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第25話 満鳴 剛は理解者が欲しい。


「話を聞いてくれ」

「おう、分かってる。言い訳は警察の前で言えよな」

「お願い!! ほんまに!! 話を聞く姿勢になってくれへん!?」


 そんなコテコテの関西弁だったか? そんな露骨な関西弁は名探偵の出てくるアニメでしか聞かねぇよ。


「小鉄様、動揺している人は本当の顔が出ると言いますわ。このエセ関西弁は犯人の証拠ですわ」

「誰がエセや、こちとら純血やぞ」

「言い返せる辺り、意外と余裕そうなんじゃないか? 水泳部の飛び込み台に磔にしてやろうぜ」

「ほんまにごめんて!! ちゃんと話すから!」

「いっそのこと道頓堀にでも沈めてやろうか、レッツダイビング」

「あんなとこ入ったら病気なるわ。やめときなさい」

「なんだこいつ」


 突然冷静になりやがって、ノリが良いのかノリが悪いのかよく分からない先輩だな。

 まぁ良い、無駄話はこのくらいにして本題に移ろうか。


 俺は満鳴先輩に隠し撮り写真を見せ、尋問を始める。


「この写真を知ってるか?」

「お、よく撮れてるやろそれ。我ながら上手く撮影できたんよ」

「一瞬で罪を認めましたわ!?」


 いや雛子、変に嘘を吐かれるよりは良いだろうよ。


 さてと、


「もしもし? 警察ですか?」

「ちょちょちょ!? 待って!? なんで通報するん!? どしたん話ピポパ!?」

「お黙りなさい! 待ちませんわよ!! 女子生徒を盗撮だなんて外道のすることですわ!! こんなこと、神様が見逃してもわたくしが見逃しませんわよ!!」


 珍しく本気で怒っている雛子が、満鳴先輩に対して声を荒げている。

 後輩の女子に言われ、少しでもこの変態に響く……と思いきや。


「ん? 女子生徒? なに言ってん」

「……え? ど、どういうことですの?」


 まるで、全く知らないことをいきなり今聞かされたのか、豆鉄砲を食らった鳩のように首を傾げる変態。

 雛子は予想していなかった相手の反応に動じながらも、再び写真を見せる。


「あの……コチラに写っているでしょう? 女子生徒が……」

「え……あ! ほんまや!? マジで人が写ってるやん!! うわ最悪!! せっかくのベストアングルやったのに!!」

「え……あの……その……」

「ちょっと待て!? 他の写真も人間おるわ!! え、良い写真が……最悪や……」


 目に見えて落ち込む先輩と、怒りを忘れ困惑している雛子。

 そして、それを眺める俺。状況はかなり混沌としていく。


「小鉄様……わたくしどうしたら……」


 困っている雛子を見ているのは楽しいが、あまり行き過ぎると流石に可哀想だなと、俺は薄々分かっていたことを雛子に伝えることにした。


「なぁ雛子」

「な、なんですの? 小鉄様」

「この写真、良く撮れてるよな」

「え? ……は、はい。よく女子水泳部の方が写って――」


 いや、そうじゃない。


「この競泳水着さ、凄く綺麗に撮れてるよな。躍動感があるというか、まるで生きてるみたいに」

「……???」


 雛子の言葉が止まる。

 満鳴先輩だけでなく、俺の言ってることが理解できず、おそらく脳がショートしているんだろう。


 僅かな時間だが、俺が雛子の返事をしばらく待っていると、先輩が満面の笑みで俺の肩を組んでいた。

 

「君この良さが分かるん!? いやーーせやろ!! “人間がいなければ”最高の写真やったんよ!! あーー惜しいことしたわ!」

「……」


 雛子はまだ理解できていないか、ならハッキリ教えてやろう。


 いいか雛子、良く聞けよ。この先輩はな――




「水着にしか欲情できない変態だ」


 ……

 …………

 ………………


「……ほぇ?」



「吾輩は“競泳水着探求会”の部長である。名前は剛」


 なんだコイツいきなり。

 なにを語り始めるかと思ったら、いちいちボケないと話せないのか?

 いっそのこと自転車の後ろに縄で縛って、市中ならぬ、学園内轢き回しの刑にしてやろうか。


「お待ちください。とりあえず聞いておきますわよ。小鉄様」

「おう、分かった」


 雛子のおかげで助かったな。おら、話を続けろよ。


「昔から自分は競泳水着でしか興奮出来んかってん。水着でもギリやわ・・・・・・っぱ競泳水着やろ」

「なに言ってんのコイツ」

「日頃から競泳水着を身につけ、視界にも極力競泳水着が入ってないと蕁麻疹がな……」

「雛子見てくれて、俺、鳥肌立ってるわ。ワンチャン蕁麻疹だろ。これ」

「あと、過呼吸にも……」

「窒息してしまえ」

「競泳水着煮出し茶、焙煎競泳水着コーヒー、風邪の時は漢方の競泳水着……これさえあれば生きていける……」


 煮出すな、焙煎すんな。お前はなにしてんだ。……え、待って? 漢方の競泳水着ってなに??


「競泳水着がいれば他に何も要らん。世界は競泳水着を中心に回ってる……そう思ってたわ……」

「脳外科行ってこい。その脳みそ摘出してこいよアホ」

「小鉄様!? 先輩に言い過ぎですわよ!?」


 なにが言い過ぎか、報酬が関わっていることなら俺はどこまでも冷酷になれるわ。


「でも、この自由で有名な学園も違ったんや!! 入学式の日に競泳水着を着て登校したらこの寮生にされたわ! 理不尽やろ!?」

「至極正当だろ。学園でアホなことして良いわけないだろ」

「寮を爆破した方が言いますと、説得力が違いますわね」


 今はその話はいいじゃないですや〜〜ん? もうそれは終わったことだし、そんなことよりもこの変態をなんとかしなきゃ、とね。


 話を変えないと俺にも飛び火が……、満鳴先輩を水泳部に引き渡してやるしかない。


 そう思った時、


「素晴らしいですわ! みつなる先輩様! わたくしも、とうもろこしを愛する者として気持ちが分かりますわ!」

「おぉ、分かってくれるんか!」

「もちろんですわ! 愛……いえ! 愛なんて軽いですわ!! これは魂の一部と言うのが相応しいですわね!」

「黄金院後輩!」

「みつなる先輩様!」


 ガシッ、と固い握手を交わす二人、なんかこの蚊帳の外感は地味に寂しいな。

 でも確かに、やってることは雛子も満鳴先輩も変わらないか? 好き過ぎるがあまりの奇行と言えば、二人とも変わらないしな。


「みつなる先輩様! お任せくださいませ! わたくしが水泳部の方々を説得してみせますわぁーー!!」

「こんな自分のために……さすがやわ黄金院後輩……君が競泳水着なら惚れていたわ……」

「ふふ、お褒めの言葉ありがとうございますわ!!」

「なに言ってんのお前ら?」


 あれ、てか待って?

 そんな変態先輩がいる寮に移らされたってことは――俺も同族だと思われたってこと!?


「ここまで侮辱されたのは初めてだわ。学園ごと爆破してやろうか」

「なにしておりますの!? 行きますわよ小鉄様ーー!!」


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