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第334話 本当に勝てると思うのか?

 最も信頼する臣下の男と意見を交わした末、アルトイリス軍に降伏して城を明け渡すことを決めたクレゼールだったが、その前にいくつか懸念事項があることに思い当たった。


「さて、仮に私がこの城にいる貴族たちの前で、アルトイリス軍に降伏することを打ち明けたとして、どれくらいが賛同してくれるだろうか」

「よくて半々、と言ったところでしょうな。我らはアルトイリス侯爵を格下とみておりましたゆえ、彼らの軍門に降るなど、言語道断と息巻くことでしょう」

「そうなると、降伏すると言ったところで半数以上の貴族たちは言うことを聞かないだろうし、下手をすれば降伏する前に私が殺されてしまいかねない。そうなってしまっては全てはお終いだ」


 いくら現時点で降伏するのが最上の手だとしても、それをすぐに納得できる者はそう多くないだろう。

 ましてや、トライゾンがいつも見下していたアルトイリス侯爵に降るなど、死んでも御免だと考える貴族は大勢いるに違いなかった。


「では、折衷案としてこのようなことを提案してみてはいかがでしょう」


 そう言って側近の男は、クレゼールに何やら耳打ちすると、彼は神妙な表情で頷くのだった。


 そしてその翌日、クレゼールは改めて留守を任されている臣下たちを集めて、謁見の間で会議を行った。


「聞いての通り、アルトイリス侯爵軍はフォントラル侯爵軍を打ち破り、我が領の町を見せしめに破壊しながらこちらに進軍している。そして、早ければ明日には、この城から見える場所まで進軍してくることが予想される」

「あ、あの……クレゼール様、侯爵閣下からは連絡等ございましたでしょうか?」

「父上からは先日、フォントラル侯爵領が攻撃されているから、こちらもすぐに防備を固めよと精霊の手紙で伝達があったばかりだが、おそらく父上はすでにフォントラル侯爵領が陥落したことをまだ知らないのだろう。それを考えれば、父上が援軍を送ってきたとしても10日以上はかかるだろう」

「ではクレゼール様! 急ぎ籠城の用意を……!」

「お前たち、今この城にどれだけの兵がいるのか知っているか? 200人だ、これだけの兵で何ができる?」

「し、しかし相手は所詮、幼い子供が後を継いだアルトイリス侯爵ですし……」

「本当にそう思うのか、お前は? フォントラル侯爵軍を一方的に撃破したという報告があった、5000人のアルトイリス軍に、本当に勝てると思うのか?」

「…………」

「言っておくが、もし戦って負けたら、我らは一人残らず殺されるかもしれないのだからな」


 クレゼールの予想通り、自信家の貴族たちは虚勢を張って籠城を主張していたが、現実を突きつけられるとさすがに何も言えなかった。

 そもそも主要な将軍は全てトライゾンが連れて行ってしまい、残っている200人の兵も精鋭ではなく、ほとんど警備兵同然の装備と錬度しかない以上、どんなにアルトイリス軍を弱く見積もろうと勝つのは無理だろう。


「しかし、諸君の気持ちもよくわかる。アルトイリス侯爵に頭を下げるくらいなら死んだほうがマシと考える者もいるだろう。だが、我ら貴族のプライドに、この城に住む人々を巻き込む必要はないだろう」

「ま……まさかクレゼール様は降伏を!?」

「もはや戦えない以上、降伏するほかないが…………だからと言って、簡単に城を明け渡してやる必要はない。私はできる限り交渉という名の時間稼ぎをする、その間に戦う気がある者はい急ぎ父上の軍と合流し、アルトイリス軍を撃退するよう申し伝えてくれ。父上が率いていった大軍の半数でもあれば、アルトイリス軍を打ち破ることも可能だろう」


 こうして、クレゼールは何とか主戦は貴族の反発を抑えると、彼らに伝えた通り、自身は何とか時間稼ぎを行って、少しでも首都が占領される時間を短くしようと試みるのだった。

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