第5話 農作業とはひらめきのとうもろこしである
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大輪学園は自由な校風を売りにしている。
申請さえすればなんでも承認される部活発足の緩さや、多少なりともルールはあるけれど、俺のように商売を企む者にも手厚い。
そしてなにより、
「ほら! 小鉄様! 等間隔じゃありませんわよ! ちゃんとしっかりとうもろこしの苗を植えて下さいまし!」
「雛子テメェ! お前は鬼か!! 誰が手作業で植えないといけねぇんだよ!!」
これでも頑張ってるわ! と悲鳴と文句を告げる。が、
「口を動かす暇があったら手を動かしてくださいませ!」
「ひぃーーー!! こんな畑仕事に慣れてるお嬢様とかおかしいだろーー!!?」
大輪学園の広大な敷地は、申請を出せば貸してもらうこともできる。
「……てか、この畑って学園が貸してくれたのか? この学園なんでもできるもんな」
「ええ、テニスコート八面分借りましたわ」
「お前頭おかしいんじゃねぇの!!?」
そして、協力関係になった俺たちの最初の仕事は――
「なんで学校終わりに畑仕事なんてせにゃならんのだーー!!」
「小鉄様頑張って下さいまし!! 終わりませんわよ!!」
無理だ、さすがに疲れた。
昼飯もまともに食べてないというのに、こんなの倒れてしまう。
視界が霞んで、意識が遠退きそうになった。
「植え終えたら報酬がありますわよ!!」
……
…………
………………
「うぉぉーーーー!!! カネカネカネカネ!! 報酬報酬報酬ーー!!!」
薄れかけた意識は何処へやら、覚醒して力が溢れてくる身体を動かし、作業を高速で進める。
「まぁ、単純で助かりますわね」
何か聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
そんなこんなで仕事を終えた俺は、まるで飼い犬のように雛子のもとへかけ寄り、報酬を待つ。
「よく出来ましたわ小鉄様、こちらが報酬の――」
「おぉぉ!!?」
「とうもろこしですわ」
「あぁぁぁぁぁぁ!! 騙されたぁぁぁぁ!!!」
現物支給!? このご時世に現物支給だと!?
上手く餌に釣られた俺がいうことではないけど、この肉体労働の報酬がとうもろこし一個だと……許せねぇ。
「金は!? マネーをくれよ! マネーを!」
「見てくださいまし、この金色の粒たちを……惚れ惚れいたしますわね! 金塊よりも価値がありますわ!!」
「なら、とうもろこしより価値が下がって良いから金塊をくれ!!」
「そんなに言うのでしたらこれを食べてくださいまし、身体よりもお口の方が正直でしてよ? 我慢できずにお汁が垂れておりますわ」
「その言い方やめてくんない!? なんか表現が十八禁くらいそうだからさ!!」
しかもこれはヨダレな!? と雛子のよろしくない言い方を訂正する。
だが、腹が減っているのは事実だ……というより、栄養が足りてない感じがする。
「そんな顔色の悪い方になにができますの? このとうもろこしを食べてくださいまし、元気が出ますわよ」
「……分かったよ」
本当は金の方が欲しいが、ここは渋々報酬を受け取る。
「この程度で元気が出るわけ……」
呆れつつ、とうもろこしを口にした――瞬間、
「うっま!!!!」
食べたと同時に感想が出てくる。
テレビのタレントたちが食レポで、口に入れた瞬間に『美味い!』と言っていたのを見て、嘘くさいと思っていた。
が、まさか自分が言う時が来るとは……それにしても美味すぎる。
「小鉄様、涙が出ておりますわよ? ハンカチをお使いくださいませ」
「な、泣いてねぇよ。こ……これは……魂が排泄してんだよ」
「え……汚いですわねそれ」
「汚くねぇよ!!」
強がってるの! 伝わってもらっても良いですかね!?
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「なるほど、状況は理解しましたわ」
「おう、悪かったな最初は文句言って。美味かったわとうもろこし」
とうもろこし畑を作った報酬がとうもろこしというのは少し謎だがな?
「黄金院家で作ったオールシーズン収穫できるとうもろこしですわ。我が家にも大量にありますが、学園の方でも栽培したくなったんですの」
「大量にあるのか、え、どのくらいあるんだ?」
「五年は全国の方々が食べ物に困らないくらいには、備蓄してありますわ」
「ここで育てる意味は!?」
こんなに汗水垂らして、空腹に耐えながらやったのに!? なんのためにこんなことしたんだよ!?
「わたくし自身で様々な品種改良をして研究するための畑ですわ」
意外とちゃんとした理由だった。
「より素晴らしいとうもろこしを作るためなら、わたくしはなんでもいたしますわ」
「ん? 今なんでもって言った?」
「申し上げました。淑女に二言はございませんわ」
「とうもろこし三日間禁止って言ったら?」
「自害いたしますわ」
そこまで!? 落ち着け! そんな絶望的な表情をするな! ジョークだから!
「それで、小鉄様の話を要約すると“餓死する前に荒稼ぎしたい”これで間違いございませんか?」
「お、おう。いきなり話題変えたな……まぁその通りだよ」
さすが雛子だな。俺の考えをすぐ汲んでくれるとは、頭の回転が早い。
「当然ですわ! わたくし幼少の頃からお父様とお母様に“基本はあれだけど、やる時はやれる子”と言われておりましたの! このくらい朝飯前ですわ!」
「それ褒められていなくね??」
「お黙りになさいませ!!」
あ、うっす。黙ってます。
話の腰を折らずに、大人しくなった俺に対し、雛子は唐突に告げる。
「それで、わたくし思うのですけれど、小鉄様ハンバーガーはまた作りませんの?」
「なんでハンバーガー? いきなり話題変わったな」
「いえ、味見させていただいた時にとても美味しかったので」
お、それはどうも。
正直、俺の貧乏飯で褒められるのは、節約の努力を褒められてる気がして嬉しい。
「小鉄様の他にも、学園の飲食物の値段を気にする者はいると思いますの。皆様が小鉄様のように器用ならハンバーガーを作り放題ですのにねぇ」
「あーーそうだよな。学食高いから――ん? いや待て?」
安くて腹に溜まりやすくて、材料も揃っていて、売れる物。
それは――
「ッ!!?」
その瞬間、俺の頭の中で何かが弾けた。
「これだ!! これならいける!!」
「どうしましたの? 小鉄様?」
「雛子! ありがとな!」
お前のおかげで良いことを思いついた!
「早速協力してもらうぜ雛子!」
「なんだかよく分かりませんが、協力者ですもの! わたくしも混ぜていただきますわ!」
理由も聞かずに雛子が了承する。ノリが良くて大変助かる。
やってやるぜ!
「ガッポガッポに荒稼ぎしてやる!!」




