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第335話 条件付き降伏

 3日後、アルトイリス軍は途中の町や村から抵抗らしい抵抗を受けないまま、とうとうブレヴァン侯爵領の首都セダン城が遠目に見える位置まで進出した。

 リクレールは直ちに城に使者を向かわせ、これまでそうしてきたように降伏か死か問いかけようかとしていたところで、先にセダン城の方から使者がやってきた。


「この度はお目通りがかない、誠に光栄に存じます。某はアンドレと申します、以後お見知りおきを。失礼ではございますが、あなた様がアルトイリス侯爵リクレール様でお間違いございませんでしょうか」

「うん、僕がリクレールだ。よろしくね、アンドレさん。早速だけど、用件を聞こうか」


 リクレールの元にやってきたのは、クレゼールの傍で相談に乗っていた重臣――アンドレだった。

 彼はヴィクトワーレとサミュエルが両側に控えて睨みを利かせる中でも、落ち着いて堂々と話をし始める。


「端的に申し上げますと、我が方としましては、条件次第でアルトイリス侯に降伏する用意がございます。その条件の交渉をさせていただきたく存じます」

「条件付きの降伏か。で、その条件というのは?」

「我が主、クレゼール様はセダン城での戦闘は大勢の民を巻き込むこととなり、甚大な被害になることを憂いております。そのため、クレゼール様は城を明け渡す用意があるのですが、やはり臣下の貴族たちの半数以上が降伏に反対しており、徹底抗戦も辞さないと言っているのです。そのため、某をはじめとした非戦派は、現在彼らを説得中なのですが、完全に説得しきるにはもう少し時間がかかる見込みとなっております」

「なるほど……それで、僕たちに無血で城を明け渡す代わりに、戦う気でいる貴族たちを説得する時間が欲しいということか」

「左様にございます」

「じゃあ具体的にはどれくらいあれば説得できそう?」

「出来れば10日は欲しいところですが…………何とか7日以内には説得しますゆえ、どうか今しばらくお待ち願えないでしょうか」


 もちろん、10日というのも7日というのも嘘であり、ブレヴァン侯爵領側は何とか食い下がって「説得する時間」という名の時間稼ぎをしようと試みている。

 例え7日が難しくても、最悪5日の猶予が貰えれば、リヴォリ城にいる軍の一部が国境を越えて戻って来れる可能性があり、そうなればアルトイリス軍もそちらに対処せざるを得なくなると踏んでいたのだった。

 しかし…………


「サミュエル、どう思う?」

「話になりませんな。リクレール様、彼らは己の立場がまだわかっていないと見受けられます」

「……っ!?」


 アンドレは内心で「まずい!」と思ったが、何とか表情に出すことはなかった。

 しかし、リクレールはさらに追い打ちをかけるように、サミュエルだけでなくヴィクトワーレにも話を振る。


「トワ姉はどう思う?」

「私もサミュエルさんと同意見よ。そもそも7日なんて待っていたら、どこからか援軍が来る可能性だってあるでしょう? 馬鹿正直にそんなに待ってあげて、やっぱり駄目でしたとなってもどうしようもないわ」

「だってさ。僕も二人の意見に賛成だ、あいにく僕たちはそこまで待っていられるほど暇じゃないんだ。明後日までに結論を出さなかったら、城攻めを開始するから、そのつもりでいるように伝えてほしい。それじゃあ…………」

「お、お待ちください!!」


 リクレールが話を打ち切ろうとしたところで、アンドレは慌てて交渉を続けさせてもらおうと食い下がるのだった。

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