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第20話 とうもろこし泥棒!? 来れ! 最恐の裁き!! 後編


「次はお前だな、真波」

「あまり気は進まないけど」


 不満を漏らす真波だが、ここにいるということは、準備はしてあるということだろう。

 柊のような悪魔の所業なら、俺もさすがに躊躇ってしまうが、コイツなら“適度”を理解している。


 だから、俺は真波に告げるのだ。


「御託はいい――やれ」

「はぁーー気が進まない……」


 露骨なため息だ。だがやれ。

 常識人のやる“適度な”罰を見せてくれ。

 

 期待に胸の膨らむみんなに、真波は嫌そうにな声で宣言した。


「俺の考えた作戦はこれだよ」


 名付けて――



「酷い目にあったでやんす……」

「俺のスマホを見ろ……先生から結婚式の予約をいつにするか連絡が来たぞ」

「俺は……プロレス部の男共から全裸のポージング写真が……」

「「「オロロロロロロ――」」」


 屈強な男たちが、畑に肥料を口から与えている。とても酸っぱそうな肥料を……。

 いくら部活で鍛えられているからとはいえ、この心の傷は計り知れないのだろう。


 だが、この程度で止まる奴らではない。


「我々は屈しないぞ!! 日々の練習でこちとら腹が減っているんだ!!」

「そうだそうだ! 学食なんかで俺たちの腹が満たされてたまるか!!」

「米一俵だぁ!? 俺たちの胃袋を舐めんな! 米蔵一軒ごと持ってこいや!!」

「せっかく見つけた俺たちの“とうもろこし畑(オアシス)”を諦めてたまるかぁーー!!」


 むさ苦しい男たちの雄叫びが合わさり、怒号となって響き渡る。普通に近所迷惑だ。


 はたして……真波の作戦はなんなのだろうか……。


 


 その時だった。


「なにをしている貴様らァ」

「「「!!?」」」


 俺はインカム越しに、奴らには背後から、突然聞こえてきた死を連想させるほどの寒気。


 そう俺たちは思い出した――ゴリラに蹂躙されていた恐怖を……。


「後離先生!!?」

「うわ! ゴリだ!!」

「ゴリラだぁぁぁ!! ゴリラがきたぞぉぉぉ!!!」

「クソぉーー!! ここは俺が食い止める!! お前らはその間に食料を――」


 生贄……否、殿を務めるために立ち上がったモブ。勇気のある行動だ。


 けれど、


「あだだだだだっ!!?」


 頭を掴まれ、筋肉質なモブを“片手で”持ち上げた。前世も今世も来世もゴリラのゴリ先が不気味な笑みを見せる。


「覚悟しろ貴様ら……! 今から貴様らにだけ特別な補習をやってやろう!!」

「「「ヒィィィィ!!!?」」」


 インカム越しだというのに、ラグビー部の奴らと共に思わず悲鳴が溢れてしまう。

 ゴリ先の補習を知っている者なら、誰でも恐怖する。それほどまでに恐ろしい補習。


 良かった……俺はあの場にいなくて……。


「銭原聞いているか」


 え、な、なんだと!? ゴリ先のやつ直接脳内に!!? 奴はエスパーか!?


「場所は分からないが、どうせ、どこかで聞いているんだろう」


 あ、エスパーじゃないわ。ただ単にインカムが畑の音声を拾っているのか。

 びっくりした、心臓止まったかと思ったわ。危ない危ない。


「ちょっと心臓取り換えてくるわ」

「止まってるじゃんそれ!!」


 仕方ないだろ、耳元でおっさんゴリラの声が聞こえたんだぞ?

 もはや頭の中はゴリラでいっぱいだ。頭がおかしくなるところだった。


 泡を吹いて倒れそうなところ、かろうじて意識を保ち、ゴリ先の声に耳を澄ます。


 ……

 …………

 ………………


「……やり過ぎだ。後で話がある」


 あ、スゥーーーー……



「終わった! これが死の宣告ってやつか!!」

「これが俺の作戦――“先生に言ってやろ作戦”さ」

「小学生かっ!!!」


 まずい!! ゴリ先にバレちまった!! こ、殺させる!!!

 絶望感で震えていると、柊が疑問を呟く。


「でもさ、コテツ? なんで後離先生は怒ってるの? 先生から許可をもらったからやってるんだよね?」


 さっき言ってたもんね、と言う柊に俺は渋々答える。


「あぁ、許可はもらってるな」

「そうなんだよね? じゃあ大丈夫じゃないの? 怒られないでしょ」

「許可は、な」

「ん?」

「許可“は”貰ったぞ」

「ん? どういうこと?」


 だから、


「とうもろこし泥棒を探すために、監視カメラとかの設置、夜に寮を離れて見張る――」


 それらの“許可を貰った”だけだぞ。


「え!? どういうことですの小鉄様!!?」

「そうだよ!! 許可貰ったって言ってたよね!?」


 え、言ったぞ? 俺はちゃんと――“ゴリ先に話は通しておく”と、な。


「貰った許可はさっきの二つだけだぞ。あのゴリラに話をしただけだ」

「あー言えば、こーいう過ぎない!?」

「では何故こんなことをしているんですの!? やり過ぎで怒られてしまいますわ!!?」


 だから、それも言っただろうが。


「俺の日頃の鬱憤を“ラグビー部”で発散したかっただけだよ!!!」

「ゲス過ぎますわよ小鉄様!!?」

「汚い!! さすがコテツ! 汚いよ!!」

「だからね、嫌な予感がしたから後離先生を呼んだんだ」


 クソ! 真波め! 余計なことをしやがって!!

 だが、もう止まる気はない。俺のラグビー部への嫌がらせは、“ゴリ先(根本的ストレス)”への反撃に変わった。


「俺の番だな!! 俺の罠はこれだ!!」


 俺が天高く掲げた“それ”を見て、雛子は目を見開き驚く。


「それは――“クレイモアとうもろこし”ですの!!?」


 そう、雛子から説明のあった。一日で実る最強のとうもろこしであり、


 衝撃を加えると“クレイモア地雷のように、とうもろこしが爆発して実が弾ける”とうもろこし型爆弾なのだ。


 それを、


「えい」

「「「あーーーー!!!」」」


 隠れていた教室の窓から、そのとうもろこしを投げ、ゴリ先やラグビー部がいる畑に落ちた。


 その結果――




「「「「「ギャァァァァァ!!!」」」」」




 無数のとうもろこしが誘爆し、辺り一面が戦場と化す。

 これは……コラテラルダメージだ。“ゴリ先への復讐(目的遂行)”のための数少ない犠牲だ。


「爆発オチは前にもやったな……だが、これも仕方ないな」


 あばよ、ゴリ先。安らかに眠れ。






「銭原……お前を殺す……」





        ~おまけ~




 翌日の銭原小鉄の頭には、五重の塔並みのタンコブがあったという。


「小鉄様! 酷い! 酷いですわ! とうもろこしたちの仇ですわ!!」

「雛子……やめてくれ……とうもろこしで叩かないでくれ……タンコブが増えちまう……」



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