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第53話 新生活?

「あれ?ソーマ…君じゃないですか。どうしたんですか?こんなところで」


 お互いに驚くしかない。それに…なんで男子寮の空き部屋に住まなきゃいけない…と言ったのか?という事は俺がこの部屋に住むことになったことは知らないのか?


 思い出してユカリに先生付けで呼んだが、今考えればこの2人しかいない空間でわざわざ先生と君付けで呼び合うのは違うと思ったのでやめる。


「どうしたって…ここは俺が貰った部屋なんだが。何か?お前は学校生活でもこういう事をするのか?」

「ち、違います!えっと…私は教師に値するかどうかの試験を一通り受けた後、ここに住めと言われて…えっと…ですね…」


 俺のからかう発言に本気で受け取り、あたふたしながら必死に説明しようとしている。そんなユカリはいつものユカリなので俺としては普通にこのまま見ていたいのだが、もうそろそろ周りの部屋の生徒が起き始めて、紹介に行かなければいけない時間になりそうなので、早めに話をつける。


「嘘だよ。部屋に入ってきたときの1人ごとは聞こえてたさ。大体の事情は分かった。要するに俺とお前はこの部屋で住む、そういう事だろ?」

「あ、はい…そういうことになりますね。よろしくお願いします」

「ああ、まあこの部屋にいる時は俺の事いつもの呼び方でいいからな。俺もあまり「ユカリ先生」って呼ぶの好きじゃないし「ソーマ君」って呼ぶのも少し嫌だろ?」

「そうですね、分かりました。ところで、ソーマ様は試験は受けられたのですか?」


 先生の態度からまるで人が変わったかのようにいつもの秘書兼俺の使い魔としての態度に戻る。そういう切り替えの早さは賞賛できるのだが、更に嫉妬が発動するときの早さはもっと早いので何とも言い難い。


 ユカリが俺と同じように服などをしまっている間に学園長とアレクサンダーさんとした話を聞かせる。俺に試験がなかったという話をした時には「なんで私だけあったんでしょうか!」と少し怒ったり、俺の学費が無料になったと知った時は「私のお給料から引かれるなんてことはありませんよね?」と不安そうに心配していたりと作業しながらでも反応してくれたのでこっちとしては話していて楽しかった。


 というよりもお給料もらえるのか、元々の魔王城にあった莫大な硬貨は未だ無くなるどころか減っているのか目を疑うほどだ。まったく減る様子を見せない。更に、最近農作業が出来るようになって野菜面では安心してきたし、今度はパンを作る上で重要な小麦みたいな物の生産に取り掛かるらしいから成功すれば更に金が出なくなっていく。金が出ないという事は社会が回らないことを意味するのだ。だからと言って全力で金をバラまくような行為はしないが。


「それじゃあソーマ様は魔法ギルドに入らなかったのですか」

「ユカリはどうだった?」

「私は入らされましたよ。それと試験の時にあなたの使える魔法で1番威力や効果が強い魔法を使ってくださいと言われました。ですが私はソーマ様に鍛えられていますので、あの程度の結界ではすぐに破れてしまうと思った。そこでそこそこの魔法で我慢しましたが、それでもかなり驚かれました」


 ユカリなりにも自分で判断して適度に試験を受けたみたいだ。確かに屋外訓練場に張ってあったあのレベルの結界ではかなり強者の魔法も耐えられるだろが、俺はもちろんユカリの魔法も耐えられないだろう。いい判断だ。


「なんか後でギルドカード?を発行するから暇なときに魔法ギルドにこの書類を持っていけーみたいな感じで渡されたんですけどギルドカードってなんですか?」

「ギルドカードか?まあ自分の身分だとかどこのギルドに所属してるかが書いてあるカードだ」


 超絶今更感はあるが、それはあまり口外にしてはいけない事なのではないだろか?と思ったが俺が他の人に言わなければいいだけの話だろう。


「そういえば、ユカリって種族はどういう分類なんだ?見た目は人間だけど一応魔獣っていう扱いになるのか?そうだとしたら俺も行かなきゃ行けないだろうけど、ギルドカードの書き方は個人個人だから人間でも魔獣でもどっちでもいいんだけどな」

「あ、それを相談しようと思っていたんですよ。私たち4神ってそういうところが曖昧で、区別の仕方としては人なんですけど、魔獣界で生まれたので魔獣でもあるんですよね。どっちがいいんですかねー?」


 分かりやすく例えるなら人間と魔獣のハーフというところだろうか。血は人間しか流れていないらしいので単なる言葉のあやではあるが。


 これはどっちにした方がいいんだろ。人間にしたら将来的に俺とユカリに本当の関係がバレることになった際困るだろうし、逆に今魔獣にしたら俺とユカリの関係をすぐにバラさないといけなくなるしなー。どっちも一長一短だな。多分使い方間違ってるけど。


「それはユカリの好きにしたらいいんじゃないか?人間にせよ魔獣にせよ将来の事を考えて選ぶといい」

「将来の事?」

「将来的にユカリがほんの僅かでも俺と同じ立場のなりたいなら人間だな。その逆で一生俺とこんな関係で良いというのなら魔獣でも構わないだろうさ。結局はユカリの事はユカリ自身で決めた方がいい」


 ユカリはよくわからなそうにしている。俺としてはこの言葉の真意を読み取ってほしかったのだが、分からなければ仕方がない。助け舟を出そう。


「具体的に言うならば、将来可能性の段階ではあるし、俺如きの分際で何を言ってんだ?って思うかもしれないが、俺とお前が結婚したりだとかそういう風な関係になりたいのであれば、俺は人間として振舞った方がいいと思うし、そうしてほしい。まったく…何言ってんだか。俺とユカリが結婚するなんてあり得ないな。ユカリが可哀想だ」


 ふとユカリの方を見るとユカリが泣いていた。


「ごめん!やっぱ嫌だったよな。俺との結婚なんて想像しただけで吐きそうだよな」


 いつもは嫉妬やら言ってからかったり、俺が昏睡状態に陥っていた時にユカリの本音を聞いたとはいえ、本気で結婚したいと思っているはずがないのだ。絶対この世界には俺よりも甲斐性がある男がごろごろいるだろう。


「違います。ソーマ様が例え仮定だとしても、私と結婚するという事を考えてくださったのが嬉しくて」


 でも違った。ユカリの目でわかる。この反応はマジだ。いや…確かついこないだこんな感じで結婚についての話題を謁見の間でしたな。おっと…こういう手の話は俺には向いてないな。やめよう。


「それで、結論は出たか?」

「…はい。私は人間で申請しようと思います。見た目的にも中身的にも魔獣という要素が一切ないですし、ソーマ様の言っていた「将来」という事も考慮してです」


 なんか自分から墓穴を掘ったようで何も言えない。魔獣という要素がないからという理由が9割9分で、残りの1分が将来についてということにしよう。そーだ!そうしよう!


「これでお互いの事は話し終わったな?」

「はい」

「じゃあ他の生徒の動向を見計らって俺らも外に出るか」

「あ、確か学園長先生が呼びにくるらしいので私たちはここで待機していてほしいそうです」

「そうか、というかお前下着もあのタンスに入れたよな?恥ずかしくないのか?」


 俺が色々話している間にユカリは作業をしていたのだが、何事もないように下着などもタンスにしまっていた。指輪があるので下着などのあまり他の人に見られたくないものはそこに普通にしまうと思っていたのだが、違った。


「え?ソーマ様以外に見られないければ特に気にしませんが?もしかしてソーマ様が嫌だったりします?」

「いや、俺は別にいいけど…な?…やっぱこっちの女性は違うんかなー」


 いつも思っているが前世の女性とこっちの女性とでは大分価値観が違う。好き嫌いで体を見せるのが嫌だったりするのはあるのだが、それでも全体的にこっちの女性はルーズだ。


 そんなこんなでユカリと俺にとって久しぶりの落ち着いた世間話をしていると、扉がノックされた。この使われていない部屋にわざわざノックして入ってもいいかどうか確認してくる人物は1人しかいないだろう。


「どうぞ」

「失礼します。ごめんなさいね?私の不手際で教師と生徒を同室にしてしまって」


 もちろん学園長だ。朝の紹介のために呼びに来たのだろうが、律儀なのか入って来て早々謝っている。


「気にしないでください。言ってませんでしたし、アレクサンダーさんにも口止めしてあるので知らないでしょうが、俺とユカリは使い魔みたいな関係なので」

「そうなのです!私は誇り高き魔王に仕える…仕える…ツカエル?私ちゃんとソーマ様に仕えれています?」


 すごく自信満々で最初は威張っていたのに、途中から自信を無くしてしょんぼりしてしまった。自信がないならなぜ最初に威張ったのだろうか。


「ちゃんと仕えれてる?ちょっとした気分か何かで俺を気絶させたり、俺に迷惑をかけまくってるお前がか?」

「え?いや…あの…ごめんなさい!」

「まあ嘘だから。ちゃんとユカリは頑張っていると思うから気にしなくていいよ。頑張っているのとそれに見合った結果がついてきている訳ではないけど」

「うっ…頑張ります」


 いろんな点で自覚はあるようだし、ユカリなりに頑張ってくれているのは知っているので咎めるつもりはまったくない。むしろ普通のユカリでいてくれるだけで褒めてあげたいぐらいなのだ。


「というわけですので俺とユカリはこのまま同室で構わないので」

「そう?ならそういう事にしておくわね?もうそろそろ行かないと先生方に怒られてしまうから行きましょ?」

「了解です」

「分かりました」


 学園長についていくようにして部屋から出る。この短い間でも十分な時間稼ぎになったようで、寮に生徒は誰1人いなかった。みんな屋外訓練場に整列しているのが窓から見える。さながら朝の朝礼のようだ。


 俺はこれから始まるであろう絶対に辛い演技でしか人前に出れないという謎の縛りを受けた学校生活に胸を躍らせてみたかったが、無理だろうと思いながら学園長にユカリと一緒についていき、寮の外を目指した。

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