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第51話 条約締結後

 謁見の間で少し待っていると、少しの荷物を抱えたアレクサンダーさんと大量の荷物を背負ったエミリーさんが入ってきた。結局エミリーさんが何を持ってきたのか知ることは無かったけどそれはそれで良かったのかもしれない。


「もうやり残したことはないですか?」

「まああの風呂に入れなくなると思うと心残りはあるが、私の城でもああいう風呂を作ってみよう」

「いいですね。いつでも入りに来てください。それと、これを2人に」


 俺は2人にネックレスを渡す。


「これは?」

「これに魔力を注ぎながら話すとその人と頭の中で会話できる物です。ただし、俺とかのような同じ効果を持つ道具を持ってる人じゃないと意味ないですが」


 ネックレスのような形にしたのは既にアレクサンダーさんは結婚しているため、指輪型にするのはダメだと思っただけだ。エミリーさんにとっても指輪よりネックレス型のほうが動くときに取れにくいと思ったからだ。そうなると全員の物を指輪型からネックレス型に変えなければいけなくなるので言わないが。


「ほう…それはいい物だな。ありがたくもらっておこう」

「…ふん」


 気が強いエミリーさんが少しだけ頬を赤く染めたのは俺の気のせいだろう。うん、違いない。


「じゃあ俺はこれから聖王国に2人を送ってからどこかに転移門を設置してくるから。3人は班の全員と4神をここに集めておいてもらえるか?」


 3人とも頷き、謁見の間から出て行ったところで〈ワープ〉を発動して聖王国のアレクサンダーさんの私室に転移する。


「やはりソーマ殿の魔法は便利なものだな。さて…私はこれからソーマ殿とやることがあるからエミリーは荷物を部屋にでも置いてきてゆっくりするといい」

「…分かったわお父様」


 エミリーさんは大きい荷物を持って部屋から出て行った後、アレクサンダーさんは荷物をすぐに片付けた。元々あまり荷物がないのですぐに終わった。


「では転移門…だったかな?を置いてもらおうと思うんだが、どれぐらいの大きさだ?」

「人1人通れるものあれば馬車も通れるのもある…って前にもこんな話しませんでしたっけ?」

「そうか?まあ年寄りという事で勘弁してくれ。そうだな…仮にも多めの物資を送る場合も考慮してその馬車も通れるサイズでお願いできるか?」

「了解です。置けそうな場所に案内してもらえますか?」

「ああ」


 アレクサンダーさんの後をついていくようにして部屋から出る。部屋から出るとすぐにいろんな執事の人たちや、大臣だと思われる人たちからすごく声をかけられている。主に心配していたという内容だ。


 王城で寝ないことは伝えていたらしいがまさか本当にいなくなるとは思っていなかったらしく、総出で探していたらしい。


「アレクサンダーさん、もう少し情報を伝えてからでも良かったんじゃないですかね?まあ事後ですけど」


 一通りアレクサンダーさんに色々と言ったところでみんな帰って行った。俺はずっと後ろで黙って話を聞いていたが、なんというか俺もこういう苦労を味わせているのかと思うと他人事ではないような気がした。 


「どうせ言ったところで、絶対に許してはくれないだろう。それもほとんどの者が知らない国だ。なおさら許してもらえるはずがない。さあ、無駄な時間を過ごしてないで行こう」

「そういうもんなのかなー」


 納得は出来ないが似たような経験があるために少しは分からなくもない。俺の場合は言って、ダメと言われても行く。


 しばらく王城を歩くと外に出た。アレクサンダーさんはもちろん内部の構造的にも普通に歩いていたのだろうが、俺は何だか迷路を歩いているような気分になった。壁に飾られている絵などが違うとはいえ、見慣れない景色がほとんど続いていた。しかも壁の色や絨毯の色も変わらないからさらに迷路を歩いている気分になったのだ。


 無事に外に出たところで、聖騎士たちの訓練場がある場所の道へ行くのでついていく。一体どこに設置するつもりなんだろう。


「ここでどうだ?ここなら王城の敷地内だからあまりバレないだろう。ここは一般公開していないからな」


 王城はつり橋以外は塀に囲まれていて、中が見れないようになっている。だからここを選んだ、という事らしい。


「まあここなら場所的にいいんでしょうけど…さっきの大臣とかに怪しまれません?とりあえず設置します」


 俺は指輪から馬車が通れる縦横5m程の枠を取り出して、設置した。これに〈エンチャント〉で〈ワープ〉の効果を付与すれば完成だ。見た目的には大理石の枠に奥が見えない紫色の膜が張っているように見えるだろう。


「もう終わりか?」

「はい、これで終わりです。ちなみにこれは俺が1回1回起動させないと通れないので、今この状態で通っても通り抜けます」


 膜を通って戻る。転移しないで、向こう側に出たので安全面では大丈夫だ。


「そうか、それなら誤ってそちら側に行ってしまうという事もないな。感謝する」

「感謝されるほどの事ではないですよ。じゃあ俺はみんなを待たせてるのでこれで。何かあれば念話してください。それとエミリーさんにもよろしく伝えておいてください」

「分かった。達者でな」


 試しにこの転移門を通って帰ろうと思ったのだが、まだ転移先の対になる門を置いていないことを思い出したので、仕方なく普通に〈ワープ〉で帰った。行先はもちろん謁見の間。


聖王国に転移門を設置するのに10分ほどしかかからなかったはずなのに、謁見の間には既に呼んだメンバー全員がいた。3つの班に所属する全員に、4神とミラたち3王。


 随分前の話になるが、ルーカスとエマはある家族が養子にしたいと言ってきたので、確認を取って、白ではなく家に移り住んだ。本人たちもこんなでかいだけが取り柄のような城よりも普通の一軒家のほうが生活しやすいだろうと思ったので俺としては良かったと思っている。


 ここにいる120数名が現状城に住んでいる人になるのだが、それでも1階の部屋はかなり余っている。というのも、基本的に2人か3人で1つの部屋を使っているからだ。これは俺の提案ではなく、竜たちからの提案だった。幸いベッドさえ確保できれば3人で過ごそうが大して気にならないほどには部屋の大きさは確保してあった。


「えっと…今みんなに集まってもらったのはいくつか報告があるからです。何から言ったらいいかな。とりあえず最近の国民や国の様子を聞かせてもらえるかな?オニマル」

「あいよ」


 報告があると言っておきながら報告を求めるのはおかしいと思ったが、旅に出るのであれば少しでも最新の情報を知ってから出て行きたい。


 今は別に真面目に話す時ではないので普通の口調や態度で良い…らしい。その辺の境界線は俺にはよく分からない。


 内容的には大分満足した生活を送っているみたいだ。空いている土地で試験的に始めた農作物は無事に育ち、収穫もし始めているらしい。どうやらここの農作物はかなり短期間で収穫まで出来るみたいだ。1年で何回も回せる。


 野菜類は作れるようになったが、依然肉や魚、パンの原材料などは作るかどこかで調達しなければいけない状態だった。…が、それも俺がディランの爺さんに協力してもらって聖王国に設置する前にアレンの冒険者ギルド本部の誰にも見つからないような場所に置いた転移門のお陰で少しずつ食生活の面は豊かになっているみたいだ。


 転移門はリアンの街内の空いているところに置いているので、いくつかの気を付けることを守れば国民でも自由に移動ができるようにしてある。最近ではアレンで働き始めた国民も出てきているらしい。一応、お金は定期的に僅かではあるが配布しているので普通に暮らす分には困らないだろうが、貯金やら欲しい物を買うなど贅沢をするには少々足りない額なので働く国民が多くなっているそうだ。


 アレンの方でもディランの爺さんが国民を見張ってくれているらしいので、奴隷に逆戻りなんてことは無い。出来ればリアンの方でも仕事をさせてあげたいのだが、他の街と離れすぎているため貿易の通路すら作れない。だからまったくする仕事がないのだ。あるとすれば農作業ぐらいだ。


 国という面では今のところ特に問題はなく、良好だそうだ。次に聞いたのは城内部の話。これについてもメイド班と防衛班の働きのお陰で、安全面は確保。周囲に脅威となりそうな存在はいないらしい。メイド班の掃除技術や調理技術の向上により、城全体衛生環境は最高。料理も1流をさらに超えた超1流クラスまでに旨くなっている。前世の調理とこっちの料理の両方を味わえるだけでなく、最近は両方を組み合わせた料理作りにも着手しているらしく、いつにもましてメイド班は気合が入っているらしい。


「…っていうのが最近の内容だけど、どうだ?」

「すごいな。想像以上だ。…これなら大丈夫だな」


 正直俺が思っていた以上の方向だったので安心した。今は玉座に座っていないので、そのままの勢いでこっちの報告も終わらせる。


「さて…俺の方も報告をしよう。ついさっき聖王国との友好条約を結んだ。ついでに向こうに繋げる転移門も置いてきた。これでアレンだけじゃなく、聖王国との行き来も可能になった。聖王国に行ける転移門はアレンと同じ場所に設置する予定だと国民にも伝えておいてほしい。」


 ここまでは至って普通の事なのでみんな特に大きな反応は無く、頷いて話を聞いてくれている。ただ、問題はここからだ。


「そして、俺はこの国の報告を聞いて安心した。俺がいなくてもしっかりと国として成り立っているな、と。まあこういう言い方をしても別に国王を引退するわけじゃない。そうだな…どういういい方がいいのかな」


 しばらく考えた後、まずは自分の率直な思いを打ち明けることにした。


「俺はこれからしばらく1人で旅に出ようと思う。言い方を変えれば家出ならぬ国出だ」

「えーーー!?」


 俺の報告にほとんどが驚いたような顔をしてはいるが声を上げない中、ただ1人だけ大声を上げてすごーく驚いている人物が1人。


――ユカリだ。


「ソーマ様、そんな話初めて聞きましたよ!?」

「ああ、ミラたち以外には初めて言ったからな。もう決まってるんだ。それに言っただろ?俺がいなくてもこんだけ国としてやっていけるんだって。なら少しぐらい俺がいなくても変わらないだろう」


 最近は城にいる時間さえあまり取れなくて国民だけでなく、ここにいるみんなとも会えない時間が多かったのだ。俺がいてもいなくても変わらないだろう。


「そんなわけないじゃないですか!誰もがソーマ様が傍に居てくださるだけで頑張れるはずです!特に私がそうです!」

「知ってるよ。ユカリは1番反応をしてくれると思ってたし、誰よりも俺が旅に出ることに反対しそうだという事も」

「でしたらなぜ…?」


 俺は理由を答える前に、ユカリ以外の4神、カルロス、エオラに念話で理由や行く場所を伝え、それを班長としての一斉伝達で伝えてもらう。


 みんなに情報が伝わったみたいで、俺が旅に出ると知って悲しそうな顔をしていたみんな(主にメイド班)が明るい顔をして俺の方を見てきたので、笑顔で頷いて、退室するようにお願いした。


 謁見の間にはユカリと俺を含む4王だけが残った。この先はユカリだけに伝えなければいけないこともあるからだ。理由はユカリが俺の知っている人の中で1番俺のことになるとうるさくなるからだ。


「…なぜみんなを外に出したんですか?」

「それはこれから話すことはここにいるユカリ以外の俺らしか知らない事だからだ」

「ソーマ様たちしか知らないこと?」

「何から話すかな?とりあえず俺の事から話すか」


 俺はユカリの前に行って、俺が異世界から来たことなどを話した。異世界からの情報を俺は今まで俺の生まれた国の物だと嘘をついてきたので、そこも訂正した。


「…だから俺はこっちに来てから色んな事に興味を持った。魔法だとか魔物だとか。それをたくさん知るために冒険者ギルドに入った。でも気が付いたら王様になって、仲間や慕ってくれる部下、国民まで出来て素それどころじゃなくなった。それ自体はありがたいことだったし、しばらくはそのままでも別に良かった。でもエミリーさんの結婚騒動の時に自分が本当にやりたいことについて改めて考え直させられた。そうしたらやっぱり俺はここで黙って過ごすより他のことをした方が向いていると思った。本当に周りの人に迷惑をかけるのは分かってる。当然ユカリ、お前が1番俺の事で苦しむのは分かってる。済まない」


 俺の長い説明にユカリは何も言わないで聞いてくれた。だが、説明が終わると、ユカリは泣き崩れた。俺はしゃがみ、泣き崩れたユカリの頭を撫でて慰めることしか出来なかった。


 しばらく泣いていた後、赤くなった目をこすりながらユカリが顔を上げた。


「すみません…そんな事があったとは知らずに」

「いいさ、言ってなかった俺のせいだし。それにそのせいで王様としての振る舞いが出来ませんだなんて事みんなの前で言えるわけないだろう?」


 言えないわけではないが、さすがに異世界から来てまったく知らないことに手を出した挙句その仕事が出来ていないという事はさらっと言えることではない。俺としても出来るようにはなりたいが、多分無理だろう。こういう仕事は才能がいる。アレクサンダーさんのように。


「それにな?俺は旅に出るとは言ったけど、何年もここに帰らないとかそういうことは無いぞ?何年か旅に出るかもしれないが、定期的にここに戻ってきて俺に出来ることとか報告とかを聞きたいからな。」

「そう…だったのですか?」


 涙を拭ったユカリは、俺の方を見て若干嬉しそうな顔をしている。涙は流れていないが、まだ目が赤い。


「今はそのつもりでいる。定期的に戻る以外にも、もし何かあったらすぐにこっちに戻ってくるし」

「それなら安心しました。どれぐらいの期間で戻ってこられるのですか?期間によっては私は辛いのですが…」

「あー…大体1週間に1回ぐらいかな?向こうでの状況で伸びたり短くなったりするかもしれんが、大体そのぐらいだ」


 あまり長い間ユカリの近くから離れているとユカリの精神面に大きな悪影響を及ぼすことは分かっている。だからこそ1週間ぐらいで短い時間になりそうだが一旦帰って来てやることを済ませるつもりだ。


「1週間ですか…それぐらいなら頑張ってみますね。ちなみにどこに旅に行かれる予定なのですか?」

「そこだよ。実は旅って言ったけど別に色んな所を放浪するつもりは無いんだ。聖王国の王都に魔法学校っていうのがあってな。今は入学時期じゃないからそこに編入させてもらうつもりなんだ」


 アレクサンダーさんと王都を警備しながら見て回った時に、遠目だったが学校のような物が見えた。詳しく説明を求めるとそこは主に魔法について教えている魔法学校だと言われた。


 この世界の学校の入学時期は年初めなので、もう終わっている。だが、アレクサンダーさんに入学の意思を伝えると何とかしてくれるという事になった。


 そしてついさっき転移門を設置する場所に行く途中に編入やら編入試験やら、条件などの説明をされたのだ。


「魔法学校!?いいなー、行ってみたいですねー」

「そう言うと思ってお前を魔法学校の職員にする手配もしてもらった。まあそれにもどんな魔法が使えるだとかどんな知識を知ってるだとかの知識はいるだろうがな」


 嬉しいのかユカリの目が輝き始めた。ユカリは元々魔法使いのため魔法を扱う職に就けるのは本望だろう。それに俺とも常にではないが会えるという事も嬉しいのだろう。


「本当ですか!?ありがとうございます!」

「条件として俺の事を様付で呼ばないだとかなるべく知り合いだと思われないように振舞うだとかは必要だけどな。出来るか?」

「はい!頑張ります!」


 ユカリが俺と一緒に魔法学校に行くかもしれないという事はユカリ以外の全員に既に知れ渡っている。ユカリはどの班でもなく、俺の秘書という役職に就いているため誰も批判する者はいなかった。ミラたちも安心だと納得してくれた。


 出発は明日なので今の内に荷物をまとめるようユカリに言い、ユカリを謁見の間から出させる。


「さて…そろそろか」

「まだ何かあるのか?」


 ミラたちには何も伝えていないので不思議に思ったシェンが訪ねてくる。それとほぼ同時に謁見の間への扉がコンコンとノックされる。


「入っていいぞ」


 俺の許可で謁見の間に入ってきたのはユウキだった。右手には仮面のようなものを持っている。


「あの…失礼します。ソーマ様が言っていたものを持ってきましたが、こんなもので本当にいいんですか?」


 ユウキが持ってきた仮面を受け取る。その仮面は白い仮面だが、所々に赤い線が入っている。


「ああ、中々いい仮面だ。ありがとうな。大事なストックをもらって。後で同じような物を作ろうか?」

「いえ!大丈夫絵です。今となってはまったく使わないので…ソーマ様に使ってもらった方がその仮面も喜ぶと思います」

「そうだな」

「で、では…失礼します」


 ユウキは逃げるように謁見の間から出て行った。そんなに人と面を向かって話すのが苦手なのだろうか?いつもここで全員集まって話すときは特に縮こまる様子も見られなかったのに。


「それは何ですか?」

「魔法学校に編入する条件の1つとして俺の情報を出来る限り隠す、という条件があってな。それにあたって、顔、性格、全て隠そうと思ったんだ。性格は変えられないから演じるしかないけどな」

「そうだったんですか」


 俺の存在を隠すのはもし俺の事が近い未来魔王だとバレた場合、魔法学校への風評被害を最小限に抑えるためだ。


 試しに仮面を着けてみる。特に俺からは何か変わった感じはしない。


「どう?何か変化とかある?」

「…ソーマの雰囲気というかオーラが少し薄くなった?」

「うむ。その仮面には認識を逸らすというか認識されにくくなる効果があるようじゃの。まさにユウキのような隠密行動を得意とする者向けの仮面じゃな」


 どうやらこの仮面を着けていると存在が薄くなって注目されにくくなるらしい。魔法学校で常に仮面を着けているというだけで大分目立つだろうからこの効果が発揮されるかは分からない。


 仮面の効果も分かったので、今日は解散して各自休むことにした。ユカリだけでなく俺も明日からの準備がある。


 魔法学校に通うものはほとんど寮に住んでいる。それは生徒だけでなく教師も同じだ。だから衣服やら寮部屋に置きたいものだとかの整理が必要なのだ。


 自分の部屋に戻った俺は早速明日の準備を始める。と言っても必要なものはほとんど指輪の中に入っているので確認するのは魔法使いに見えそうなローブなどの服や、杖だ。


 俺は杖を持っていない。杖がなくても同じ威力で魔法を発動できるし、魔力切れを起こさないから消費魔力量を気にする必要がないことから杖を持とうとすら思わなかった。


 そこで助っ人を呼ぶことにした。


「あのー…入っていいですか?」

「どうぞ」


 俺の部屋に恐る恐る入ってきた人物、そうユカリだ。ユカリなら杖について詳しいだろうと思い、助けを呼んだのだ。


「助けとは何でしょう?私が助けになれそうなことなどソーマ様にありますか?」

「ちょっと杖について聞こうと思ってな。俺は今まで杖を使ったことが無いからその使い方とかおすすめの杖の種類だとかを聞こうと思ってな」


 杖にも短く細い杖だとか大杖など結構豊富な種類があるため、自分が主に使う魔法によって使い分けがいるらしい。


「なるほど…杖ですか。確かに杖があったほうが魔法使いとしては便利ですし、私も大体の種類の杖は持ってますが、魔法使いの中には杖を必要としない人もいるのでソーマ様がどうしても持ちたいと思わないのでしたら持たなくてもいいのでは?」

「そうなのか?杖を持たない人もいるなら俺も持たなくてもいいな。済まないな、大したことでもないのに呼び出して」

「いえいえ、気にしないでください。では私は再び明日の準備に取り掛かりますので失礼します」

「ああ」


 ユカリが部屋から出ると、特にやることが無くなってしまった。今こうやって考えるとこんなに暇な国王という者は俺以外いないのではないだろうか?


 本当にやることの無い暇人になるわけにはいかないので、学校生活を送る上での服装に着替えてみることにした。


「…着替えてみて気が付くこの怖さ。俺だったら絶対近づきたくないな」


 鏡に映っていたのは黒いローブに白に赤い線の入った仮面を着けた男。まあ俺なのだが、俺自身から見ても疑いたくなるような怖さがある。怖いと怪しいが両方混じったような感じだろうか?こんな奴と友達になりたいなんて言ってくるやつは余程の変人だろう。


 怖いと思ったが、今更変えるローブは無いし、作ろうと思ってもあまり両方の世界の服の知識がない俺にとって服は〈万物想像〉を使っても作れない。出来ても超高性能の布を作るのが精一杯だろう。


 仕方がないのでこのままの服装で学校生活を送ることになりそうだ。魔王と言えば魔王っぽいのでよくよく考えてみると悪くはない。


 服装の確認を終え、なるべく暇を作らないように風呂と夕食を取り、まるでピクニック前日の小学生のように入念に明日の荷物の確認をして、寝ることにした。

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