第17話 銭原・ナイチンゲール・小鉄
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俺が保健室に軟禁……もとい、絶対安静生活をしていた間に色々なことがあった。
「小鉄、失礼いたしますわね!」
「やっほーー! コテツ! 元気にしてるーー!?」
今日も今日とて、見舞いにくる二人の声に俺の眠りは妨げられ、苛立ちから声を上げる。
「保健室では静かにしろアホ!!」
「君の方がうるさいですよ。銭原君」
「あーーーーー!!! マジすいませんでした!!!」
「コテツうっさ!!? 元気有り余ってるねーー!」
元気よく返事をしろ、と育てられたんでな。俺はどんなところでも元気百倍だ。
商売でも声が出ている方が印象良いだろ? つまり俺は誰にも好印象ってわけ。
「銭原君静かにしなさいね? 後離先生に報告しても良いけど?」
「すいませんでした。静かにしてます。今日から“清楚”で物静かな子になります」
「どこが好印象!? コテツ見てよ先生の目をさぁ!?」
あぁ、あれは生徒を癒す目じゃないな。命を刈り取りそうな目をしてる。
いや、そうじゃなくて
「今日はどうしたんだよ。ここ毎日言ってんだろ? わざわざ見舞いに来なくて良いって」
「全くコテツは! こんな可愛い女子が毎日来て嬉しいくせにさーー」
「クラスに友達がいないのか? お前らの交友関係がお母さんは不安ざますよ! あなたって流されやすいから心配!」
「うわ、出たよ! お母さんが言うナチュラルなウザ発言!」
やめてやれ、世のお母様たちも色々考え過ぎて疲れてんだよ。あまり本当のことは言うな。
「コテツの方が失礼そうだけどね……って、違うよ! 今日の目的はコテツじゃないから! 勘違いしないでよねーー」
じゃあなんの用事で来たんだよ、そう聞き返すと、さっきまで静かだった雛子が口を開く。
「わたくしたち、ここで昼食をいただくことにしましたの。ほら、見てくださいまし小鉄様! 出店で色々なお食事を買ってきたんですのよ!」
「保健室で飯を食べるって、保健室的にそれは良いのかよ」
「先生からは許可をいただきましたわ!」
仕事をしながら軽く返事をする先生。
おい、良いのかよ。清潔にしないといけない場所だろ。
うるさい奴がやってきて、ごちゃごちゃ文句を言いたい気持ちはあるが、保健室の先生が許可を出したなら俺が言うことではないだろう。
全く……、
「静かな癒しの空間が……ったく」
「とかなんとか言って! 嬉しそうじゃんコテツ!」
「小鉄様は素直じゃないですものね! わたくしの相棒は照れ屋で困りましたわ!」
「あーー!! やっぱ一人が好きだなーー!! アイラブ一人ーー!!!」
「そんなこと言わないでくださいまし、ささ、小鉄様も一緒にいただきますわよ」
気をつけろよ? 思春期男子は恥ずかしいと野生動物みたいに逃げるんだよ。丁重に扱え。
「難儀な性格してるよねコテツ! あ! 私のは“海鮮丼”ね! 美味しそうだったんだーー!!」
「わたくしは“トマトクリームパスタ”ですわ! もちろん! “コーンスープ”を添えて!」
「俺の分は……お、“ケバブサンド”か。俺これ好きなんだよ」
みんなでベッドから離れ、テーブルの方へ行って食事を始める。
うん、美味い。一口食べただけで分かるこの美味さ。ピリ辛で中に入ったヨーグルトソースが絶品だ。
「海鮮丼も美味しいよ! このボリュームと豪華さでワンコインは安いね!!」
「わたくしのパスタもとても美味しいですわ。特にこのコーンスープが凄く!!」
「いや、ここまでとはな。この二週間で色々変わりすぎだろ」
「本当だよねーー! 聞いた? 学園側がこれからは毎週ごとに学外から出店とか呼ぶらしいよ? 配られたプリントに“食べたい物アンケート”とかあったしね!」
「ガチすぎんだろ」
俺の大怪我から二週間が経ち、学園では色々なことが変わった。
学園内のレストランはそのままで昼時には出店が並び、今まで以上に様々な物が食べられるようになった。
継続して店を出している部活もあるし、昼飯の選択肢が一気に増えた。
「学園もお店をしてる部活には金銭的援助をしてくれるようになったし、やりやすくなったしね!」
おう、そうだな、ただ文句があるとしたら──
「考えてたのは俺だったのに!! くそ!! 発想をパクられた!!」
「まーまー小鉄様落ち着いてくださいまし、小鉄様がした“奉仕の心”に感化された方々が多かったんですのよ」
「“奉仕”!!! ぷぷぷぷっ! あの小鉄にそんな心あるわけないのに!」
爆笑する柊はムカつくが、なにも言い返せない。だってそうだろう!!?
「俺なら援助じゃなくて、場所代や企画立案代、さらには新商品のレシピを渡してアイデア使用料とか、ありとあらゆる金を取るのに!!!」
「そんなことばかり考えてるから天罰がきたんだよ! コテツ懲りてないね!?」
懲りて儲かるならいくらでも懲りてやるよ!! つまり、一銭にもならないなら俺は反省はしない!
「ここまで来ると清々しい……!?」
「さすがわたくしの相棒ですわ! 不屈の精神ですわね!! どこまでも伸び続けるとうもろこしのような向上心を感じますわ!」
だろ? そんな褒めるなよ雛子。
「向上心? これは“潔くない”って言うんだよ?」
「でも、小鉄様のおかげでこの学園も賑やかになっておりますわ。食事のこともそうですが、一般生徒と特権生徒がお互いの環境を気にせずに仲良くなっておりますわよ」
「え、なんでそんなことが俺のおかげなんだ?」
俺は純粋に金稼ぎをしていただけなのに、そんな学園の環境を変えるようなことした覚えないぞ?
疑問を投げかけると、ニヤニヤしながら柊が一枚の新聞を見せてきた。
「なんでも霜下先輩が偉く小鉄を気に入ってるみたいだね!」
そこにはライバル店の奴だった霜下先輩が俺の“聖人的行動”を語ったインタビューが――え?
「あれ? 俺って金稼ぎで店を始めたよな?」
「そうですわね」
なんだよこの“学園内での差別”に取り組んだ銭原君って?
どこの銭原君?? あ、同じ苗字くらいいるかぁ。
「“銭原小鉄君のナイチンゲール的奉仕の姿”だってよ(笑)」
「マジで俺じゃねぇか!!? なんだこれ!? 俺の知らないところで俺の話が広がってるぞ!!?」
「銭原・ナイチンゲール・小鉄……ぶふっ!!!」
笑ってんじゃねぇぞ柊ぃぃ!!!
「これで小鉄様の知名度も鰻登りですわ!! これからは“相棒”として、“一億”の借金を返していきますわよ!! わたくしと貴方は一蓮托生ですわーー!!」
その一蓮托生の言葉の後には“(借金)”が付いてるだろうが!? クソ最悪だぁーーー!!!




