第36話 頭のおかしいカオスな劇――そして完結へ――
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「シークシクシク……シクシク? あーーシクシクですわねぇーー」
おかしいですわ……もうシーンの切り替えのはずですのに、わたくし、もしや台本を勘違いしていたのでしょうか?
いえ、そんなわけありませんわ! 何回読んだか分からないくらいには、丸暗記してますもの! 間違えたなんてまさかのまさかですわ!!
ならば、なにかアクシデントがあったのやもしれませんわね!!
わたくしに出来ることは、劇の成功のためにここを保たせるだけ!!
「あーーシクシクシクーー!! 涙が止まりませんわねぇーー!!」
って、もうアドリブも限界ですわよ!? 誰か助けてくださいまし!?
これ以上はもう無理ですわ、そう考えた時、舞台に現れた役者様。
助かりましたわ! 全くヒヤヒヤものですわよ!?
「待たせたなひな――ピョン子姫!!」
「えぇ、本当に待ちまし――こ、小鉄様!?」
ピンチに現れたお方。
本来であれば、王子様役の二年生の先輩――だったのですが……?
見覚えのあるくせっ毛と、吊り目の……わたくしの頼りになる相棒。
何故小鉄様がここにいらっしゃいますの!?
「小鉄? 誰のことだか……」
こ、小鉄様? いったい何を?
「俺はむんランドの王子!! “ゼニゲバー王子”だぞ!! ちょっとさっき、城の階段に落ちてた硝子の靴を売ってたら遅れてしまったよ! はは! マジごめんピョン子姫!?」
あ、なるほど! 理解しましたわ!!
このまま劇を進めていきますのね!! さすがは我が相棒ですわね!!
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む、無理矢理すぎたか?
雛子が頑張って場を繋いでくれていたとはいえ、いきなりの登場は無理があったか……?
まぁ、雛子は既に舞台に上がっているから、相談することはできない。このままなんとなくで繋ぐしかない! 伝わってくれ雛子!?
「まぁ、ゼニゲバー王子! 待っておりましたのよ!! 女性を待たせるなんて罪な殿方ですわね!!」
乗ってくれた! さすが相棒だぜ!
よし、このまま上手く話を進めて――
「それで、その硝子の靴はいくらで売れたんですの?」
「え、あ、そこ掘り下げるの?」
やべ……思わず言葉が出ちまったよ。んーー……そうだなぁ。
「百万……くらい……かな? なかなかだったぞ?」
「あら、百万“むんバブエドル”ですのね! むんらんどの通貨単価! 日本円で一万分の一ですわね!!」
「それただの百円じゃねぇか!!」
「さすがゼニゲバー王子! 計算が早いですわ!!」
シンデレラの靴を百円なんて、悲しいこと言ってんじゃねぇよ!?
「精密な合成樹脂だった可能性が高いですわね。最近このような手口が増えているそうですわよ?」
「シンデレラ詐欺とかやめてくんない? 訴えられろマジで」
「手口は悪質化しておりますわ!! この世は、王子様の玉の輿を狙った猛獣たちばかりですわよ!」
玉の輿とか猛獣とか、そんな表現やめてくんない!? 純粋な気持ちで物語が見えなくなんだろ!?
……
…………
………………
「じゃなくてね!!?」
ていうか、脱線しすぎだぞおい!? 劇を進めないと観客置いてけぼりだろうがっ!!
「さて、本題に入りましょうゼニゲバー王子様! わたくし、貴方にお見せしたい物がありましてよ!?」
「お、おう。いきなりスイッチ入るな……う、うむ。申してみろピョン子」
はいですわ! と元気な返事をした後、雛子……もといピョン子はバッグに手を入れ、中の物を出し始めた。
なんだ? なにを見せてくれるんだ? もしかして現き――
「こちら、揃えたらなんでも願いが叶うボールですわ」
「アウトーー!!?」
「これが魔法学校にあった最強の杖で……」
「元あった場所に返してらっしゃい!!?」
「火鼠の衣も持ってきましたわ!」
「ひねずみ……え、なんて??」
バッグからドンドン変な物出してきてるぞ!? なに持ってきてんだお前!? モザイクだらけじゃねぇか!? 怒られるからやめなさい!?
いや、なんでお前はこんなもの持ってきたんだよ!?
「王子様が、この珍しい物を持ってきたら結婚すると言っておりましたので、集めてきましたわぁ!!」
「俺はかぐや姫かなんかなの??」
なに無理難題言ってんだよ王子様。
そして、なにお前はそれを持ってきてんだよ。
ん? もしかして、カオスなタイトルになってるけど、これって最終的な内容は実質――
かぐや姫なんじゃね??
「じゃあ、これは……あれか? ……オメェ結婚すっか?」
「んだ! ですわ!」
しくじった!! ドラ○ンボ○ルの結婚ネタみたいなことを言っちまった!! ノリで!
こうして、なぜか抱きしめ合う俺たち、観客はスタンディングオベーション……ドユコト?? もうわけ分からん。
でもこれでハッピーエンドってことか、あれ、殆ど俺いらないじゃねぇか。
「この力で世界を征服して、わたくしたちが魔王になるんですわね!!!」
「あ、そんな感じなのこれ!?」
「勇者が来たら世界の半分を差し上げる取引をいたしましょう!! わたくし憧れておりましたの!!!」
「主人公と思いきやラスボスエンドとかそんなオチ……いや、割と最近あるか」
「おほほほほですわーーーー!!!」
最強の杖と刀、願いを叶えるボールを持ち、とりあえず火鼠の衣に身を包んだピョン子が、高笑いをあげる。
そして、最後にナレーション。
『こうして、トウモロコシ ピョン子は大魔王となり、いつまでも幸せに暮らしましたとさ――チャンチャン』
舞台の幕が降りる……あれ!? 本当に俺が代わりに出た意味ないじゃんか!?
なんのために出たんだよ!?
「ツッコミ役ですわよ? 台本を読んでおりませんの? 小鉄様?」
「王子様兼ツッコミ役ってこと!? 嘘だろマジか!!?」
うざけんなよ!? ただ恥ずかしい思いしただけじゃねぇーーか!!?
かくして、演劇部の劇は謎の大成功を収めた。
~おまけ~
「硝子の靴なんて駄目駄目ですわ!! わたくしなんて、とうもろこしで作った特製の“コーン靴”ですわよ!! 見てくださいまし! これを!!」
「食べ物を粗末にすんじゃねぇーー!!」
炎上するだろふざけんな!! 今時ネットはおデリケートなんだぞ!!




