第392話 昨日の味方が今日は敵
「いいか、あいつらはもはや俺たちの敵だ! ここで手柄を立てて、俺たちは勝ち馬に乗るぞ!」
『おーっ!』
リヴォリ城の戦いではアルトイリス軍にやられっぱなしだったロパルツの部隊は、そのアルトイリス軍と肩を並べて戦うことに複雑な感情を抱いていたが、それより今は勝者側に立つことを優先することにした。
彼らは寝返り先への手土産にせんと、かつて味方だったヨランドの部隊に襲い掛かる。
対するヨランドも、追撃してきた部隊が掲げている旗を見て、すぐにロパルツが裏切ったことを確信した。
「キイイィィィっ!! あの男、裏切ったんザマスわね!! 捨て石ごときが寝返るとは、見下げ果てた男ザマス! 能無し、弱虫、意気地なしザマスうぅぅぅっ!!」
「い、如何しましょうヨランド様!」
「決まっているザマス! 今すぐ反撃するザマス! せっかくの戦利品を奴らに横取りさせないザマス!」
この期に及んでもなお戦利品に固執するヨランドは、直ちに軍を反転させ、向かってくるロパルツの軍を迎撃した。
戦場は西側にまばらな雑木林、東側に小さな丘があり、その間をやや広めの街道が走っている。
両軍は自然にこの雑木林と丘に沿って陣形を敷いて交戦することになったが、やはり背後から攻撃されたヨランド軍は態勢を整えるのに時間がかかり、ロパルツの部隊の先制攻撃を許してしまう。
そのため、ヨランドの部隊は左右に広く展開することができず、また戦利品の荷馬車が邪魔で思うように身動きが取れなかったことで、数の優勢を生かすことができず、大半の兵が遊兵と化してしまっていた。
そして、両部隊が交戦したころを見計らって、東側の丘の向こう側に回り込んだゼークトの部隊は、合図とともに一斉に丘の上に上り、まるで見せつけるかのように姿を現した。
「よっしゃ、奴らはまだこっちに気が付いていない! 行くぜお前ら!」
『うおおぉぉぉぉっっ!!』
「ヨランド様大変です! 右側から敵の新手が現れました!」
「な、なんザマスって!?」
左右への警戒を怠っていたヨランドの部隊に、東側から500人の兵を率いたゼークトたちが、丘を下る勢いを利用して斬り込んでいった。
リクレールがシマンドル川で見せたように、丘の上から降る勢いで突撃するのは一定のデメリットはあるものの、普通は勢いがつくため攻撃側にとって非常に有利になる。
ましてや防御態勢を取っていないヨランドの軍は、まともに受けることができず、満足に戦えないままやすやすと撃破された。
また、この攻撃によってヨランドの部隊全体が動揺してしまったことで、正面から攻撃するロパルツの部隊も、敵兵を次々に撃破し、どしどし押し込んでいった。
「ない、何をやっているザマス! お前たちさっさと前に出るザマス!」
「よう、ヨランド、こんなところにおったか!」
「げぇっロパルツ、ザマス!?」
ヨランドが何とか部隊の統率を取り戻そうと必死になっているところに、ロパルツ自ら馬に跨って剣を振るい、ヨランドのいる場所まで肉薄してきた。
ヨランド自身も全く戦えないことはないのだが、ドヴォルザークの次に武闘派であるロパルツを相手するのは流石に分が悪いと思ったのか、彼女は慌てて兵士たちの後ろに逃れようとする。
だが、それも一歩遅く、ロパルツの剣がヨランドの背中を捕らえる。
「今までの恨みだ、くらえっ!!」
「ザ、ザマスーっ!?」
ロパルツの剣がヨランドの左肩を切り裂き、ヨランドが悲鳴を上げてその場に前のめりに倒れる。
するとそこに、ロパルツの兵が殺到し、待ってましたとばかりに槍で彼女の身体をめった刺しにし始めた。
「いたぞ、敵将だ! 殺せ!」
「や、やめるザマス! わ……わたくしの大事な戦利品が……っ、ザマスゥゥゥゥッ!!??」
物凄い厚化粧の強欲女伯爵ヨランドは、こうして自らの行いを一切悔いぬまま、兵士たちによって体に多数の穴を穿たれて絶命した。
そして、残りの兵士たちも主君が討たれたことで完全に士気が崩壊し、戦利品を放置して逃げようとするも、ゼークトの猛攻によってほとんど逃げることができなかったという。




