第39話 ゲーセンデートだぁ!? いやいやこれは親睦を深めてんだよ!?
そして、あっという間の休日。
「小鉄様ーー!」
「ん? おーーおはよ雛子」
「はぁ……はぁ……お待たせして申し訳ございませんですわ……」
「そこまでは別に待ってないがな?」
待ち合わせ場所に息を切らしながらやってきた雛子は、来るや否や遅れたことへの謝罪をしている。
いや、そこまで謝らんでもいいわ。
「やめてくれよ、周りが見てるだろ。綺麗な女子に謝らせてる最低男として、俺はこれから生活しないといけないだろうが」
「まぁ! 小鉄様ったら! 綺麗だなんて恥ずかしいですわーー!」
「話聞いてたかおい!? 論点はそこじゃねぇわ!」
「いつからそんなお口が上手くなったんですの! そんなお方に育てた覚えはございませんわよ!」
育てられた覚えもないんだが!? ったく、
「行くぞ雛子、時間は有限だ。遊び散らかすぞ」
「おぉーー! ですわ!」
……
…………
………………
「で、ですわよ小鉄様?」
「な、なんだよ?」
「わたくしになにか言ってくださらないんですの?」
「……は、はて?」
「ほら、もう一度見てくださいまし」
そう言うと、その場で一回転をする雛子。
白いワンピースにカーディガンを羽織り、胸元にはとうもろこしネックレスをしてる。
よく見たらワンピースの胸元にも、とうもろこし柄があるわ。誰が見ても分かるくらい好きな気持ちが伝わってくるな。
「向日葵の髪留めも……あれだ。可愛いな」
「“も”!? 髪留めだけですの!? ほら小鉄様!!」
「ぐ、ぐぬぬ」
「時間は有限ですわよ! ハリーハリー!」
「ぐぬぬぬぬぬ!!!」
クソ! 雛子め!! 一体誰の真似をしているんだか!!
あぁ! 分かったよ言ってやるよ!
「ひ、雛子」
「はいはいはい! なんですの?」
「その服装可愛いな、雛子に似合ってると思うぞ」
「あらあらあら! まぁまぁまぁ! お褒めのお言葉嬉しいですわ! 小鉄様!」
「孫にも衣装、だな」
「一言余計ですわね!?」
うるせぇな、ほら行くぞ雛子。なにか行きたい所とかはないか?
「でしたら、あそこに行ってみたいですわ」
「あそこ? ――ほぉ、なるほど」
雛子の指差す方を見ると、俺は驚き目を丸くした。
●
「見てくださいまし小鉄様! 可愛らしいお犬様のぬいぐるみですわ!!」
「おぉ、モフモフしてそうだな」
「あの熊様のぬいぐるみも素敵! とうもろこしを抱えて素晴らしいですわ! あれを考えたデザイナー様とは仲良くなれそうですわね!」
「極太――!? あ、いや、見間違えたわ……。いや、あの熊の持ち方的にあれは大人の悪ふざけ感があるだろ」
なにとは言わないけどね?
クレーンゲームの中にいるぬいぐるみを眺める雛子は、まるで子供のようだ。
しかし驚いたぞ。雛子がこんなところに来たかったとはな。
「ゲームセンターなんて来るの久しぶりだ」
「わたくしは初めて来ましたわ! 凄い賑やかな場所ですわね!」
「賑やか? 喧しいの間違いだろ」
あ、初めて来たのか。
雛子のリクエストで来たとはいえ、まさかゲームセンターとは……お嬢様のイメージ的にどうなんだそれ?
「ずっと来てみたかったのですわ!! ささ、小鉄様! どうやりますのこれ?」
「百入れてやるんだよ。マジでやるのか? 金の無駄だぞ?」
「言い方! 言い方良くないですわよ小鉄様!?」
仕方ないだろうが、俺の性格とゲームセンターは相性が悪いんだよ。
でも遊びに来てて、そんな白ける感じも雛子に失礼だな。
「すまん言い方が良くなかったな。一旦忘れようぜ! 俺は今日ここで五万を使い切ってやる!! 全力で満喫してやろうぜ雛子!!」
「まぁ! いつもの小鉄様に戻りましたわ!!」
いつもの小鉄君なら、そもそもこんなところで金を使わないけどな? ま、それは良いんだよ。
「ほれ百円。やってみろよ雛子。初めてなんだろ?」
「えぇ! わたくしの初めてがここで奪われるのですわね!! 嬉しすぎますわぁーー!」
「その言い方やめてくんない!?」
とりあえずは百円玉が山盛りに入ったカップを渡すがな!? 言い方ってもんがあるだろうが! 他のお客さんに聞かれたら――
「ってあれ? さっきまで人いなかったか? なんか気がついたら人いないような?」
「なんですのこの熊様は! 全然取れないですわ!? それとも生きておりますの!? アームからすり抜けていきますわ!?」
「いつの間にか始めてるし!」
いや雛子……それはアームが取らせる気ないほど緩いだけだからな? 遊戯場なんて所詮は商売だし、金を稼いでなんぼなんだよ。
――いや、そうじゃなくてな? 一旦聞いてくれ雛子?
「あら、周りに人がいないことですわよね? それなら心配いりませんわよ小鉄様」
ゲームに目を向けながら、雛子はサラリと答えた。
「今日一日はこのゲームセンターを貸し切りにしたんですのよ。これで思う存分遊べますわ」
「嘘だろマジか!?」
あ、そういえばお前は超お嬢様じゃん……忘れてたわ。
「お店の前はわたくしのボディガードで囲まれておりますわ。小鉄様のことは黄金院グループがお守りいたしますので、楽しく過ごしてくださいまし」
「あ、そんな大事になってんのかよ!? 早く言ってくんない!?」
そんな物々しい状態だったのかよ今って!? このままゲームなんてしてて良いのか!?
「今なら二人っきりですわね♡」
「言ってる場合か!?」
~おまけ①~
「小鉄様……このぬいぐるみ全然取れませんわ……わたくし、諦めるしかないんですの?」
「雛子……お前に教えてやるぜ……。クレーンゲームの必勝法をな……」
「必勝法……ですの!? ……ごくりですわ」
まぁ見たろ? ――あ、すいません店員さん?
「これ全然取れないんで位置変えてもらって良いですか? ――あ、ありがとうございます」
そして、この位置を変えてくれたぬいぐるみを、こうしてこうしてこうじゃ。
「はい取れた」
「せ、せこい!? せこいですわよ小鉄様!?」
なにを言う? 使えるものは猫の手でも、なんでも使うんだよ。卑怯とは言うまいな?
「凄い小鉄様らしいですわね」
「絶対褒めてねぇだろおい?」
~おまけ②~
「あら小鉄様? このゲームはなんですの?」
次にやるゲームを探している時、雛子がふと立ち止まり、とある機体に目を向けた。
「あーーこれはレースゲームだな」
「レース……ハッ!? まさかこれがお車で峠を走るあの噂のやつですの!?」
「お、良く知ってるな。お嬢様なのに雛子の知識の謎の偏りにはいつも驚かされるわ」
「お褒めの言葉光栄ですわ」
わりかし褒めてないけどな?
やってみるか? 気になるんだろ?
「いえ、必勝法を多少知ってる程度で、やろうとは……」
「必勝法なんてあるのかこれ?」
「あら、ご存知ありませんの? 小鉄様?」
あれですわよね? と雛子は続ける。
「曲がる時は、車体をガードレールに叩きつけて、強制的に向きを変えるアレですわよね?」
「あ、ごめん。そんな必勝法知らねぇわ俺は」
「あら? わたくしの専属の運転手がそう言っておりましたのよ? それをしたくて免許を取ったと」
「今すぐ返納してこい」




