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第48話 羽伸ばし?

「…で?あの銃と言ったか?はなんだね?」


 質問攻めの最後にアレクサンダーさんから最初から聞きたかったであろうことを聞いてきた。エミリーさんも何か存在を疑うような、そんな目で俺を見ている。


「それはまあ…俺だからということで許してください」

「何よそれ。お父様はわかるかもしれないけどあんたのことを何も知らない私がそれで「ああ、そうですか。」と納得するとでも!?」

「まあ落ちつきなさいエミリー。お前の言い分はわからんでもない。それはソーマ殿も分かっているだろう。だがソーマ殿がこういう言い方をしたのはお前を思ってだからだと私は考えている。違うかね?」

「仰る通りです」


 結婚するためにお互いのことを知りたいからと言ってさすがに魔王だということを今ここで教えるわけにはいかない。そうするんだったらこうやって睨まれたりしているほうが俺的にもエミリーさん的にも楽だろう。


「というわけだエミリー。今はあまり聞かないであげてやってくれないか?おそらくソーマからもいずれ明かしてくれるだろう」

「…分かったわ。お父様がそう言うのなら。で?次は何をするの?」

「ああ、そうでした。次は防衛班のみんなにしばらくぶりに息抜きをしてもらおうかな?と」


 早速“弾丸トレーニング”と名付けた訓練をしようとしている防衛班を集める。


「さて…再度呼んでしまって申し訳ないが、次はみんなに少し羽を伸ばしてもらおうと思う。みんなはここに来てからよく頑張ってくれたと思う。俺から何かもらえるわけじゃないのに国のために頑張ってくれていることには本当に感謝している。そこで、だ。今回は短時間ではあるが、みんな元の姿で自由に動いてきてほしい。飛び回るもよし、久しぶりの体で寝っ転がるもよしだ。国民には事前に状況を伝えてあるので心配はしなくてもいい」


 そう伝えた瞬間少しの時間が空いた後、防衛班が全員雄叫びを上げだした。久しぶりに竜化の姿に戻れるのだ。嬉しいに決まっているだろう。本当であれば内政班やメイド班にもさせてあげたかったのだが、都合が合わなくて出来なかった。


 今回は国民の反応も兼ねているので伝説とまで呼ばれることもある竜を見て、いい感じの反応であれば内政班やメイド班にも竜化で遊ぶ暇を作ることが出来る。


 エミリーさんからものすごい怖い目線を送られてくる。なぜそんな怖い目をしているのか理解できるが、だからと言って教えるわけにはいかないので頑張って無視をする。


 目を背けても尚襲い掛かる視線に耐えていると、それを紛らわすかのようにカルロスから念話が来た。


(陛下、元の姿に戻るというのは…つまり竜化してもいいと?)

(ああ)

(ですが、今聖王陛下のいる目の前で竜化はまずいのではないでしょうか?)


 どうやらカルロスはアレクサンダーさんとエミリーさんの前で竜化してもいいのか?という事で念話してきたらしい。他の防衛班のメンバーを見ても一通り喜んだ後カルロスと同じ疑問に辿り着いたようで、俺の顔を見ながら心配そうな顔をしている。


(まあ、心配すんな。今回の竜化は「うちの防衛班はなんと竜なんですよ!」っていうのを示すためだ。リアンが攻められないための抑止力になればいいかな?と考えているし、4神やミラたちには了承を得てる。ただ、エレメンタルドラゴンのカルロスと副班長の2人には悪いけど今回は我慢してほしい)


 今回示す必要があるのは上級種の存在だけなので、エレメンタルドラゴンの情報を漏らす必要はない。3人はアレクサンダーさんたちが帰った後にメイド班や内政班のみんなと一緒に竜化して羽を伸ばしてもらうつもりだ。


(なるほど。陛下の意図はわかりました。私たちも竜の中で若手と言えど、子供ではないので駄々をこねるつもりはありません。ですので陛下の思うがままになされるのがよろしいかと)

(ありがとな。じゃあそういう主旨で伝えてくれ)

(畏まりました)


 俺がカルロスに渡した指輪には普通の念話以外にももう1つだけ効果を付与した。それは同じ班の仲間に一斉に念話ができるというものだ。班のメンバーにはそれぞれの班に合った指輪を渡してある。その指輪は念話を送ることはできないが、特定の指輪を持つ者からの念話を受け取るという能力が付いている。それのより、各班の班長限定で、班のメンバーに情報を一斉伝達できるようにした。


 この〈エンチャント〉が成功したときに本格的に魔法は万能だけど怖いものだ、と思い始めた。


 指示通りにカルロスが伝達したようで、みんなの心配そうな不安そうな顔が少しは和らいだ。上級種以上の竜は数百年の間天大陸以外で存在を確認されていないまさに伝説の竜なので、みんなは絶滅したとさえ思われている上級種がいることを世間に広めることをあまりよく思っていないらしい。


 ただ今回に限っては俺が独断で決めたわけじゃなく、時間がなかったので本望ではないのかもしれないが、4神はもちろん、事実上の竜種の統治者であるシェンを始め、ミラたちや竜の島をシェンの命により管理している赤たちにも相談した。


 相談したのがアレクサンダーさんたちがここに来ると決まった時なので実際許可を得るのに十分な期間があったわけじゃない。だからダメだといわれるかもしれなかったが、みんな了承してくれた。


 これにより、最悪竜の島に竜種を捕らえるだとかの目的で誰かが侵入した場合は俺がそいつの住んでいる街や国に話をしに行く、と言ったら頭が痛くなるぐらいの大声でみんなから止められた。なんでだろ?


 初めて竜の島に行ったときに、俺が乗っている状態でシェンが竜人化したら俺が吹き飛ばされた。これの正確な理由はまだ分からないが、同じ事故あるいはそのほかに考えられる様々な嫌なことを考慮して、竜化するのは1人1人十分な距離をとって竜化することも伝えてある。


 今回は全員が竜化するのではなく、数回に分けて竜化することにしてる。


 誰か見ているわけではないが、何となく俺が綺麗に見たかったので結界を解除した。終わったらまた張りなおすつもりだ。今度はもう少し範囲を広めにして張るつもりだ。


 1列10人ほどが十分な距離をとって横に並んだところで号令をかける。


「じゃあいくぞー!第1陣GO!」


 眩いほどの光が放たれ、第1陣が竜化して空へと飛び立っていく。そしてその勢いのまま第2陣、第3陣とどんどん号令をかけて竜化させ、空へと飛んでいかせる。


 何が起こるのか半分楽しみ、半分恐怖のような複雑な顔で待っていたアレクサンダーさんと、アレクサンダーさんと同じような気持ちを半分の半分ずつ、残りの半分は俺への怒りや恨みなどを感じさせるような顔で待っていたエミリーさんも伝説とも呼ばれる竜がまるで戦闘機のように飛び立っていくのを見て顔を青ざめている。


 国民にはこの計画のすべてを伝えてあるが、もし実際に起こって混乱が起きないように同じ竜種のメイド班と内政班を総動員させて混乱が起きないように国民の傍についていてあげるように指示してある。内政班は主に国民の情報収集や最近起こったことの確認も兼ねて。メイド班は周囲の状況を判断して的確に対応することなどを一緒に学んでくるようにも指示した。


 そのおかげもあって特にここから悲鳴が聞こえるだとかそういうことは今現状では無い。


 空に飛んで行った防衛班のメンバーには辺り一帯を囲む山脈を出ない範囲であれば自由に飛び回っていいことと、竜化していないカルロスからの伝達があったら第1陣から戻ってきて竜人化することを伝えてある。なのでみんな思い思いに久々の空を満喫しているようだ。


「どうだ?シェン。みんなの動きが鈍っていたりしていないか?」

「ふむ。特に問題はないように感じる。皆久しぶりじゃから楽しんでいるようじゃの」

「そうか。ならよかった」


 さすがにいつまでもアレクサンダーさんたちを放っておくのは可哀想なので声をかけてあげる。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ…。私は夢でも見ているのか?」

「いえ、夢でも何でもありませんよ?おーい!」


 とりあえず目を覚まさせるために1番近くにいたメンバーを呼ぶ。するとかなり距離があったのにすぐさま急降下してきて、俺たちに風がかからないようにしっかり空気の流れを調整しながら地面に降り立った。


 さすがにシェン程までとはいかないが立派な鱗や角に、睨まれたらどんな生物でも怯えてしまいそうな何かを見透かされているような目。それが俺の目の前で頭を下げている。彼なりの竜化バージョンの敬意の表し方なのだろう。


「どうですか?かっこいいですよね?まあさすがに整理がつかないようなので俺も少し遊んで来ます。しばらくしたら戻るのでそれまでゆっくり整理してください」

「わ、分かった」


 そして呼んだ竜に乗ろうとすると、シェンから声がかかった。


「マスター」

「ん?何?」

「その…なんじゃ。我に乗るというのはどうじゃ?」

「…はい?」

「まあ…我の眷属にマスターを任せておけんというか、我の眷属の前で言うのもなんじゃが、一応使い魔としての最低限の働きはしたいのでな。ダメかの?」

「いいぞ。というわけですまんな。もう戻ってもいいぞ」


 俺が声をかけると呼んだ竜はまた空に飛んで行った。そしてその空いたスペースにシェンがすぐさま竜化する。先ほどの竜よりもシェンの方が体格が大きかったが問題はない。


(すまないのう。我のわがままを聞いてもらって)


 竜の言葉は念話とは少し違えど、頭の中に直接入ってくる感じだ。だが念話と違って誰かと1対1で話すのではなく全員に声が聞こえる。だから俺はあえて念話でシェンだけに話しかける。


(気にすんな。シェンにはいろんな面で助けられてるしな。さっきだってシェンが動いてくれなきゃまずい状況だったし。ありがとな。俺にできることなら最大限努力するつもりだからな)

(承知した。ならばこれから少しずつ色んなことを頼もうかの?)

(いいけどあんま難しいのは無理だからな?)

(分かっておる)


 そんな他愛無い話をしたところでシェンの背中に乗る。何も言わないだけどいつものようにミラたちから嫉妬の目線がシェンと俺に飛んでいるのはこの場にいる誰もが分かっただろう。


 シェンはそんな視線は無かったかのように颯爽と空へと飛んだ。竜の乗り方としては鱗の隙間というか生え際というか、そこに手をかけるだけど十分だ。人間1人程度の体重では鱗はビクともしない。


 空に1体だけ体が真っ白な竜が空を飛んでいるのだ。それが誰か知っている防衛班たちは自然に距離をとる。あくまで近寄りがたいという意思表示だ。


(どうじゃ?寒くはないか?)


 そんな周囲の状況を気にも留めないかのように俺のことを気遣ってくれるシェン。ありがたいのだが、正直俺のことよりも自分自身を1番大事にするようにしてほしいと思ってしまう。


(ああ、大丈夫だ。それにしてもやっぱシェンの上は乗り心地がいいよな。硬いはずの鱗が全く硬く感じない)

(特訓すれば竜種の誰でも身に着けられるなんてことはない技術じゃ。大事なのは身に着けるのとその後どうやってマスターするかじゃ)


 心地いいのなら何でもいいので話を切り上げる。多分この手の話をシェンにさせるとかなり時間持っていかれそうだ。


 今はかなり低速で飛んでくれているのだが、やはり低速でも風切り音で話が出来ないので念話で話している。シェンは普通に話しているけど。


(でさ、シェンにしか聞かないけど正直に俺がエミリーさんと結婚するかもしれないことについてどう思ってる?)

(…そうじゃな。マスターがそれでいいのなら我はどちらでも構わん。マスターの幸せこそが我の幸せじゃからの)


 シェンは嘘をつくのが得意ではないことは最近分かってきた。大体嘘をつくときに何か挙動を起こすのだが、竜化のシェンはさらに分かりやすい。嘘をつくときに俺が掴んでいる鱗を微妙にだが震わせる。それが竜化しているシェンの1番簡単な嘘かどうかを見極める方法だ。


(…本当は?)

(本当じゃぞ?)

(お前は嘘をつくのが下手なんだ。嘘をつくと必ずと言っていいほど何か動作を起こす。今は鱗を震わせるだったな)

(…マスターは何でもお見通しじゃの。その通りじゃ。いくらマスターの使い魔でマスターの幸せこそが使い魔である我の幸せだという御託を並べたところで我自身の気持ちは動かん。我とて1人の女じゃ。甲斐性のある男性に惹かれるのはもはや自然の摂理じゃ。正直に我はマスターに惚れておる。こんなことを当の本人であるマスターに言うのはおかしな話じゃし、使い魔と契約者という関係上絶対に結ばれることはないがな)

(じゃあ使い魔止めるか?)


 俺の言葉にシェンの体が大きく揺らめき、俺は落とされそうになるのを必死に堪えた。

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