第373話 ラヴェルの戦い 9
さて、武芸自慢の男7人にたった一人で挑むヴィクトワーレだが、実は彼女、親しい間柄でしか知られていない特技がある。
それは「ありとあらゆる種類の武器を満遍なく扱うことができる」というもので、しかも必要に応じてその場ですぐに武器を切り替えられるという、常人にはほぼ不可能な芸当ができるのである。
そんなヴィクトワーレがまず構えたのはなんと弓で、特殊な合金でできた強弓から矢を射ると、矢は見事にモルガムの胸に突き刺さった。
「ぐはっ!?」
「まずは一人」
矢は鎧を貫いたものの、流石に致命傷にはならなかった。
だが、この一撃でモルガムは怯んでしまい、すぐさま武器を槍に持ち替えたヴィクトワーレが、すれ違いざまに胸にもう一撃食らわせる。
これによってモルガムは絶命し、身体は馬から落ちて、血だるまになりながら堅い地面を転がった。
「あっ、兄者っ!!」
「おのれ、よくもモルガム兄さんを!」
続いて、次男のヴェイグと三男のエドリックが左右から突っ込んでくるが、ヴィクトワーレはまずヴェイグの槍を構えた盾で軽くいなすと、その場で武器を素早く剣に持ち替え、エドリックが振り下ろすメイスを受け止め、もう一度振り上げたところを剣で切り裂いた。
「ぬおぉっ!?」
「え、エドリック!?」
「あなたもよそ見していると、危ないわよ!」
「なっ、いつの間にこっちに……あばっ!?」
ランスチャージを軽くいなされて、急いで方向転換した時にはエドリックが負傷していたが、彼が助けに入ろうとしたときにはヴィクトワーレも急激に方向転換しており、隙を晒したヴェイグを剣で突き刺し、こちらもあっという間に絶命させた。
「モルガムの兄貴だけでなく、ヴェイグ兄貴まで!」
「もう許さんぞオイ!」
一人減らしたところで、四男のドラグヴァルと五男のフェルナンが駆けつけるも、ヴィクトワーレは背中から手斧を取り出すと縦向きに投げつけ、両手に剣を持ったドラグヴァルは《《豪速斧》》を避けきれず、何もできないまま頭をカチ割られ絶命。
グレイヴという剣と槍の中間のような形をしている振り長柄で、ヴィクトワーレを正面からぶった切ろうとしたフェルナンだったが、盾によって軽く防がれ、逆にヴィクトワーレが盾でカチあげるように弾いたことで、反動が極端に強くなって体勢を崩してしまう。
「うちのマティルダの方が、もっとうまく扱えるわね。生まれ変わってもう一度鍛え直し!」
「ぐわぁっ!?」
防御が疎かになった隙を見逃すはずがなく、ヴィクトワーレは剣でフェルナンの脇腹を切り裂き、彼の身体は半分ちぎれて地面に内臓をぶちまけるのだった。
「な、なんて女だ!? 兄さんたちがあっという間にやられた!」
「こ……こうなったら僕たちで仇を討つ!」
最後に六男マルキアスと、七男グレンスが駆けつけるも、やはり彼らではヴィクトワーレには全く歯が立たなかった。
長男モルガムと同じくロングソードを振るうマルキアスは、剣で打ち合う間もなくリーチで勝るヴィクトワーレの槍に一撃で顔面を貫かれ、即死して落馬。
グレンスは重量のある斧を振りかぶるも、大ぶりな攻撃は簡単に交わされ、今度は剣に持ち替えたヴィクトワーレが、彼の首をすれ違いざまに刎ね、残った体は首なし騎士のように制御を失ってしばらく走り回ったが、やがて馬上から転がり落ちた。
「ひっ……な、なんて強さだ!? 敵わん!」
腕に大怪我を負ったものの、幸い命まで失いうことはなかった三男のエドリックは、ヴィクトワーレのあまりの強さに恐怖し、慌ててその場から逃げ出そうとするが、もちろんそんなことを許すはずがない。
「これでお終いっ」
「みぎゃっ!?」
弓の名手に背を向けた者の末路など分かり切っている。
エドリックは背中に矢を3本も撃たれ、棹立ちになった馬から崩れ落ちて死んだ。
こうして、ヴィクトワーレは「武芸自慢」と言われるベルガルドの7人の息子を、たった一人で全滅させたのだった。




