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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第15章 西帝国内乱の終わりに
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第391話 追撃戦

 話はラヴェルの戦いより前に遡る。

 ロパルツを殿に残したブレヴァン侯爵軍は準備ができた部隊から順次撤退を開始したが、訓練されていない兵が大半だったためその行軍速度はかなり遅かった。

 だが、その中でもリヴォリ城北方で包囲陣地を敷いていた、略奪大好き強欲おばさんことヨランドは、撤退路までの位置が遠いということもあったが、それを加味してもなおほかの部隊と比べてもあまりに行軍速度が遅かった。

 その理由はいたって単純、彼女がユルトラガルド侯爵領で散々略奪した物資や金品を、すべて持って帰ろうとしたことで、荷物を運ぶ馬車や荷車が大渋滞を起こしてしまったのである。


「あの、ヨランド様……いくら何でも荷物が多すぎます。これでは追っ手に追いつかれてしまいます」

「何を言うんザマスの!? わたくしが手に入れた物はすべてわたくしの物ザマス! 小麦の一つ、銅貨一枚すらも、残らず持ち帰るんザマス!!」

 いくらかの物資は置いていくよう進言する部下たちを無視し、ヨランドはあくまで略奪品の運搬にこだわった結果…………前を進む味方とは大幅に距離が空いてしまったのである。


 一方、リヴォリ城周辺からブレヴァン軍を追い払ったシャルンホルスト率いるアルトイリス軍別働部隊は、ロパルツが率いていた兵のうち、質の悪い傭兵はその場で解散させて軍から切り離し、ロパルツ貴下の直属部隊500人と、まだ動ける元気な兵1000人を加えて、合計1500名の兵士で追撃を試みようとした。

 だが、シャルンホルストにとっても庫ここで想定外の事態が起きた。


「ちっ、ブレヴァン侯爵軍から脱走した傭兵が、うちの領土で賊と化してやがる。ゼークト、すまないが俺の代わりにまだ戦える奴らを連れて追撃に当たってくれ。俺はスーシェと一緒に、被害を食い止めてくる」

「あいつらも厄介な置き土産を残していきやがったな。俺に任せておけ、存分に打ち破ってやる」


 元々は、追撃部隊の指揮もシャルンホルスト自らが行う予定だったが、ブレヴァン侯爵軍の脱走兵がユルトラガルド侯爵領各地で狼藉を働いていると聞いて、その対応に当たらなければならなくなった。

 そのため、追撃戦は攻撃的な部隊運用が得意なゼークトに一任され、比較的疲労が少ない橙鷹学級の学生や、まだ余裕がある青狼学級の生徒を何人か見繕い、ロパルツと共に1000人の兵を率いてブレヴァン侯爵軍の後を追ったのだった。


 ゼークト率いるアルトイリス軍がヨランドの部隊に追いついたのは、追撃を開始した3日後の夕方のことだった。

 ブレヴァン侯爵軍はまだユルトラガルド侯爵領を抜けておらず、特にヨランドの部隊は本隊とほぼ丸一日ほど遅れて完全に孤立してしまっていた。

 その数はおよそ3000人ほどだが、兵士の大半は略奪品の運搬のために荷車を動かしていたため、実際に動かせる兵力はかなり少なくなっている。


「ロパルツさん、あんたは正面から敵を攻め立ててくれ。俺たちはその間に側面から回り込む」

「いいだろう、その手で行こう」


 ゼークトとロパルツは親子ほども年が離れているが、初めて組んだというのに連携は悪くなかった。

 ロパルツはゼークトの提案を受け入れ、自ら1000人の兵を率いて、街道を進むヨランドの部隊を背後から攻撃した。

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