第3話 とうもろこしの協力者
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「色々あって爺ちゃんのお宝を売っぱらったんだよ。それで借金してるってわけ」
昔、爺ちゃんがテレビで放送してる【〇〇鑑定団!】ってとこで査定してもらった奴だとは聞いた。
あれから更に年月が経っていたこともあり、かなりの金額になったらしい。
「そのお金はどうしたんですの?」
「そんなん、もうないぞ。泡銭だからな。パーっと使ったわ」
「あらあら、男らしいですわね。あと先考えないところがまるでとうもろこしの様ですわ」
「それは褒めてんのか?」
大体この話をするとガッツリ引かれるんだが、黄金院は真剣に聞いてくれている。律儀な奴だ。
「なるほど分かりましたわ。つまりはその借金を返すために無駄遣いはできず、節制をしている……というわけですわね」
「その通りだ」
話が早くて助かる。
だから俺が、この学食を食べれる日は訪れないだろう。食べてる暇があったら、少しでも返済する。
「潔いですわね」
「っていう風に嘘でもちゃんとしてれば減額してくれるかもだろ?」
「まぁ! 知的な考え方ですわね!」
「へっ、そんな褒めんなよ」
「いいえ、褒めてはおりませんわ」
あれ!? 知的って言わなかった!?
……ともかく、俺はそんな理由から極貧生活をしているってわけだよ。
「……」
「どうしたんだよ? 黄金院?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。確証が無いことですし、まだ知り合って短いですから、わたくしの勘違いかもしれませんし」
お気になさらず、と黄金院は食事を続ける。
なにかあったのだろうか? ……いや、黄金院が答えないなら、これ以上は聞く必要はないだろう。
「なるほど、予想ですが大体理解できましたわ。つまりは、この学院で銭原様は“借金返済をするために”来たというわけですわね」
「お、凄いな。黄金院はかなり頭の回転が良いようだな」
お褒めに預かり光栄ですわ、と答える彼女に俺は続ける。
この学院は、
“校内での商品の売買”
“それに及ぶ商品開発などの許可”
という商売に関しての校則がある。
この二つだけじゃなく、他にも複数の校則があるのだ。
「これを使う手はないだろ? ましてや金持ちがかなりいるんだぞ?」
もし将来的に凄い開発をしたら、どこかの金持ちとパートナー契約を結べるかもしれない。
この学院は金持ちの家の子供を安全に学ばせるだけじゃない。
“一般生徒が未来を掴める可能性がある”
そんな学校なのだ。
「事実、卒業生の中には、貧乏からこの学園で仲良くなった金持ちのボディガードになって、裕福になったやつもいるらしいぞ」
平等にチャンスが転がってる場所なら、試してみないと面白くないだろ。
「借金返済? 甘いな! 俺はそこで満足しないで稼ぎまくるぜ! なんせ俺は金が大好きだからな!」
「ふふ、そこまで高らかに豪語するなんて、卑しさを感じないですわ。いっそ清々しいまでありますわね」
「商売とはまず、誠実さが大切だと俺は思っているからな!」
「“誠実なること、とうもろこしが如く”とも言いますものね!」
言わねーよ。聞いたことないわ。
「あら、日々進化する日本語なのに、まだ時代がとうもろこしに追いついていないんですわね。流行を先取りしてしまいましたわ」
「先取りし過ぎて、もはや妄言まであるな」
「ふふ」
静かに笑みを溢す黄金院。
口元を隠す動作を瞬時にする辺り、言ってることはおかしくても、やはりお嬢様なのだと再認識させられる。
さて、
「どうだ黄金院? 良ければ俺のこの“楽しい祭り事”に協力してくれないか?」
「祭り事ですの?」
あぁ、そうだ。
「せっかくの学園生活だ。楽しく過ごしたもん勝ちだろ」
「なるほど……それはその通りですわね」
「話が早くて助かる」
空回りしがちだが、何故かコイツとは波長が合うというか、うまくやっていけそうな気がする。
「もちろん一方的じゃないぞ?」
「と、言いますと?」
「俺は黄金院の“とうもろこし開発に協力する”」
なんでも良いぞ。畑を耕したり、意見を聞いたり、極端な話だと毒味とかも大丈夫だ。まぁ死なない程度ならな。
「その代わりといってはなんだけど、“俺のお願いを少しだけ叶えてほしい”どうだ? 協力関係ってやつだよ」
悪くないだろ? と手を差し出した――瞬間、黄金院は俺の手を強く握る。
「協力いたしましょう」
はやっ!? 即答かよ!!
もっとこう悩む仕草とかないのかよ!
そう聞き返してみると、黄金院はにこやかに答えた。
「丁度良かったですわ。なにをしても大丈夫な、法的にクリーンな方が欲しかったんですの」
「ちょっと!? 俺になにをする気だ!?」
「とうもろこしの為ならば、多少の犠牲ですわ」
マットサイエンティスト黄金院さん!? お手柔らかにしてくださいませよぉ!!?
握り返す手がお互いに強くなる。両方が利用し、利用される関係。
全く違う信念ではあるが、コイツとは上手くやっていけそうだ。
「改めて、俺は“銭原 小鉄”だ。親しみを込めて“小鉄”って読んでくれ」
「こちらこそよろしくお願いいたしますわ小鉄様。わたくしの名前は“黄金院 雛子”ですわ。雛子と呼んでくださいまし」
固く握手をして、雛子との協力関係が今ここに生まれた。
これがとうもろこし大好きお嬢様と、金が大好きな銭ゲバとの破茶滅茶な日々の始まりだった。
~おまけ~
「そういえば雛子、お前ってなんでみんな……というか女子たちから見られているんだ? なんかしたのか?」
「さあ? わたくしなにかしたかしら――そういえば、一年前にとうもろこし由来の化粧水を作りまして、凄い売り上げと聞いておりますわ。もしかしたらその……」
「あ、いや、よく分かったわ」
「ほえ? なにがですの?」
どうやらあれは尊敬の眼差しだったようだ。
のちに分かったことだが、雛子は美の女神として女子から絶大な人気があることが分かった。
「これも、とうもろこしの恩恵ですわね」
「とうもろこしをどこまで万能にする気だ!!?」




