第28話 練習見〜せ〜て!? 雛子自身がピョン子になることだ!?
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「お母様おはようございます! 見てくださいこのドレス! とても素敵なドレスをお父様が買ってくれました!」
「あら素敵ね。でもね? 美しいのはドレスではなくてアンジェリカ。貴女自身が最も美しいのよ?」
「お母様! ありがとうございます!」
ここは村外れにある大きなお屋敷。
ここに住む意地悪そうな顔をした長女、アンジェリカは素敵な青いドレスに身を包み、自分の母親にその姿を見せる。
「なんて素敵な娘なのかしら。さすがは私の娘」
その姿を見つめ、これまた意地悪そうな顔をした母親は、自分の娘……ひいては自分の美しさに惚れ惚れしていた。
「お母様! 私も見て見て! 今日の髪はとても艶やかだし、綺麗にセットできたのよ!! どうお母様!!」
「あら、マリアンヌちゃん可愛いじゃないの!! こんな美しいなら美の女神のヴィーナスも走って逃げ出すわね!!」
「もぉーー! お母様ったら!」
次女、マリアンヌは自慢の髪を靡かせて自室に去っていく。
母親は自分の娘たちが美しく成長したことに、笑みを溢している。
だが、
「さてと……」
彼女のさっきまでの笑顔は消え去り、階段の手すりを人差し指でなぞると、先ほどとは別人に思えるレベルの低い声で声を張り上げた。
「ちょっと!? まだここが掃除されていないじゃないの!? 貴女はろくに掃除もできないのかしら!?」
誰もいない広間でヒステリックに叫ぶお母様は、ストレスの吐け口に彼女の名を呼んだ。
「ピョン子! 早くこちらに来なさい!!」
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「んだこれ? シンデレラってやつか?」
「しーー! コテツ! 練習中は静かに、って言われたんだから!」
「いやそれはそうだけど……にしても見たか? あの母親役の生徒、無茶苦茶意地悪そうな顔だったな! あれは日頃から意地悪と見たね!! 性格の悪さが顔に出てるわ!」
「あの先輩はボランティア活動とかに力を入れてる評判の良い先輩ですね」
「あーー! あーー! 今のはノーカンで頼む!!」
よく見たら素敵なお顔立ちですわねぇ!! テレビでよく見かけるアイドルみたいに綺麗ですわねぇ!!?
「と、なるとさ。あまり可愛くないってことじゃない?」
「おいやめろ。消されるぞ」
そこにはあまり触れるんじゃねぇよ。大人しく劇を見ろ、劇を。
無駄口を止めて劇へ集中した時、場面は動き出した。
「ピョン子! 早くこちらに来なさい!!」
ぴょ、ピョン子? え、ピョン子???
なにそのゆるキャラみたいな名前?
さっきまでは、よくある内容の劇だったのに、急にゆるい名前が出てきて流れが変わったぞ?
そして、ピョン子と呼ばれる奴が舞台袖から現れた。
「お待たせいたしましたわお義母様!! “トウモロコシ ピョン子”! 急いで参上いたしましたわーー!!」
「お前かいっ!!?」
ついに現れた謎のピョン子の正体、それは“ピョン子”と書かれた札を首からぶら下げた金髪縦髪ロールお嬢様。
黄金院 雛子が俺たち観客向けて、満面の笑みで現れた。
練習だというのに、気合の入れ方が違うな。
「ピョン子! ご両親がラスベガスのカジノで入り浸っているからと、この家に住まわせているのに掃除もろくにできないわけ!?」
え、そんな理由? 親クソすぎない?
このお母様はもはや良い人なのでは?
「申し訳ありませんわお義母様!! 直ちに掃除をさせた家事代行サービス会社にクレームを入れますわね!!」
「「いや! お前がやったんじゃないんかいっ!!!」」
「ちょっとコテツ!? 練習中だってば!?」
あ、すまんつい……身体が勝手にツッコミを入れてたわ……。お母様と同タイミングだったし……大人しく静かに見てます……。
もうなにがあっても大人しく見てるぞ。
気持ちを引き締めて舞台に目を向けると、スピーカーからナレーションが流れた。
『この子は“トウモロコシ ピョン子”。貧しい家庭にいたが、叔母の家に善意で住まわせてもらっている。内気で大人しいとても可哀想な少女』
どこが内気!? これキャラ合ってるか!? てかどこが可哀想!? 可哀想で優しいのは叔母さんだろ!?
「そんなことよりお義母様!! お姉様たちばっかずるいですわ!! わたくしもお城のパーティーに行きたいですわ!!」
「あ、貴女が……? 行きたいの……?」
「はい! わたくしも行ってみたいですわ!」
『ピョン子姫は叔母さんに恐る恐る聞いてみます。叔母さんが怖いからです』
どこが? どこが恐る恐る?
一回“恐る恐る”って辞書で調べてこい。
でもなるほどな。登場人物や話が所々おかしいけれど、つまりはシンデレラをモデルにしただけな感じか?
そう考えてみたらありきたりか。
「あら、貴女には願いを叶えるボールを集めに行く、という夢があるんじゃないかしら?」
「そうですわ!! わたくしはボールを集めに死後の世界に行って、刀を持って戦わないといけないんでしたわーー!!」
え、え? なんて??
俺の困惑を無視して、ナレーションが告げる。
『そう、これからピョン子の物語が始まるのです』
そのタイトルは――
『ロード・オブ・ピョン子姫リング 〜ドラゴンブリーポッターと緻密な部屋〜』
あ……すぅ〜〜……
「なぁ、柊?」
「どうしたのコテツ?」
「これはあれか? ツッコんじゃいけない拷問かなにかか? それともパロディ過ぎて消されるやつか??」
「コテツ一回黙ってて? 新聞の取材で練習見せてもらってるんだからさ」
あ、拷問だこれ。
こうして、雛子が出ることになった劇をある程度のところまで見せてもらった。




