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悲しいかな、想像の中だけでしか勝てる可能性を見いだせない自分に、せめて自分だけでも蓮と言う女の子の味方でいよう。
うん、とまたもやひとりで頷いた蓮は大きな音を耳にする。
力任せに壁にぶつかる音……否。
これは、苦痛から逃れるための……衝動の破壊音。
色とりどりな悲鳴と困惑の中で蓮は走った。
その音は、鐘の塔からのものであり、蓮にとっては明確で分かりやすく、有り難かった。
優の能力……『悪魔を感知するもの』がない今、明確な場所は蓮にはわからない。
悪魔なんてそうそう出るものでもなく、しかも前日とは言え近い周期に現れることはあまりないから……完全に油断していた。
蓮や律に、優のような能力はない。
だから悪魔を見つけるのはいつだって足が頼りだ。
蓮は、黒いワンピースとケープを激しく揺らしながら、見かけにそぐわない速さで町を駆け抜けながら、懐の小刀を握りしめた。
案の定、悪魔は塔の脇道に居た。
桜色の『三枚翼』を持った男性の悪魔。
優や律が言うには悪魔の持つ翼と、その色には関連性があるらしいが、そんなのは蓮には関係ない。
だって『散らせば良い』だけのこと。
買い物ひとつ出来ないのか、と言う律の言葉が脳内に鮮明に映されて、カチンと来た蓮は買い物籠を安全地帯に置いた。
小刀が、暗雲を吸ったかのように暗い。
ちゃきり、と構えて蓮は悪魔を静かに見据えた。
その大きな幼い瞳にはーーーーーー優や律に見せるような幼さは一切ない。
今この場には必要のない感情はすべて省き、目の前の悪魔を『散らす』ことだけに集中する。
蓮の中には吐き気しかない。ぐるぐると、降りる大地も見上げる空もないような場所に放り込まれたような気になる。
気持ちが悪い。
気持ちが悪い。
気持ちが悪い。
……これが、どこから湧いて出てくる『何か』がわからないまま、蓮はたん、と足を鳴らした。
頭を抱えて、何かから逃れようと悶え叫ぶ桜色の三枚翼の男性に向かって、走る。
翼の数は三枚。それを全て引き剥がし『散らせて』しまえばこの悪魔は砂のように消えてなくなる。
蓮の吐き気も、消える。




