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第3話 とうもろこしの協力者

●


「色々あって爺ちゃんのお宝を売っぱらったんだよ。それで借金してるってわけ」


 昔、爺ちゃんがテレビで放送してる【〇〇鑑定団!】ってとこで査定してもらった奴だとは聞いた。

 あれから更に年月が経っていたこともあり、かなりの金額になったらしい。


「そのお金はどうしたんですの?」

「そんなん、もうないぞ。泡銭だからな。パーっと使ったわ」

「あらあら、男らしいですわね。あと先考えないところがまるでとうもろこしの様ですわ」

「それは褒めてんのか?」


 大体この話をするとガッツリ引かれるんだが、黄金院は真剣に聞いてくれている。律儀な奴だ。


「なるほど分かりましたわ。つまりはその借金を返すために無駄遣いはできず、節制をしている……というわけですわね」

「その通りだ」


 話が早くて助かる。

 だから俺が、この学食を食べれる日は訪れないだろう。食べてる暇があったら、少しでも返済する。


「潔いですわね」

「っていう風に嘘でもちゃんとしてれば減額してくれるかもだろ?」

「まぁ! 知的な考え方ですわね!」

「へっ、そんな褒めんなよ」

「いいえ、褒めてはおりませんわ」


 あれ!? 知的って言わなかった!?

 ……ともかく、俺はそんな理由から極貧生活をしているってわけだよ。


「……」

「どうしたんだよ? 黄金院?」

「あ、いえ、なんでもありませんわ。確証が無いことですし、まだ知り合って短いですから、わたくしの勘違いかもしれませんし」


 お気になさらず、と黄金院は食事を続ける。

 なにかあったのだろうか? ……いや、黄金院が答えないなら、これ以上は聞く必要はないだろう。

 

「なるほど、予想ですが大体理解できましたわ。つまりは、この学院で銭原様は“借金返済をするために”来たというわけですわね」

「お、凄いな。黄金院はかなり頭の回転が良いようだな」

 

 お褒めに預かり光栄ですわ、と答える彼女に俺は続ける。


 この学院は、


 “校内での商品の売買”

 “それに及ぶ商品開発などの許可”


 という商売に関しての校則がある。

 この二つだけじゃなく、他にも複数の校則があるのだ。


「これを使う手はないだろ? ましてや金持ちがかなりいるんだぞ?」


 もし将来的に凄い開発をしたら、どこかの金持ちとパートナー契約を結べるかもしれない。

 この学院は金持ちの家の子供を安全に学ばせるだけじゃない。

 

 “一般生徒が未来を掴める可能性がある”


 そんな学校なのだ。


「事実、卒業生の中には、貧乏からこの学園で仲良くなった金持ちのボディガードになって、裕福になったやつもいるらしいぞ」


 平等にチャンスが転がってる場所なら、試してみないと面白くないだろ。


「借金返済? 甘いな! 俺はそこで満足しないで稼ぎまくるぜ! なんせ俺は金が大好きだからな!」

「ふふ、そこまで高らかに豪語するなんて、卑しさを感じないですわ。いっそ清々しいまでありますわね」

「商売とはまず、誠実さが大切だと俺は思っているからな!」

「“誠実なること、とうもろこしが如く”とも言いますものね!」


 言わねーよ。聞いたことないわ。


「あら、日々進化する日本語なのに、まだ時代がとうもろこしに追いついていないんですわね。流行を先取りしてしまいましたわ」

「先取りし過ぎて、もはや妄言まであるな」

「ふふ」


 静かに笑みを溢す黄金院。

 口元を隠す動作を瞬時にする辺り、言ってることはおかしくても、やはりお嬢様なのだと再認識させられる。


 さて、


「どうだ黄金院? 良ければ俺のこの“楽しい祭り事”に協力してくれないか?」

「祭り事ですの?」


 あぁ、そうだ。


「せっかくの学園生活だ。楽しく過ごしたもん勝ちだろ」

「なるほど……それはその通りですわね」

「話が早くて助かる」


 空回りしがちだが、何故かコイツとは波長が合うというか、うまくやっていけそうな気がする。


「もちろん一方的じゃないぞ?」

「と、言いますと?」

「俺は黄金院の“とうもろこし開発に協力する”」


 なんでも良いぞ。畑を耕したり、意見を聞いたり、極端な話だと毒味とかも大丈夫だ。まぁ死なない程度ならな。


「その代わりといってはなんだけど、“俺のお願いを少しだけ叶えてほしい”どうだ? 協力関係ってやつだよ」


 悪くないだろ? と手を差し出した――瞬間、黄金院は俺の手を強く握る。


「協力いたしましょう」


 はやっ!? 即答かよ!!

 もっとこう悩む仕草とかないのかよ!


 そう聞き返してみると、黄金院はにこやかに答えた。


「丁度良かったですわ。なにをしても大丈夫な、法的にクリーンな方が欲しかったんですの」

「ちょっと!? 俺になにをする気だ!?」

「とうもろこしの為ならば、多少の犠牲ですわ」


 マットサイエンティスト黄金院さん!? お手柔らかにしてくださいませよぉ!!?

 握り返す手がお互いに強くなる。両方が利用し、利用される関係。

 全く違う信念ではあるが、コイツとは上手くやっていけそうだ。


「改めて、俺は“銭原 小鉄(ぜにはら こてつ)”だ。親しみを込めて“小鉄”って読んでくれ」

「こちらこそよろしくお願いいたしますわ小鉄様。わたくしの名前は“黄金院 雛子(こがねいん ひなこ)”ですわ。雛子と呼んでくださいまし」


 固く握手をして、雛子との協力関係が今ここに生まれた。




 これがとうもろこし大好きお嬢様と、金が大好きな銭ゲバとの破茶滅茶な日々の始まりだった。




        ~おまけ~


「そういえば雛子、お前ってなんでみんな……というか女子たちから見られているんだ? なんかしたのか?」

「さあ? わたくしなにかしたかしら――そういえば、一年前にとうもろこし由来の化粧水を作りまして、凄い売り上げと聞いておりますわ。もしかしたらその……」

「あ、いや、よく分かったわ」

「ほえ? なにがですの?」


 どうやらあれは尊敬の眼差しだったようだ。

 のちに分かったことだが、雛子は美の女神として女子から絶大な人気があることが分かった。


「これも、とうもろこしの恩恵ですわね」

「とうもろこしをどこまで万能にする気だ!!?」


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