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もろマネ 〜とうもろこしお嬢様は常識を知らない〜  作者: 瑞柿けろ
第一章前半 とうもろこしと銭ゲバと
16/18

第16話 爆発の代償!? 一億円ととうもろこし!




「知らない天井だ」

「あら、お目覚めになられまして? 小鉄様」

「雛子?」


 ゆっくり目を覚ますと、真っ白で、清潔感溢れる知らない場所。

 そんな白の世界に、場違いなほど黄金色の存在感を放つ黄金院雛子がいた。


 ……

 …………

 ………………


 いや、


「俺の気のせいだな。さて、もう一眠りするか」

「寝てしまいますの? もう少し起きていてくださいまし、もうそろそろで剥き終わりますのよ」

「……“剥き終わる”ねぇ?」


 状況をドラマで例えるなら、病室で目覚めた主人公にヒロインが林檎を剥いている場面だろう。


 だが、うちの雛子は一味違う。


「なんでお前は“とうもろこしを剥いているんだ?”」

「小鉄様は面白いですわね。病人には剥くんですのよ? とうもろこしを。わたくしネットで勉強いたしました」

「突然の倒置法!?」


 どんな勉強してんだよ!!

 林檎の皮をナイフでカット……ではなく、とうもろこしの皮を剥き、髭を綺麗にむしり取る雛子の慣れた手捌きには素直に賞賛したいが、今はそうじゃない。


「そこは林檎だろ!? なんで“とうもろこし”なんだよ!?」

「病人には滋養ですわ。つまりとうもろこしですの」


 どういう理屈!!?


「ここはさっぱりとして甘い! そんな林檎の場面だろう!?」

「何をおっしゃっておりますの!! このとうもろこしは黄金院家が作った新種なんですのよ!? 今この時に最も適しておりますわ!」


 新種? それがなんでこの場面に適しているんだよ。


「このとうもろこしの粒を一つ食べただけで……」


 食べただけで?

 なんだろう、栄養満点で元気いっぱいとでも言うのか?


「傷が全快して、十日分のエネルギーを摂取できますわ!」

「予想外に凄かった!? どこの仙豆だよそれ!? ドラゴ●ボールでしか聞かねーよ!?」

「まだ試作品ですので、もしかしたらエネルギーに耐えられずに身体が爆散するかもしれませんわ」

「そんな物を俺に食わせようとしたのか!? ――ッ!? 痛っ!!」


 ボケとツッコミ……いや、雛子のことだから真面目に言っていたのだろうが、それはさておき。

 不満を訴えている時、突然全身に激痛が走り、よく身体を確認してみると――


「な、なんじゃこりゃーー!?」


 全身が包帯だらけで、左足はギプスで固定され動かないように吊るされている。


「少しお待ちくださいまし、連絡しなければなりませんの」


 おい待て雛子!? こんな状況の俺を置いて何処へ行く!? 頼むから説明してくれ!!

 俺の叫びも虚しく、残るのは全身への激痛。


 悶え苦しんでいると、雛子はすぐに戻ってきた。


「小鉄様、あまりうるさくしますと怒られてしまいますわよ? 保健室ではお静かに、ですわ」

「元はと言えば、お前がなんの説明もなく俺を一人にしたから……ん? ちょっと待て? ここが保健室だと?」

「はい、こちらは大輪学園の保健室ですわよ。もしかして小鉄様……覚えておりませんの?」


 覚えてない? 一体なんのことだ?

 頭に疑問ばかり浮かんでくるが、とりあえず意識が無くなる前のことを考えてみる。


「ハンバーガーの材料を作って……」

「まぁ、朝から働き者ですわね。さすが小鉄様」

「そうしたらロボットがとうもろこしを金に変えるのを知って……」

「その不具合でしたら、家の者に報告済みですわ。そんな経済を脅かす能力なんて即刻修正ですわよ」


 億万長者になれると思って……その後――


「そうだ!! 俺の! 俺の金は!?」


 床一面に広がってた俺の金はどこ行ったんだ!? 

 今すぐ部屋に行きたい。だが、全く身動きの取れない身体では、何もすることができない。


 クソ! こうしている間にも誰かに俺の金が盗られるかも!!


 俺の焦りを読み取ったのか、雛子は冷静に話し出す。


「まず小鉄様は“なんでも出来立て創る君”が爆発いたしまして、それに巻き込まれたんですわ」

「爆発!? なんて不良品を!! 雛子お前ってやつは!」

「データが送られてきましたのですわ。“劣悪な労働環境”と」

「あ、え、えっと……な、なんのことかなー?」

「それ以降はロボットから言葉に出すのも不適切なメッセージが送られてきました」


 どんな文章!? あのロボット何を送ってやがった!?


「最後のメッセージは“悪ハ滅ビマシタワ”と……小鉄様の寮の部屋に行ってみましたら、部屋が消し飛んでおりましたわ」

「嘘だろ――あ……」


 だんだん思い出してきた、そうだ……あの時ロボットが爆発して、俺は意識を失ったんだ。


「小鉄様の言っていた金とはこれのことでしょうか」

「あーー! 俺の金!! ありがとな雛子! 拾っといてくれたのか!!」

 

 雛子が手のひらに乗せて見せてきた金色の粒を確認し、激痛を忘れて俺は声を上げる。

 良かった、雛子が回収しといてくれたのか。


 これで安心だ、と喜んでいると、


「いえ、これは……」

「黄金院、もういい。ここからは俺がこの馬鹿に話をする」


 言い淀む雛子に声をかけたおっさん、ゴリ先がいつの間にか来ていた。


「な、なんでゴリ先がここに……」

「銭原が目を覚ましたら呼ぶようにと、黄金院に伝えていたんだ」

「雛子! 裏切りやがったな!?」


 そうか、さっき一瞬いなくなったのは、ゴリ先を呼ぶためだったのか。


「ここからは俺から伝えるぞ銭原」

「あ、いや、遠慮なく……」

「まず、貴様が破壊した部屋についてだが」


 ちょっと待て!? なんで俺なんだよ!? ロボットは雛子からの借り物だぞ!?

 俺だけのせいじゃないだろ、と言ってみるが、ゴリ先の眼光が鋭くなる。


「それはなにか? お前は黄金院にも……こんなお前のことを心配して、ずっと側にいてくれていた子にも罪を着せるのか?」

「そんな――!? 小鉄様ったら酷い!!」

「違う違う違う!! そうじゃなくて!!」


 黄金院“家”から借りたんだぞ!? あっちの家の方にもなんか要求しろよ!! あんなん不良品だろ!!?


「想定してない稼働方法で壊したお前が言えたことか? 恥を知れ恥を」

「ぐぬ……」

「それにな、お前が原因なのに看病してくれた彼女が弁償費用を肩代わりしてくれるんだぞ。情けない奴だなお前は」

「ぐぬぬぬ!」


 そこはありがとな雛子、悪いことをしたわ……って、弁償!? おい! どういうことだそれ!?


「当然だろう、学園の寮を壊したんだぞ。弁償があって当たり前だ」

「嘘だろマジか……」

「それにただの弁償じゃないぞ。お前の部屋にあった金の粒とやら、あれのせいでさらに大変でな」


 な、なんだよ。あの金がどうしたんだよ……。


「お前の部屋が爆発した時に金の粒も一緒に吹き飛んだんだ。その結果、まるでショットガンのように他の部屋や建物の壁にめり込んだな」

「……あ、え、えっと……」

「お前の部屋だけじゃなく、寮の半分以上が修繕しないといけないんだよ」

「ま……マジすか……」

「マジだ。良かったな銭原? 朝に皆が登校した後でなぁ? 人的被害はゼロだ」


 よ、良かったな……ですね。お、俺……ぼ、僕も一安心です。

 あーーまだ体調が悪いので寝ていいですか? まだ身体が痛くて……ケホケホ……。


「いくら彼女が肩代わりするとはいえ莫大な金額だ。金は全て回収」

「あぁ……俺の金が……」

「お前の親や理事長と話した結果、黄金院嬢だけに負担させられない。そうだな銭原?」


 た、確かにそうですけど……、なにが言いたいんですか先生様……


「お前の借金の話は聞いたぞ? 八千五百万なんだろう? 理事長が言ったんだ」


 “キリが悪いねぇ”とな。


「よって今回、弁償費の千五百万を足して――お前の借金は“一億”になった」

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!! 嫌だぁぁぁぁぁッ!!!」

「お前に拒否権はない。俺の拳が飛ばないだけありがたいと思え。では安静に震えて眠れ」


 去っていくゴリ先に、俺の手を握り慰め続ける雛子。

 絶叫のせいで身体に激痛が襲われているが、もうこれは痛くて泣いているのか、絶望して泣いているのか分からない。


 ただ一つ言えることがある。




「……雛子……辛くて苦い現実を忘れたいから……とうもろこしをくれ……」

「分かりましたわ! さあ、食べてくださいまし小鉄様!!」


 スプーンに乗せてくれたとうもろこしの粒を、雛子が俺の口に運んでくれた。


「美味い……美味しくて涙が出ちゃう……」




 入院生活は林檎より、とうもろこしに限る。




 

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