第20話 とうもろこし泥棒!? 来れ! 最恐の裁き!! 後編
「次はお前だな、真波」
「あまり気は進まないけど」
不満を漏らす真波だが、ここにいるということは、準備はしてあるということだろう。
柊のような悪魔の所業なら、俺もさすがに躊躇ってしまうが、コイツなら“適度”を理解している。
だから、俺は真波に告げるのだ。
「御託はいい――やれ」
「はぁーー気が進まない……」
露骨なため息だ。だがやれ。
常識人のやる“適度な”罰を見せてくれ。
期待に胸の膨らむみんなに、真波は嫌そうにな声で宣言した。
「俺の考えた作戦はこれだよ」
名付けて――
●
「酷い目にあったでやんす……」
「俺のスマホを見ろ……先生から結婚式の予約をいつにするか連絡が来たぞ」
「俺は……プロレス部の男共から全裸のポージング写真が……」
「「「オロロロロロロ――」」」
屈強な男たちが、畑に肥料を口から与えている。とても酸っぱそうな肥料を……。
いくら部活で鍛えられているからとはいえ、この心の傷は計り知れないのだろう。
だが、この程度で止まる奴らではない。
「我々は屈しないぞ!! 日々の練習でこちとら腹が減っているんだ!!」
「そうだそうだ! 学食なんかで俺たちの腹が満たされてたまるか!!」
「米一俵だぁ!? 俺たちの胃袋を舐めんな! 米蔵一軒ごと持ってこいや!!」
「せっかく見つけた俺たちの“とうもろこし畑”を諦めてたまるかぁーー!!」
むさ苦しい男たちの雄叫びが合わさり、怒号となって響き渡る。普通に近所迷惑だ。
はたして……真波の作戦はなんなのだろうか……。
その時だった。
「なにをしている貴様らァ」
「「「!!?」」」
俺はインカム越しに、奴らには背後から、突然聞こえてきた死を連想させるほどの寒気。
そう俺たちは思い出した――ゴリラに蹂躙されていた恐怖を……。
「後離先生!!?」
「うわ! ゴリだ!!」
「ゴリラだぁぁぁ!! ゴリラがきたぞぉぉぉ!!!」
「クソぉーー!! ここは俺が食い止める!! お前らはその間に食料を――」
生贄……否、殿を務めるために立ち上がったモブ。勇気のある行動だ。
けれど、
「あだだだだだっ!!?」
頭を掴まれ、筋肉質なモブを“片手で”持ち上げた。前世も今世も来世もゴリラのゴリ先が不気味な笑みを見せる。
「覚悟しろ貴様ら……! 今から貴様らにだけ特別な補習をやってやろう!!」
「「「ヒィィィィ!!!?」」」
インカム越しだというのに、ラグビー部の奴らと共に思わず悲鳴が溢れてしまう。
ゴリ先の補習を知っている者なら、誰でも恐怖する。それほどまでに恐ろしい補習。
良かった……俺はあの場にいなくて……。
「銭原聞いているか」
え、な、なんだと!? ゴリ先のやつ直接脳内に!!? 奴はエスパーか!?
「場所は分からないが、どうせ、どこかで聞いているんだろう」
あ、エスパーじゃないわ。ただ単にインカムが畑の音声を拾っているのか。
びっくりした、心臓止まったかと思ったわ。危ない危ない。
「ちょっと心臓取り換えてくるわ」
「止まってるじゃんそれ!!」
仕方ないだろ、耳元でおっさんゴリラの声が聞こえたんだぞ?
もはや頭の中はゴリラでいっぱいだ。頭がおかしくなるところだった。
泡を吹いて倒れそうなところ、かろうじて意識を保ち、ゴリ先の声に耳を澄ます。
……
…………
………………
「……やり過ぎだ。後で話がある」
あ、スゥーーーー……
●
「終わった! これが死の宣告ってやつか!!」
「これが俺の作戦――“先生に言ってやろ作戦”さ」
「小学生かっ!!!」
まずい!! ゴリ先にバレちまった!! こ、殺させる!!!
絶望感で震えていると、柊が疑問を呟く。
「でもさ、コテツ? なんで後離先生は怒ってるの? 先生から許可をもらったからやってるんだよね?」
さっき言ってたもんね、と言う柊に俺は渋々答える。
「あぁ、許可はもらってるな」
「そうなんだよね? じゃあ大丈夫じゃないの? 怒られないでしょ」
「許可は、な」
「ん?」
「許可“は”貰ったぞ」
「ん? どういうこと?」
だから、
「とうもろこし泥棒を探すために、監視カメラとかの設置、夜に寮を離れて見張る――」
それらの“許可を貰った”だけだぞ。
「え!? どういうことですの小鉄様!!?」
「そうだよ!! 許可貰ったって言ってたよね!?」
え、言ったぞ? 俺はちゃんと――“ゴリ先に話は通しておく”と、な。
「貰った許可はさっきの二つだけだぞ。あのゴリラに話をしただけだ」
「あー言えば、こーいう過ぎない!?」
「では何故こんなことをしているんですの!? やり過ぎで怒られてしまいますわ!!?」
だから、それも言っただろうが。
「俺の日頃の鬱憤を“ラグビー部”で発散したかっただけだよ!!!」
「ゲス過ぎますわよ小鉄様!!?」
「汚い!! さすがコテツ! 汚いよ!!」
「だからね、嫌な予感がしたから後離先生を呼んだんだ」
クソ! 真波め! 余計なことをしやがって!!
だが、もう止まる気はない。俺のラグビー部への嫌がらせは、“ゴリ先”への反撃に変わった。
「俺の番だな!! 俺の罠はこれだ!!」
俺が天高く掲げた“それ”を見て、雛子は目を見開き驚く。
「それは――“クレイモアとうもろこし”ですの!!?」
そう、雛子から説明のあった。一日で実る最強のとうもろこしであり、
衝撃を加えると“クレイモア地雷のように、とうもろこしが爆発して実が弾ける”とうもろこし型爆弾なのだ。
それを、
「えい」
「「「あーーーー!!!」」」
隠れていた教室の窓から、そのとうもろこしを投げ、ゴリ先やラグビー部がいる畑に落ちた。
その結果――
「「「「「ギャァァァァァ!!!」」」」」
無数のとうもろこしが誘爆し、辺り一面が戦場と化す。
これは……コラテラルダメージだ。“ゴリ先への復讐”のための数少ない犠牲だ。
「爆発オチは前にもやったな……だが、これも仕方ないな」
あばよ、ゴリ先。安らかに眠れ。
「銭原……お前を殺す……」
~おまけ~
翌日の銭原小鉄の頭には、五重の塔並みのタンコブがあったという。
「小鉄様! 酷い! 酷いですわ! とうもろこしたちの仇ですわ!!」
「雛子……やめてくれ……とうもろこしで叩かないでくれ……タンコブが増えちまう……」




