第374話 ラヴェルの戦い 10
「イログリア男爵家の7人兄弟は、このヴィクトワーレが全員討ち取ったわ! 次に相手になりたいのは誰かしら!」
7人分の返り血を浴び、剣も槍も血に染めてなお、美しい容姿で高らかに叫ぶヴィクトワーレ。
団長の人間離れした強さを目の当たりにしたコンクレイユ騎士団は大いに士気が上がり、逆にブレヴァン軍の兵士たちは屈強な男性騎士7人があっという間に打ち取られたことで、完全に戦意を喪失してしまった。
「アルトイリス軍があんなに強いだなんて、聞いてないよ! あんな強い奴に勝てるわけがない!」
「あ、あんなに強い相手と戦ったら命がいくらあっても足りないぞ! 殺される前に逃げるぞ!」
「もういやだぁっ! 傭兵やめるぅっ!!」
ヴィクトワーレに続き、マティルダやベルサが率いる部隊が真正面から突入すると、ブレヴァン軍の最前衛は戦う前から逃げ出そうとしてしまい、後ろから前進してくる味方をも構わず押しのけようとして、あっという間に大混乱に陥った。
トライゾンが弱い兵士を肉盾にしてアルトイリス軍の全身を押しとどめようとしたことは、完全に逆効果になってしまったのだ。
そして……あっという間に6人の息子を失った、イログリア男爵ベルガルドは、この混乱を納めるどころかショックのあまり馬上で呆然としていた。
「我が……息子たちが、死んだ……。我が息子たちが、死んだ……おおぉ、神よ、こんなの嘘でしょう、なぜなのですか……」
だが、ヴィクトワーレはそんな彼の隙を見逃さない。
「そこにいるのはベルガルド男爵ね! あなたの息子たちはみんな死んだわよ! さあ、あなたも息子たちと同じところに送ってあげる!!」
「し、しまっ……ぎゃぁっ!?」
中途半端に前に出ていたのがアダとなり、周囲でパニックに陥る兵たちのせいで身動きが取れなくなっていたところに、ヴィクトワーレの槍が彼の鎧ごと胸を貫く。
自らも帝国に名高い歴戦の騎士と謡われたベルガルドは、哀れ息子たちと同じように地面に崩れ落ち、すぐに息を引き取った。
頼みの綱があっさり負けたことで、前衛を率いるボルツも大いに焦り、兵士たちを落ち着かせようとするも、全く効果がなかった。
「お、お前たち狼狽えるな! 落ち着くのだ! このままだと敵に一方的に殺されるだけだぞ! 落ち着けと言っているのだ!」
普段の彼の手腕なら、ある程度兵の混乱も納められたかもしれないが、やはり兵の質の悪さが足かせになっている。
ボルツが喉を嗄らしてまで叫び続けても、傭兵たちはひたすら自分たちが助かろうと必死に逃げ惑うだけだった。
こうして、ブレヴァン軍の中央軍約10000人は、僅か1000人のコンクレイユ騎士団によって前進を止められるどころか、むしろ押し込まれる一方となってしまい、せっかくの大軍もまともに機能しなくなってしまったのだった。




