第23話 魔境の住人!? 女性用競泳水着を着たお兄さん
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ここから犯人を探す為の調査が始まる……ことはない。そんなことは推理小説の中だけ、俺はもっと効率的なことをする。
こんな時こそ、アイツの情報屋としての力が役に立つ。
『で、私にかけてきたの? コテツ』
「おう、持ってんだろ?(情報を)耳揃えて全部よこせ」
『誤解が生まれるよそれ!? 借金取りみたいじゃん!!』
通話アプリで電話をかける。
スマホのスピーカー越しに聞こえてくる柊の声は、いつもとは違う声色をしていた。
「忙しいのか?」
『物凄く忙しいよ!! ありがたいことにね!! コテツの手伝いと並行して新聞もやってて、今じゃかなりの認知度だよ!!』
「嬉しい悲鳴ってやつだな」
店を始めた時、双方の利益のために協力していたが、今では俺の店は消え、柊新聞の人気だけが残った。
悔しくはない。ずっと店を続けるには体力的にしんどかっただろうし、いつかは別のことをする予定だったからな。
……全然悔しくなんかないもん。
「小鉄様? 泣いておられますの?」
「泣いてねぇよ……!」
「ほらほら、小鉄様涙を拭いてくださいまし」
「ありがどう……鼻噛んでもいい……?」
「したら、わたくしプンプンですわよ!!?」
じゃあ辞めとくわ。やれやれ、これだから雛子は。
『え、イチャイチャしてないかな? 私、邪魔じゃない? 切っても良い?』
「イチャイチャなんかしていませんわよ夏希さん!?」
『えぇーー? なになにーー? コテツも隅に置かないなぁ』
「……茶化すな。忙しいんだろ? 早く俺の要件に答えろ」
『ふーーーーーーん』
なんだこいつ? 茶化しているのかと思えば、突然反応が悪くなった。
すると、少しの無言の後、
『ぶちっ』
「あ、おい!」
柊が一方的に通話を切りやがった。
なんなんだよアイツ、雛子と顔を見合わせていると、スマホの通知が鳴ってメールが届く。
【今話したくない! ここに行ってみなよ!! ぷい!】
そんな文章と共に位置情報も送られてきた。
「どうしたのでしょうか夏希さん?」
「知らね、アイツは昔からよく分からない奴だからな」
だが、昔から知ってる俺でも知らない柊の感じではあった。電話だから声しか分からないけどな。
「でも、今はそれよりも気にすることがあるだろ?」
「そうでしたわ! さぁ小鉄様! 事件解決に向けて、行動いたしますわよ!!」
へいへい、と柊から送られてきた場所を見て、俺たちは目を見合わせた。
「「え、ここって……」」
●
学園から片道三十分、緑でいっぱいの自然に溢れた“そこ”はいつものように俺を迎える。
そして、またもタヌキがいるし……、もはやあれはここの守り神なのかもしれない。
とりあえず、ここは先に言っておくべきことがあるだろう。
「ただいまっと、」
「おーーよしよしですわねぇーー!! おタヌキ様は初めてお目にいたしましたわ! とても可愛らしいですわ!」
「なに撫でてんだ!!? 汚いだろうが! ほらあっち行け! シッシッ!」
知らない間にタヌキを撫でまくる雛子、それを見てすぐに離そうとするが、
「まーまー、小鉄様も撫でてみてくださいまし。大人しくて、とても可愛らしいですわよ」
「あ、本当だ。モフモフで可愛いな」
……じゃなくて!
「行くぞ雛子! 早く解決して報酬を貰うぞ!」
「はっ! うっかりしておりましたわ! つい撫で撫でしたくなってしまう! これがタヌキ様の魔力ですわね!」
俺たちが撫でるのをやめると、タヌキは寮の玄関に向かい、中へ入っていく。
やっぱりあのタヌキ、誰かが飼ってるのか? 首輪付けてたし。
まーそれもいずれ分かるか。なんて言ったって――
「この寮にすぐ戻ってくるとはな……」
そう、朝に雛子と出て行ったオンボロ第七寮に、学園での俺の家となるところに放課後すぐに帰ってきた。何故か……。
「柊のやつ本当に犯人がここにいると? 笑えない冗談だな。我が家みたいなもんだぞ?」
「心中お察しいたしますわ」
「察してんなら俺と寮代われや、雛子」
「小鉄様は女子寮に住みたいと!? 破廉恥ですわ!?」
お前は何を言ってんだ? ……ったくよ。冷静になれ?
「自分の住んでる寮に盗撮犯がいるかもしれないんだぞ? これが冗談ならどれだけ良いか」
「ですが、夏希さんの情報は間違いないのでしょう? 小鉄様が信用しているとおっしゃっておりましたのよ?」
「ぐぬぬ……」
それはそうだけど……。
「小鉄様はこの寮で他の住人の方には会いませんでしたの?」
「え、他の住人?」
「当然でしょう? 寮なら他の住人がありますわよ」
あーーなるほどねぇーー……。
「会ったことないかも」
「え、“誰とも”ですの!?」
「あ、うん。誰とも……」
そういえば、飯も勝手に用意されていたような?
「それ絶対に他の方おりますわよねぇ!!?」
「うぉ! そうじゃん!! 寮なんだから絶対他のやついるじゃん!!」
「そんな当たり前のことに驚かないでくださいまし!!?」
「確かに!!?」
自分の住む場所に変な奴がいるかもしれない、ということよりも。
そもそも、しばらく住んでいて誰も見かけていない寮に違和感を全く持っていなかった自分に驚愕だわ。
ともかく――
「鬼が出るか蛇が出るか……確かめてやろうじゃねぇか! 一つ屋根の下で生活してる奴をよぉ!!!」
「そうですわ小鉄様!! 夏希さんの情報が間違いなら安心の寮生活! 正しければ……さぁ! 行きますわよ!!」
「正しければなんだおい? 可哀想な目で俺を見るな??」
ノリで押し切ろうとしたのに現実を突きつけやがって……だが、柊から送られてきた“魔境”の意味も知らないといけない。
「あ、開けるぞ」
「はいですわ! ドンと来いですわ!」
寮の入り口の扉に手をかけ、勢い良く開け放ち玄関へと入り込む――
「お、おかえりーー。……ん? 何してんの? なにそんなところで突っ立ってんの? はよ入らな虫入るやん!」
丁度、玄関にいた男子生徒。
ネクタイの色から二年生、髪に緑色のメッシュが入った、無駄に爽やかそうなお兄さんが“競泳水着姿で”玄関に立っていた。
しかも女性用競泳水着を、だ。
……
…………
………………
「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!! 変態ぃーーーー!!!?」」
もう色々見るに耐えない光景。
現れたのは、鬼よりもある意味怖い、邪悪な変態でした。




