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第64話 久しぶりのリアン

「…ふふ」

「何だ?急に笑い出して。何か面白い事でもあったのか?」

「いや、なんじゃ。このメンバーで外に出るのも思えば随分と久しぶりじゃな、と思っての」

「あ、そうですね!確かにソーマさんは外ばっかり行ってましたけど私たちはお城でお留守番でしたもんね!」

「…ミラと同意」

「お、おい!それって、なんか俺だけずるいみたいな言い方じゃないか?」


 と、俺とミラ、シェン、シエラの4人は久しぶりに外を歩いていた。


 なぜこうなったかというと…。



 ユカリが旅に出てから、まず生徒たちの間で「ユカリ先生失踪!?」という報道(主に情報部のせい)により、ユカリ大捜索が行われた。


 それは俺の想像をはるかに超える大規模で、授業の予定を入れていた生徒全員がボイコットを起こし、誰1人授業に来なかったほどだ。後日先生から苦情が入るかと思ったが、逆に「久々に授業をやらなくていい時間を満喫できたよ」的な感謝のコメントばかりが入った。


 想像は越えたが、ユカリを捜索しに生徒たちが動くのは想定内だ。そしてもちろんユカリと同じ部屋に住んでいる俺に注目が来るのも想定内だった。だが、想定外の事がまた起こった。


 部屋にいた俺は生徒たちの大体の動きを把握するために〈魔力探知〉を発動していたのだが、俺の部屋の前でたくさんの魔力反応があるのだ。つまりたくさんの生徒が俺の部屋の前にいるという事。


 大方俺に色々と問い詰めるか事情を知らないか聞くつもりで来たはいいが、まだ俺の演技のせいで俺へのイメージが抜けきっていないから怖くて入れないんだろう、と思い、扉を開けると思った通りだった。


 扉が開いて俺が「何の用だ?」といった瞬間に、みんな一目散に逃げだしていった。それはコケる人もいれば我先にと他の人を押し倒して逃げる人もいて酷かった。


 そして俺の目の前に1人だけポツンと取り残された少年(最近まったく自覚が無くなってきているが、俺も15だし、少年だよな?少年の部類にはいるよな?な?)。その少年は学校内で「例の騒動」と呼ばれるハンナのいじめ騒動のいじめ側にいたグループの1人で、リーダーに脅され仕方なくいた少年だった。


 その少年は俺に助けられたせいか、俺の事をまったく怯えもせずに近づいてくるのだ。俺の演技では鬱陶しいで片付けているのだが、本心はいつ演技がバレるかと冷や冷やしている。


 結局あんなにいた生徒たちが聞きたかったであろうユカリの事を聞かれ「詳しいことは生徒会長のハンナに聞け。他のやつにもそう伝えておけ」とだけ言って、部屋の中に逃げた。


 その後はみんな大人しくハンナに聞きに行ったらしく、ハンナがどういう説明の仕方をしたのかは知らないが、しばらくの間男子寮女子寮関わらず悲しみのオーラで溢れていたらしいので大体事実を言ったのだろう。


 ユカリ失踪事件がユカリの思い立った旅立ちによるものだと分かり、学校全体が一時暗くなったが、ようやく立て直してきたころに学園長から再度しばらく学校にいる時間を減らす趣旨を伝えて、魔王城…もとい、リアン連合王国に帰ってきたのだ。


 とりあえず城下町から入りたかったので城下町手前の門の近くに転移した。


 門には2人の門番という名の防衛班が立っていて、ほとんど暇そうだった。それもそのはずだ。いくらアレクサンダーさんと貿易の手段を整えたとはいえ、それは聖王国とリアンではなく、聖王とリアンという個対国の取引なのだからリアンに外から訪問する者などいるわけがない。


 そんな居ても居なくても大して変わらないような可哀想な場所にいる防衛班に門を開けてもらおうと近くに行った。


「おいっすー。元気にしてた?」

「何奴!?…は!?もしや、陛下ですか!?」

「ん?そだよ」


 一瞬俺に敵意を向けたが、俺だと分かった瞬間2人とも涙を流しながら近づいてきた。…見た目はものすごくカッコいい好青年なのだが、中身はいくつかも分からない竜なので少し複雑な気持ちだ。


 わんわん泣きながら話を短くまとめると「陛下がいなくて我々は寂しかった」に行きつくような話をしばらく聞かされた後、ようやく正気に戻った2人に門を開けてもらった。


 門は城壁や外壁などに使われている「超高密度石」で作られているのだが、門だけ色々といじっているので強度や耐久性などはそのままに、少し力を込めれば誰でも開けられるようにしてある。


 誰でもとは言ったが、それでは簡単に襲われてしまうので、俺にしか分からないレベルで色々いじってある裏に更にいじったりしているのでその辺は大丈夫なのだ!


 気を取り直していざ城下町に入ると、俺がいた時よりも少しではあるが建物が増えていた。それも俺が〈万物想像〉で一気に作った家ではなく、この世界の中世ヨーロッパのようなレンガ造りの建物と、俺が作った建物両方のいいところだけを抜き出して作ったかのような建物。


 レンガで出来ているが、見た目が前世のような建物だったり、はたまたその逆だったりと、建物の数自体は少ないものの、そういった建物がモデルハウスのようにして城下町を大通りとそのを通る道で仕切った区画の1つに建てられていた。


「へえ…いつの間にこんなもんを。4神には自由に〈万物想像〉が使えるようにしてないし、今の建造途中の建物があるところを見ると、材料集めから何まで1から建ててるって感じだな」


 感心しながら様々な区画を歩いていると、ここに来て初めて国民に遭遇した。あれは…エマか。


「あ、もしかしてソーマお兄ちゃん!?帰って来てたの!?」

「ああ、今帰ってきたとこだ」


 エマは俺を見ると、トテトテトテと走ってきて、全身で俺にぶつかってきた。エマはまだ保育園児ほどの年齢なので体も小さい。俺はその体をひょいと持ち上げて、高い高いをして降ろす。


「わー!本当のソーマお兄ちゃんだ!みんなー!ソーマお兄ちゃんが帰ってきたよー!」


 上機嫌になったエマが馬鹿でかい声で叫ぶと、わらわら程はいないが、続々と国民が集まってきた。


 俺はアレクサンダーさんと違い、あまり国民と触れ合う機会が取れなかった。いや、ほとんど王としての仕事なんてなかったから時間を取ろうと思えばいくらでも取れたのだが、王として信用されていないと思い込んでいたばかりにいつしか国民と触れ合うのが怖くなってしまったのだ。


 だが、今回はそうやって逃げるわけにはいかないので、勇気を振り絞って色んな事について謝ったのだが

逆に謝り返され、更には平服までされてしまった。


「え?…なんで?いや、そんなに畏まらないでください。俺は国王としてなんて何も…」


 国民曰く、確かにあまり俺には会う機会は無かったが、元々奴隷だった自分たちを解放してくださり、更には住む家や場所、食べ物などまで無償で与えてもらっただけでも十分なのに、ほとんどの者は仕事までさせてもらえるようになって、感謝しかないです。との事らしい。


 それを聞いた瞬間こんな役立たずな俺に感謝してくれる人がいる嬉しさが溢れてきた半面、その期待を裏切らないようにもっと国王として色々な事を学ばなければならないという責任感も生まれ、どこか新しい自分になった気がした。


 …みんなの想いを聞いたときに涙が出たのは内緒だ。恥ずかしいからすぐに火魔法と風魔法の応用で涙を蒸発させ、水蒸気は風魔法でどこか遠くに飛ばしたが。


 国民たちの想いを聞いた後。俺は温かい声援を背に、ついに王城へと向かった。


 王城に入ると、久しぶりに我が家…もとい我が城に帰ってきた感動でまた涙が出てきそうになった。涙もろくなったのは俺自身がこの世界に慣れ、余裕が出てきた証拠だと解釈をした。


 わざわざ帰ってきたことに誰かを呼ぶのもメイド班たちに申し訳ないので、誰かに会うまで城の中を歩くことにした。まずは時間帯的にもメイド班の料理が食べたいな。みんなそこにいるだろうし。


 誰にも会うことなく食堂の扉の前についた。中からガチャガチャと音を立てながら食事をしている声や音が聞こえる。覚悟を決めて扉を開ける。


「…ソーマ…さん?」


 食堂にはこの城に住む全員がいたが扉を開けた音で、みんなこっちを向き、そして俺を見て固まったのか静まり返った。


「長い間ここにいなくて済まなかった。まだ色々と片付いてないことがあるからそのうち戻ることになるだろうけど、ひとまず…ただいま」


 そしてミラのおそらく勝手に出たであろう言葉と、俺のただいまを皮切りに全員が料理を食べたり、厨房で料理を作るのを止め、一斉に俺の元に走ってきた。


 中でもミラ、シェン、シエラは突然俺に抱きついてきたのでいつものようにバランスを崩し、後ろに盛大に倒れた。


 ひとまず大混乱している食堂内が静かになるまで待った。一旦帰るとはこの前言っていたが、まさかこんなに早く帰ってくるとは思っていなかったので混乱しているようだった。


 周囲が落ち着いたところで、まずは腹が減ったので俺の分の昼食も用意してもらおうと思った。今日はカレーみたいだったので尚更腹が減る。


「あのよ、なんでユカリがいねえんだ?あいつならずっとソーマ様にくっついてるはずだろ?」


 その時オニマルから飛ぶ疑問。それを聞いて周りもユカリがいないことにきがついたようだ。


「なんて説明すればいいか…単刀直入に言うと、ユカリは俺や学校を一旦離れ、旅に出た」


 その一言で再び食堂内が大騒ぎになったのは言うまでもなかった。

突然ですが、来週より毎週金曜20時に投稿時間を変更いたします。

勝手ですがご容赦ください

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