴァリスが生きて娑婆に戻ってきたら、間違いなく報復されるので、それを恐れているのだろう。


「ただ、あの二人は残念ながら刑場の露と消えることになると思うけど、クレゼールだけは降伏勧告に応じたから、極刑にだけはしないように新しい皇帝陛下に嘆願するつもりだ。それについては大丈夫?」

「クレゼール様か……まあ、あの方なら裏切り者への報復など微塵も考えないでしょうな。覇気も野心もない方だが、侯爵家自体を断絶させるよりかはと考えたのだろう。ところで、フラン様はどうするつもりで?」

「フラン様?」


 ここで、ロパルツの口から何やら聞きなれない人物の名前が出て来た。


「フラン様……いや、正確にはフランジールという。レヴァン侯爵家の次女で、少しの間だけリヴォリ城包囲の陣地に足を運んでいたと聞いたのだが、セダン城にはいなかったのか?」

「ブレヴァン侯爵家の次女…………それは、初耳なんだけど」

「おいおい、それじゃあまだどこかにブレヴァン侯爵家の生き残りがいるってことかよ!?」


 ブレヴァン侯爵家のあれこれに関しては、ほとんど決着の道のりが見えていると思い込んでいたリクレールだったが、自分が大きな見落としをしているかもしれないとわかり、愕然とするのだった。

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