98話 「意図せぬ再会」
目的地へ到着すると、そこには一人の男が立っていた。
ファルベより少し高い身長で、目が少し隠れる程度に伸びた黒髪。服装は身幅より遥かに大きい衣装を身に纏っており、ゆったりと表現するにはあまりにブカブカすぎだった。
そんな男にファルベは違和感を覚える。その感覚の正体を掴むために、自分の記憶を掘り起こす。そして、気づく。
「お前、あの時の……!」
ファルベの脳裏に蘇ってきたのはファルベがメルトに刺される少し前の依頼だった。一斉に姿を消した元中級冒険者の犯罪者たちの内一人が人殺しをしているとの依頼を受けてその男を捕らえようとしたその直前で介入してきた人物がいた。それこそが、今ファルベの目の前に立つ男だ。
そのことを思い出してファルベは驚きで目を見開く。そういえば男はあの時のこんなことを言っていた。
『じゃあね。君とはまた会えそうだ』
確かに、そう言っていたのだ。それがこんな形で実現してしまうとは。
「ん、あ、もしかしてそこに誰かいる?」
男はファルベの気配に気づいたようで、そう言ってファルベの方向に視線を向ける。
「あ、冒険者狩りか。久しぶりかな」
「ここで事件を起こしてた犯人はお前か! 何が目的だ!」
ファルベは理解のできない状況に大声をあげる。
「お前? あ、そっか。まだ自己紹介もしてなかったんだっけ」
「自己紹介? そんなもんどうだっていいだろ」
「どうだっていい、か。そうかもしれないね。どうせもうすぐ分かるだろうし」
「――どういうことだ?」
もうすぐ分かる、という言葉の真意を捉えきれずに質問を投げかける。だが、
「どういうことだろうね。あ、ところでシャルは元気かい?」
男はその質問にも答えず、新たな質問をしてくる。
「なんで、お前がその名前を知ってるんだよ!」
シャル――この言葉に、ファルベは聞き覚えがある。
『シャルロットではなく、シャルと呼んでくれても良いんだよ』
調査員として活動するシャルロット。彼女が親しい人物にあだ名で呼んで欲しいときにその言葉を使うからだ。
だからこそ、犯罪者集団の片棒を担いでいるであろう人物からこの単語が出てくるとは思っていなかった。
そして、ファルベは自分の脳裏に嫌な想像が浮かんでくるのを感じた。それを、頭を振って否定する。その考えがあまりに最悪で、考えたくないことだったから。
――シャルロットが犯罪者と繋がっているかも、という考えが。
「大丈夫……のはずだ」
ファルベは彼女と一年ほどの付き合いしかないが、それでもそんなことをする人物ではないと思っているし、信じている。
それに、自分の短な人間を疑うことはもうしたくなかった。
「あれ、もしかして、元気じゃなかった? それだと色々困るんだけど」
「――やめろ!」
男が発する言葉の全てが、シャルロットを疑ってしまう要因に思えて、反射的にそれを遮ろうと大声を出す。
そして、話を続けまいと話題を変える。
「そんなことより、俺の最初の質問にまだ答えてもらってねえぞ」
「最初の質問?」
「お前が、騒ぎを起こしてる犯人かどうかだよ!」
思考を切り替えて自分の発言を繰り返す。
「ああ、そのことなら――」
男は無表情のままで、
「厳密にいえば、違うね」
それを否定した。




