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第22話 被害者より犯人が心配だが?


「練習中に失礼いたしますわーー!」

「ちわーーす。邪魔するぞーー」


 放課後、報酬……いや、事件解決のために水泳部のホームグラウンドこと、屋内プールへとやってきた。


「広いなここ……この学園は至る所に金をかけてんな。お、温水プールなのか凄いな」

「こちらの水泳部は毎年大会出場している凄い部活みたいですわよ」


 なるほど、だからいつかのメイド部? みたいなところのように学園から大量の支援があるわけか。部費山盛りってわけか。


「いえ、国内外の大会を総なめにしたこちらの部長様が改装したそうですわね」

「まさかの自費!? やばすぎんだろ!!?」


 この規模のプールに個人が金かけてんのか!? テレビの生中継で観るようなデカい建物を!?

 ここまで水泳に金をかけている奴なら、盗撮なんて許せないだろうな。


「あ、いえ、それが……」

「ん?」


 俺が投げかけた疑問に、雛子がなぜか言い淀んでいると、


「大変お待たせいたしました」


 背後から突然聞こえてきた声、振り返ると女子生徒がそこにいた。おそらく水泳部の奴だろう。

 制服姿で……、あ、スクール水着じゃないのか。


「ギロッ! ですわ」

「あーー!! なんか泳ぎたい気分だなーー!! でもぉ、水着着てなくてぇ〜〜! 小鉄ったらドジ? てへ!!」

「フルチンで入ればよろしいですわよ。……鼻の下伸ばして……お馬鹿」


 おい、乙女が下品な言葉を言うんじゃありません! はしたないですわよ!?


 最後の方がなにを言っていたのか、ハッキリと聞こえていないが、相手方を放置するわけにもいかないだろう。いい加減話をしようか。


「来ていただいてありがとうございます。私は水泳部員の者です。今回はわざわざお時間をいただいて……」


 申し訳ない様子で頭を下げる女子生徒、なんて礼儀正しいんだ。久しぶりに現れたまともな奴だな。助かった変な奴らが多かったから。


「わたくしは黄金院雛子と申しますわ。そんな畏まらないでくださいまし、学園の困りごとをなんとかするのは、学園生のお仕事ですわ」

「そう言っていただけるとは……本当にありがとうございます。私……怖くて……怖くて」


 おーー、なんか“女性”って感じだ。これが守りたい欲ってやつか? 雛子や柊にはないお淑やかって感じが良いな。

 そうだそうだ、自己紹介をしなきゃ。


「初めまして俺は――」

「テメェ男だな!? なにしに来やがったぶち殺すぞワレェ!!?」

「あれぇ!? お前さっきの人と同一人物か!? お淑やかな女の子は何処行ったんだよ!?」

「喋るな、殺すぞ」

「口悪!!!」


 さっきまでの物静かそうな女の子は何処に行ったのか。俺の自己紹介を遮り、恐ろしい眼光で睨みつける女子生徒は、警戒心全開で俺を威嚇してきた。

 どうすれば良いのか、助けを求める俺の目を見て、雛子が助けに入る。


「この方は銭原小鉄様ですわ。わたくしと共に事件解決をするようにと、後離教諭に頼まれたんですの」

「後離先生が依頼するほどの奴!? それに銭原ってあの“聖人君主”の……?」

「おい、俺はどんな呼ばれ方してんだよ」


 間違いなく柊の新聞が原因だろうが、メイド部のアホな先輩や、謎の評価が広がってるせいで、もはや俺は俺自身の学園内での評判を把握できていない。

 まぁ、悪い噂よりは良いが。


「失礼いたしました。ごめんなさい……色々あって怖くて……」

「仕方ありませんわ。盗撮だなんて怖いことがありましたら、不安になりますわよ」

「不安? ブチギレてたけど? 犯人に怯えるどころか、手当たり次第殺意振り撒いてたよね?」

「怖いめぅ」


 おい、もうバレてんだよ。大人しいフリをするな。お前小動物に見せかけた猛獣じゃねぇか。

 大丈夫? これ犯人探して大丈夫? 俺たちのせいで学園が殺人現場になったりしない?


「それでは現場に案内します。なんとしても犯人を探して欲しいです。私のストレス発さ――水泳部のみんなの為に」

「かしこまりましたわ! お任せくださいまし!」

「あれ? なんか想いが溢れてなかった? 本音が見えてなかった?」


 俺の疑問は届くことはなく、水泳部員に連れてプール内を巡り、写真と同じ画角を確認してみる。


「建物下の換気用の窓……なかなかの場所ですわね」

「排水口の中からのアングルもあるぞ!? 怖!!?」

「怖いどころかこれは……ドン引きですわ……」


 おぉ、雛子が本気で嫌そうな顔してる。これはこれで見る機会がないから新鮮だな。


「新聞部の方に手伝ってもらっているんですが、なかなか尻尾を掴めなくて……」

「お任せくださいまし! わたくしたちが必ず解決いたしますわ!」

「黄金院さん……!!」

「んーー」


 二人で話をしている横で、俺は改めて写真を見てみる。


 なんだろう? なにか違和感というか、アングル自体は盗撮犯らしい変態的アングルだが、なにかが引っかかるぞ……。


「撮る位置は考えられてるけど、なんか写真がおかしいのか?」


 盗撮された練習中の水泳部だが、もっとエロ――いや、刺激的な瞬間があったと思う。

 着替えシーンだったり、男として気になるものはいくらだってあるはず……だが、


 “渡された全ての写真にそういったものはなかった”


 あるのは練習中や、ただ立っている水泳部員の写真のみ。意図的に柊が送ってきた写真がこれだけだったのか?

 いや、アイツに限ってそんな中途半端はしない。


 じゃあ何故?


「分からないな……さて」


 とりあえず、雛子が見ていない隙に画像を俺のスマホに移して――


「小鉄様? なにをしておりますの??」

「ふーーむ!!? さて雛子君! 早速事件を解こうじゃないか!! 悩める人々を助ける為に俺は名探偵になろう!!!」

「まぁ! 小鉄様がやる気に!! ……これは怪しいですわね。スマホを見せてくださいまし」

「おい、なんでだ」


 もっと俺を信用してくれよ。相棒だろ。



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