第34話 顔熱っ!! なんかラブコメみたいじゃないこれ!!?
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「凄いな雛子、もう俺が教えられることはないな。免許皆伝だ」
「小鉄様……! ありがとうございますわ!! わたくし自信がつきましたわ!」
さらに練習を繰り返し、雛子の演技力がより磨かれた。それはもう、今の雛子なら観客全てを魅了するだろう。
「今のお前ならブロードウェイも夢じゃないな。いや、ハリウッドからのスカウトを待つまである」
「お、おお!? 煽ててもなにも出ませんわよ!? とうもろこし茶をお飲みになってくださいまし!!」
「お茶が出て来るじゃないか……あ、美味い……」
雛子が真っ赤になりながら、水筒からお茶を注いで手渡して来る。
最近病みつきになってきた、黄金院印のとうもろこし茶を飲み、俺はホッコリとした気持ちで話す。
「やっぱり知ってはいたけれど、雛子は真面目だな」
「な、なんですのいきなり、またお褒めになって!? お茶のおかわりですの!?」
あ、いや、そうじゃなくてだな?
「前に話したけどさ、雛子は頑張れるすげぇ奴って知ってたぞ! さすが! よっ! 日本一!」
「えへへ! 照れますわね!」
今回こうして雛子に教える立場になって、よく知れたことがあるんだ。
畑仕事をしてるからアホみたいな体力があって、センスがあるのか演技も上手い。
そして、努力する才能に溢れている。
凄いな雛子は――
「俺の相棒は世界一かっこいいお嬢様だ」
「ッ!? こ、小鉄様……」
思わず笑みが溢れる。
皮肉は一切ない、本心から出た言葉だ。……だからこそ思う。
「――あ、いや、なんからしくないな!? 顔熱っ!!」
急に恥ずかしくなってきた。
本心なのは事実なんだがな? なんかこうあるだろう? 俺のキャラじゃない感じがさぁ!?
「ふふ、小鉄様? お顔が真っ赤ですわよ?」
「夕陽に照らされてなっ!? あーー眩しいなぁーー!?」
「可愛い小鉄様は初めて見ましたわ」
「可愛くないが!?」
男子高校生をイジるのはやめてくれないか!? 俺たちはおデリケートな生き物なんだぞ!?
顔でも洗いに行って、冷静になる為に教室から出ようとした時、俺の手を握りしめ、
「わたくしも、小鉄様に言いたいことがありましたわ」
雛子は優しく微笑んだ。
「黄金院雛子は、小鉄様と出逢えて毎日が楽しいですわ」
「ひ、雛子? 手を離してくれないか? は、恥ずかしいぞ?」
「今度はわたくしのターンですわよ? 静かに聞いてくださいまし」
「え、えぇ……」
「お返事はしてくれませんの?」
あ、はい。分かりました、と返すと雛子は嬉しそうに、ゆっくり言葉を呟く。
「小鉄様と一緒にいると退屈なんて訪れませんわね。小鉄様がなにかしら問題を起こしますし」
「え、ひ、雛子さん?」
「寮は壊しますし、お金しか興味ありませんし、言葉遣いは酷いですもの。色々な方に喧嘩腰ですからヒヤヒヤですわよ」
「あれ? このターンは俺が怒られるターンかな?」
でも、と雛子は続ける。
「そんな日々が、そんな小鉄様と一緒にいるのが、わたくしは一番幸せですわ」
「雛子……」
「まだ出逢って数ヶ月、どれだけわたくしを楽しませてくれるんですの? ずるいお人ですわ」
えっと……どういたしまして? それは褒められてんのかな?
「ふふ、小鉄様は本当に……愛おしいですわね」
「い、愛おしい!?」
あ、あれか!? 聞き間違いか!? “いとおかし”的な!?
「小鉄様」
「なん――ぎゃぁーー!? ひ、ひひ、ひひな! 雛子さん!?」
「どうかなさいまして?」
いや! どうかなさいまして? じゃなくてね!?
俺は驚きながらも、突然の状況を尋ねる。
「なんで抱きついておられるんですか!?」
そう、雛子が突然俺に抱きついてきたのだ。
いきなりのこと過ぎて、いつも冷静な俺でも動揺してしまう。
「感謝の気持ちですわ!!」
「感謝の気持ち!!!?」
あ、あれかな!? 海外の方はハグするし、そんな感じか!? 俺も抱きしめ返さないと無作法というものとか!?
「ふふ」
な、なんですか雛子さん!? 耳元で急に笑わないでくれない!? 俺は耳が弱いのよ!?
「いえ、わたくしの相棒は意外と照れ屋なんだと思っただけですわ」
「人をおちょくってお前は楽しんでんのかぁ!!?」
「これからもよろしくお願いいたしますわよ? 小鉄様?」
そう言うと雛子は、俺から離れ――
――――ちゅ。
ナニかが、頬に触れた。
「お、おおお!? お前なにしてぇ!!?」
「か、海外では頬へのキスは普通ですわよ!? 小鉄様!?」
「海外ではな!!?」
ここを何処だと思ってやがるテメェ!? ジャパニーズだぞゴラ!?
「さ、さてさて! ラブストーリーの演技も完璧ですわね!! わたくし、自信が付きましたわ!!」
「あ、演技? ならそれも普通だな」
「あれ!? さっきまでの照れてる小鉄様は何処へ行かれましたの!? あのピュアな小鉄様は!?」
ピュア? 知らないな。奴は俺が世を忍ぶ仮の姿よ。
散々俺を弄びやがって、許せない……が、今は勘弁してやるか。
「とりあえず、その調子なら大丈夫だな雛子!! 明日の劇は楽しみにしてるからな!!」
「え? あ、はいですわ! 明日の劇を楽しみにしてくださいまし!」
「おうよ!! じゃあ俺はこの後はゴリ先に呼ばれてるから!! またな相棒!!」
「ま、またですわよ相棒!!?」
謎のハイテンションで挨拶を終え、教室を後にする。
そして、
「ハァァーー!!!」
廊下の壁にへたり込み、声を押し殺して叫ぶ。
「「顔熱っっ!!?」」
遠くの誰かと言葉が被った気がしたが、多分気のせいだろう。
~おまけ~
「な、なんだろう!? 今コテツのレアな姿を見逃した気配がする!?」
柊夏希はなにかと勘が鋭い。




