第29話 冷静な俺はどこに行った!? 悲しそうな雛子
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「いかがなさいました!? わたくしの演技は!?」
「え、いや、演技というか……」
「すっごい良かったよ雛子ちゃん!!」
「あ、え? ……まあ、ツッコミどころは多かったけど、雛子の演技は上手かったな」
「____っ!! お二人ともありがとうございますわ!!」
ツッコミどころは多かったけどね(大事なことなので二回)
だが、雛子の満面の笑みを見たら細かいところはどうでも良くなってしまった。
色々話が混ざり過ぎて、混沌と化してるけど大丈夫なのだろうか? 学生の劇としてはこのぐらいが良いのか?
あ、それはそうと、
「ちなみに、この劇は何処でやるんだ?」
こんなアホな……斬新な話を考えたんだ。学園内で楽しむ感じなのか?
「学園の小等部の子たちに披露する劇らしいですわよ」
「おい! 誰か脚本家連れてこい!! 頭おかしいぞ!!?」
「コテツやめなよ! すいませんすいません!!」
「ええい離せ柊!! こんな全方面に喧嘩を売ってるタイトルだぞ!? 訴えられる前に止めないと消されるぞ!!?」
「小鉄様静かにしてくださいまし! 皆様申し訳ございませんわ!! 小鉄様は普段は落ち着いた方で――……いえ、これが普段通りですわね」
「おい」
急に冷静になってんじゃねぇよ。
柊も頷くな、おかしなこと言ってねぇだろうが。
俺は悪くないのに、そう思っても俺の意見は結局少数派。
どんなに変な流れでも雰囲気とノリ、さらには無駄に上手い部員の演技のせいで俺以外違和感を覚えてないのか。
クソ……郷に入っては郷に従えってやつか?
……仕方ない。ここは一旦触れないで行くか。
そう考えた時、俺たちの方へおばさ……女性が近付いてきた。
「あら、黄金院さん? お友達かしら?」
「お義母さ――じゃあありませんわ! 常馬場先輩! お疲れ様ですわ!!」
「つねばば? 何処のババアだよソイツ」
「コテツ! この人さっき劇にも出てたでしょ!! お義母様の人だよ! ボランティアの!」
「あれ……? 気付かなかった! 美しい女性がいると思ったら、お義母様こと常馬場さんじゃないか!! ちっす!」
「あれ、コテツ様? 常馬場先輩と会ったことありまして?」
あ、初対面です! 初めまして銭原と申します! うっす!
なんだ柊? なんで態度を変えるかだって?
「冷静に考えてみろ柊? そこまで優しさに満ち溢れた人なら、何かあった時に力になってくれるかもしれないだろう? 俺はそういう心の優しい奴を少しでも味方につけときたいんだよ」
「おぉ……コテツが凄い饒舌だよ! びっくり! ……あれ? 言ってることは凄く残念な奴だ!! クソだよクソ!! そんなところが好印象だけど!」
うるせぇって、聞こえるだろうが。
聞こえないように、ひっそりと話していた俺たちが、雛子と常馬場先輩たちはまた別で話をしていたようだ。
「黄金院さん、素晴らしい演技でしたわね。悪くなかったわ」
「ありがとうございますわ常馬場様!!」
「でも」
褒められて喜んでいた雛子だが、常馬場先輩は直ぐに言葉を止めた。
「まだまだ、所詮は素人に毛が生えた程度ね。こんなんじゃ役は降りるしかないかしら」
「……そんな……ですわ……」
「素晴らしかったわよ? 悪くもないわ」
ただね、と先輩は続ける。
「黄金院さんには演技に対しての“熱”が、“魂”が感じられないわ。もっと“貴女”を曝け出してちょうだい」
「……」
先ほどまで雛子は嬉しそうにしていたのに、先輩の言葉を受け、見て分かるくらい落ち込んでいる。
雛子の演技は悪くなかったと思うが、現役演劇部員には何かが気に食わないらしい。
二人の様子を見ながら、静かに柊が声をかけてきた。
「なんか大変そうだね! 雛子ちゃん」
「あぁ、人に見せるもんだからな、妥協したくないんだろ」
「普段は仏の様に優しい先輩だけど、全然いつもと違うもん! 役に成りきってるのかも!」
「だろうな」
これもプロ意識ってやつだろう。
ただ、頼んできたのは演劇部らしいが、その言い分はどうなんだ? 言い方ってやつもあるだろう……ったく。
まぁ、良い先輩らしいからな。真剣なんだろう。あまり部外者の俺が言うことじゃないな。
ここは穏便に話を変えて、雛子を助けるとするか、
そう思い立ち上がり、雛子と常馬場先輩の前に立った。
「おい、言い過ぎじゃないのか先輩?」
「貴方は……さっきまで練習を見ていた……」
「俺のことはどうでも良いだろ、今はこっちだよ」
「え、ちょっと? コテツ?」
眉を顰める先輩、困惑している柊、雛子を背に二人の表情が見える中で、俺は言い続ける。
「頼んできたのは演劇部だろ? 言い方ってもんがあるだろうが、素人相手に」
「貴方に関係がありますか、部外者の貴方に」
「演劇部には部外者だろうが、雛子とは友達なんだよ。悲しそうな雛子を見せられたら黙ってらんねぇよ」
「……」
「あれ! あれ!? いつものコテツじゃないかも!?」
「小鉄様? どうかされましたの?」
いや、本当になんでこんなことしてんだろう。穏便にするはずだったのに……。
後ろから雛子の声が聞こえるが、何故か自分を止めることができない、
「では、貴方がなんとかしてくれますか? 黄金院さんの演技をさらに上へ……」
「あ? 言われなくてもやってやらぁ!!」
雛子に足を掬われないように、アンタも練習を欠かさず続けとけよ!!
「なんて野蛮な……黄金院さん?」
「は、はいですわ!」
「楽しみにしてますからね、せいぜい頑張ってくださいね」
期待はしていませんが、と最後に嫌味なことを言って去っていく先輩。
その姿を眺めていると、柊が口を開いた。
「凄いね……いつもは優しい先輩なのに、ここまで役に入り込んでるなんて……驚きだよ!」
「常馬場先輩様は普段は凄く優しい方なんですのよ? いつもは」
「知ったこっちゃねぇよ。人前であんな言い方しなくていいだろうに……ったく」
「って! コテツ! なにしてんの!?」
「穏便に済ませるって言ってたよね!? なんであんな!? いつものコテツじゃないよ!!?」
うるせぇな、俺は悪くねえよ。
……
…………
………………
「なんであんな啖呵切ったんだ俺……」
「もう自己嫌悪モード!? 早くない!?」
「本当は敵対する気なんてなかったんだ! なのに悲しそうな雛子の顔を見てたら……なんか……」
「小鉄様……」
いや、本当になんでなんだ。いつもならもっと上手く立ち回るのに……なんで。
「なんでコテツ……あれ? ん? ……あっ……ふーーん」
ん? なんだよ柊? なんか分かったのか?
「別にーー?」
「なんだよお前、いきなりいじけて」




