100話 「謎の男女」
「あれえ? そこにいるのって、もしかして目標の冒険者狩りじゃないの?」
歩み寄ってくる女はファルベを見るなりその正体を暴いてくる。
これまでも今も、自分の素性を隠すためにフードをまぶかに被って顔が見えないように努めているというのに、こうまで易々と看破されてしまうといっそ馬鹿らしくなってくる。
ファルベはため息を吐くと、フードを外し、その顔を晒す。
「あら、冒険者狩りって案外可愛い顔してるじゃない! こんな子を殺さなきゃいけないの?」
「まあね。ボスの命令だし」
「坊や、私のモノにならない? 3食昼寝付きよ?」
「黙れキモい。俺は誰かのもんになったりするほど安い人間じゃねえよ」
予想外すぎる反応に辛辣な言葉を発するファルベ。だが、今話したことは全て本音だ。ちゃんとキモいと思ったし、ちゃんと黙って欲しいと思っている。
「へえ、カッコいいところもあるのね。益々欲しくなったわ」
「うぜえ、さっさと諦めろ。どう足掻いたってお前についていく未来はねえよ」
食い下がってくる女に何度も否定の言葉を投げつける。
「じゃあ、そうね。あなたの四肢をもいで私のモノにしちゃおうかしら。それで全て丸く収まるんじゃない?」
恋する少女のように頬を手に染めた女はクネクネと気持ち悪く身体を動かし、その行動とは真逆のえげつない発想を口にする。
「できるならそうしたらいいんじゃないかな」
女を若干引いたような目つきで眺めるシエロが、そう言った直後、
「――シエロ、今私を侮辱した?」
女に明確な殺意が現れた。その顔は先ほどまでとは打って変わって完全な無表情となっていて、そこに人らしい感情は見当たらない。
「私はね、シエロのことは興味ないのよ。ボスが言ってるから付いてこさせてやってるだけでね。なんなら今ここでシエロを殺してもいいのよ?」
「ははは、それは怖いね。でも、そんな怖い顔すると、冒険者狩り君に嫌われちゃうよ?」
そう言って、チラリとこちらに視線を向ける。それでファルベの存在を思い出したかのように目を見開くと、
「あら、ごめんなさい。お姉さんを嫌わないでちょうだいね」
取り繕ったかのような猫撫で声で話しかけてくる。だが、初会話の印象と、犯罪者という前情報の時点で彼女の好感度なぞ、最初から地に落ちている。
「いや、割ともうすでに嫌いだからあんま関係ねえぞそれ」
「遅かったらしいよ」
シエロが女を揶揄うように言うが、女はそれを華麗にスルーして、舌なめずりをする。
「まあ最悪、今のあなたに好かれてるかなんて関係ないわ。最後には盲目的に私を愛するようになるから」
そんな、恐ろしい言葉を口にして。
記念すべき100話到達しました! ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!
本当はこの話で100話迎えたかった訳ではないですが、作者がスケジュール管理ガバガバなのです……
ともかく、これからもよろしくお願いします!




