第377話 ラヴェルの戦い 13
剣も盾も破壊され、これ以上の戦闘継続は絶望的になったアリシア。
今はもう逃げるしか手段はないかと思われたところで、意外なところから助けが入ることになる。
「オラオラ、どけどけ! そいつの首は俺が貰ったぁ!」
「こいつを倒せば一生遊んで暮らせるってもんよ! 挑まねぇわけにはいかないな!」
「ヒャッハー!| 『金色の乞食』傭兵団をなめんじゃねぇぞ!!」
「えっ、えっ!?」
アリシアの脇を、何人もの傭兵たちがぎらついた目をしながら駆け抜けていく。
先程までの惨状を見て、アルトイリス兵の大半は逃げ出したというのに、この男たちはそんなの知ったことかとばかりに、暴れ狂うドヴォルザーク目掛けて群がっていった。
一体何事かと唖然とするアリシアだったが、直後に背後から柔らかい何かが後頭部に押し付けられ、あれよあれよというまに抱きしめられる。
「もう、ダメじゃないアリシアちゃん、勇気と無謀は別物って言うでしょ♪」
「な、ナナリーさん!?」
アリシアを後ろから抱きしめてきたのは、もう一人の部隊長のナナリーだった。
ヴィクトワーレに勝るとも劣らない豊かな胸で包まれるのも困惑するが、それに加えてとてつもない甘い香水の匂いが絡みついて、まだ若く純朴なアリシアは思わずむせ返りそうになってしまった。
「でもっ! あいつ凄く強くて、普通の兵たちじゃ手も足も出ないんです!だからあたしが……!」
「心配しなくていいわ。私の部下たちはお金には物凄くがめついけど、お金の為なら死んでもいいって覚悟してるから、そこらの傭兵とはわけが違うのよ。それよりアリシアちゃんは、今のうちに兵士たちと一緒に態勢を立て直して。武器はその辺に転がっているのを使えばいいから、今はここを突破することに専念して頂戴」
「ええと、その……わかりました」
優しく戦力外通告されてしまったアリシアは若干落ち込んだが、ナナリーの言うことももっともで、今自分がここに居ても足手まといになるだけだった。
それに、援護に回っていたレティシアも、アリシアが武器を壊されたのを見て、急いで落ちている武器を拾ってきてくれた。
「アリシア、怪我はない!? ちょっと質はよくないけど、今はこの武器で我慢して!」
「あ、ありがとうレティシア……そうだね、今は切り換えないと!」
「ところで、ナナリーさんのおっぱいってどうだった? 柔らかかった?」
「まるで豚さんのお腹みたいで…………ってそんなこと言ってる場合じゃないわ! ナナリーさんたちがあの男を抑えてる間に、反撃するわよ!」
何とか離脱したアリシアに代わり、ナナリーとその部下の傭兵団『金色の乞食』の主力メンバー100人が、ドヴォルザークを相手取った。
「ぐふふ、誰かと思えば、金色の乞食どもと令嬢の癖に売女に成り下がったあばずれじゃねぇか。そしてテメェらの悪名もよーく知ってるぞ、乞食にすら劣る「服を着た豚」どもが」
「あーら褒めてくれて嬉しいわ。でもね、その服を着た豚さんたちは、お金の為なら猪になるのよ♪ 特にあなたのような、伯爵級の貴族は何よりの好物だわ」
「ほざけ! 豚は豚らしく、おとなしく屠殺されろ!」
ドヴォルザークですら知っている、悪名高き傭兵団だが、雄たけびを上げて武器を振るう巨漢に対して、一歩も下がることなく獰猛に立ち向かっていった。
もはや彼らの周囲は、人間の理性が支配する戦場は姿を消し、獣臭い野生的な暴力の応酬と化すのだった。




