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第55話 初授業

 何事もないと言えば嘘になる夜をすごし、朝を迎えた。


「おはようございます」

「ああ…おはよう」


 あくびをしながら呑気にベッドの上から降りてくるユカリ。さぞかしぐっすりねたのだろう。


 俺は夜にユカリから、無意識に起こしたであろういきなり2段ベッドの上から落ちてくる、というハプニングの後処理をしていたのであまり長く寝ていない。


 というか机に座ってマニュアルを読んでいたところ、明日の授業のために早く寝ていたユカリが落ちてきたのだ。ビックリしない方がビックリだ。


そして2段ベッドの2段目から落ちてきたのに怪我をしないのはユカリの身体能力からして当然と言えば当然だが、何よりもまったく起きないその眠りの深さに驚かされた。


 床の上でそのまま寝かせていくわけにもいかないので、〈フライ〉を使ってなるべく振動をかけないように上のベッドに戻したのだ。どんな事があって落ちたのか知らないが、また落ちられても困るので阻害結界をベッドの端に張ってマニュアルを夜明けまでずっと読んでいた、というわけだ。


 もちろんユカリはそんなこと知らないのだろう。ただ、俺としては怪我をしていなければ問題ないが。


「…私の顔に何かついてます?」

「いや、何でもない。さっさと朝ご飯を食べて授業に行くぞ」

「はい」


 ユカリとは違う徹夜したことによるあくびをしながら部屋を出ようとすると、止められた。


「ちょっとソーマ様、仮面を着け忘れてますよ…あれ?仮面はどこですか?」


 ユカリは俺が仮面を着けていないことに気が付き、辺りをキョロキョロして探している。まあいくら頑張って探したところでないのだが。


「仮面は着けないことにした。あの仮面はやっぱり生徒に悪いイメージしか与えないから止めたいんだけどってユカリが寝てるときに学園長に仮面を着けなくてもいい許可を取ったんだ。さすがに性格は変えたままじゃないとダメって言われたけどな」


 せっかく借りておいて、本当にユウキには申し訳ないと思った。だがそれ以上にまだ生徒に怖いイメージを植え付けるわけにはいかない。


夜に何をしていたか話したが、ユカリがベッドから落ちてきたことは話さなかった。もし仮に自覚があって覚えていた場合に、恥ずかしいだろうからだ。


 全て納得の言ったユカリと食堂で朝食を取り、校舎にある俺が編入された1年の教室に入る。


 もちろんそれまでに部屋を出た瞬間から会った生徒に1番最初に誰だか分からないような顔をされた。わざわざ1回1回説明していると時間がかかりすぎるので無視をした。いずれ服が一緒という点で先日の仮面の男だと分かるだろう。


 ユカリと一緒に同じ教室に入ってきたのは、ユカリが俺のクラスの担任の教師になったからだ。なんでも少し前まで担当していた教師が事故で死んでしまっていたらしく、担任の枠が空いていたらしい。そのせいもあってユカリがこの魔法学校で働けるのだ。


 俺たちが最後だったようで、教室に入ると俺が座る予定の窓側の1番後ろの席以外に生徒が座って待っていた。


「皆さんおはようございます。昨日見たと思いますが改めて自己紹介をします。今日からこのクラスの担当教師になりましたユカリといいます。まだ分からないことがいっぱいあるので皆さん教えてもらっていこうと思っています。よろしくお願いします」


 ユカリが教卓で自己紹介をすると周りから拍手が上がる。ユカリはどちらかというと馴染みやすいような性格なので周りと仲良くなることにそれほど時間はかからないだろう。


 ユカリの自己紹介が終わって、次に俺が自己紹介をするため呼ばれたのでユカリがいた位置に行く。


「俺は今日からこのクラスに編入されることになったソーマだ。昨日被っていた仮面を着けていないことについてはユカリ先生にでも聞いて見てくれ。大多数の男子は寮で色々と知っているだろう。知らない女子も興味があれば聞くといい。これからよろしく頼む。以上だ」


 言いたい事だけいい、窓側奥の席に座る。昨日の1日で俺についての嘘情報を把握しているであろう男子は俺がなぜ仮面を着けていないかについて驚きを隠せていないようだ。そしてユカリもいきなり自分に聞いてくるように振られたことについて驚きを隠せていない。


 俺はみんなからの視線を無視して窓の外を見て黄昏る。後は担任のユカリに任せるのみだ。


 諦めたユカリは初めてとは思えないようなスピードで朝のうちに行うべき事、つまりホームルーム的なことをしていく。


 朝のHRでする主な内容は、今日の授業日程と連絡事項ぐらいだ。そもそもここは全員出席が前提の学校ではないのでそれぐらいしかやらなければいけないことがない。俺のクラスは毎日全員出席というかなりいいクラスみたいだ。


 授業日程と連絡事項を伝え終わると、みんな教室から出ていく。この教室は授業用ではなくクラス専用の教室なので授業ごとに場所を移動しなければならない。もちものは基本紙と書くもの、そして必要性のある人だけ杖を持ってくる。


 俺は杖はいらないのでそのまま1時限目の場所へと向かう。俺は1時限目にユカリの授業を選択しているのでユカリが授業する際に使う教室に少し遅れ気味に入る。


「…まじか」


 俺が入った講堂のような広々とした大体200人は最大で座れるような部屋にはほとんど席が埋まるほど生徒が座っていた。

 

 最初から何かおかしいとは思っていたのだ。普段授業をする部屋は普通の教室なのに、ユカリの部屋だけなぜか講堂だった。最初はただ新任だから使える教室の確保が間に合わなかったのだろうと思っていた。だがこの状況を見て、人気がありすぎるが故の講堂だったと理解した。


 講堂という広い場所で少人数の生徒を相手に授業するのは可哀想だな、と思っていたのに今では逆に普通の教室では収まらない量の生徒相手に授業をするのは可哀想だな、に変わってしまった。


 講堂には俺のクラス以外の所為とも当然いるので、俺が講堂に入ると男子たちからどよめきが上がった。そしてそのどよめきを聞いた女子が俺の方を見て、誰だか分からない顔をするという連鎖反応がまた起こった。


 俺は誰だか分かりやすくするために仮面を着ける。こういう時もあると思ってユウキには返さなかったのだ。け、決して…返し忘れたからとかではない!夜だったから返しに行くのが面倒だったという事でもないのだ!


 俺の仮面を見てギャーギャー騒いでいるが、もう見るのも疲れるので講堂後ろの壁に寄り掛かる。俺は授業に参加するが、それは真剣に学ぶわけではなくユカリが昨日考えた授業の内容をしっかり出来ているか確認のために来ている。そのためユカリの姿がしっかり見える場所でなくてはならない。講堂は前に行くにつれて席のある位置が下がっていくので講堂の1番後ろの壁がユカリを生徒に遮られずに見れる。


 しばらくすると俺がいる講堂後ろ扉からユカリが入ってきた。ユカリにはあらかじめここの状況を念話で報告してあるのでそこまで緊張はしていないようだ…と思ったが、俺にしか分からないレベルで足がおぼついている。多少は緊張しているみたいだ。


 誰もユカリが緊張していることに気が付かないまま、ユカリの授業が始まった。



「…以上で私の授業は終わりです。始めての授業なのにたくさん来ていただいて嬉しいです。これからも頑張るのでよろしくお願いします」


 ユカリの1時間ほどの授業は終わり、感謝の言葉を述べ、頭を下げたところで生徒たちから大歓声が上がる。


 大歓声が終わった後、生徒たちが次の授業の準備や、休憩のために各々行動から出ていく。ただ何人か残ってユカリと話をしている男子や女子がいるので全員話し終えるまで待った。


 全員話し終えたようなのでユカリの元へ近寄る。


「何を話していたんだ?」

「男子生徒からは私について聞かれたので、女子生徒からはソーマ君について聞かれたので色々と話していました」

「俺について?」


 俺についての何を聞いていたのだろうか?男子寮でユカリが生徒に教えていたことを教えていたのか?というかユカリと話していた女子が講堂の扉の端でずっとこっちを見ている。


「そうなんです。何でもソーマ君の好きなものだとかきらいなものだとか…」

「それを聞いてどうするつもりなんだ?好きなものを巧みに利用して暗殺でも考えているのか?」

「さあ、どうでしょう。でも、彼女たちは何か嬉しそうに聞いてきたのでそういう類いのものではないと思いますけど…」


 どういう意図で聞いてきたのかは分からないがユカリの話ではひとまず危険はなさそうだ。ユカリに対する男子生徒もどこか幸せそうに聞いてきたらしいので大体同類だろう。


 ユカリは次の授業があるらしいので俺とはここで別れることになるのだが、伝えておかなければならないことがいくつかある。


「ユカリ聞いてくれ。とりあえずこの授業を見てみて、概ね大丈夫だろう。特に改善点があるわけでもないからこのままでいいと思う。」

「ありがとうございます」

「そこで、だ。ユカリの授業を見て、もう大丈夫だと思った。俺はこれから旅に出る。旅というか少しやらなきゃいけないことがある」


 想像していた通りにユカリの顔色が悪くなる。学校で一緒になったばかりではあるが、俺の方でも色々と片付けておきたい課題が山積みなのだ。


「ど、どのぐらいの期間ですか?」

「分からん。早くて数日、長くても1週間いないには必ず帰る」

「1週間ですか…その間の授業はどうするんですか?」

「学園長には伝えてあるからその辺は問題ない。帰ってきた後に出席しなければならない数が増えるだけだ」


 どこに行くかは伝えていないが、1週間ほど休ませてほしいという事は学園長に伝えてあり、許可もとった。なので何があっても1週間で帰ってこなければならない。


「分かりました。日程が分かっているのであれば我慢します。ですが、くれぐれも危ない所には行かないよう気を付けてくださいね」

「分かってる。先生も俺のいない間に事故とか起こさないようにな」


 ユカリに伝えるべき事は伝えたので寮の自分の部屋に戻る。全力で止められるかと思ったが、そうでもなかった。多分自分の思いとか感情よりもあくまで先生という自分の立場を考えての言動だったのだろう。


 部屋に戻った俺は、旅支度ほどではないが持っていくものを揃え、ユカリへの俺がいない間にしておいてほしい事を紙に書いて机の上に置いておいた。


「さて…行ってきますか」


 俺は少し特別な転移魔法を使い、旅へと出掛けた。

ストック溜めや構想を練り直すために少し投稿を止めます。早ければ1週間で帰ってきます。この物語を楽しみに見てくださっている方には本当に申し訳ありません。また帰ってくる日を楽しみに待っていてください。

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