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第45話 聖王国

「ここが王城か。改めて見ると中は広いんだな」


 俺は今聖王国にいる。今日朝起きた後、一通りみんなに挨拶をして〈ワープ〉でここの王城に転移した。ちなみに子供の姿ではなく、いつもの姿になった。


「朝のうちに聖王に話しておくか」


 王城を適当に進む。アレクサンダーさんから俺をフリーパスにするように言われているらしく、執事の人やお手伝いさんと会っても特に何も言われることなく挨拶されるだけで通れた。


「ここが聖王の寝室だっけ?」


 なぜ他人の俺が聖王が言っただけでここまでフリーで通れるのか分からなかったが、とりあえずノックする。


「…誰だ?」

「おはようございます。ソーマです」

「ソーマ殿か。入ってくれ!」

「…失礼しまーす」


 若干緊張しながらも中に入る。まず扉から豪華だった。そして中も豪華でふわふわな絨毯に天盤付きの豪華なベッド。他にも家具のほとんどがどう見ても豪華だと分かった。


「よく来てくれた。まあ私の私室だが」

「いえ、とんでもない。それで…いつ頃また来ればいいですか?」

「それなんだが、今日は私が国を案内しようと思ってな。たまには国民にも触れあわないといけないのだよ。どうかな?」


 確かに国民からの支持率を稼ぐにはずっと城にこもるのではなく、外で国民と直接話し合う事も重要だろう。ただ命を狙われる危険性もあるので、いつも厳重にボディガードがついているらしい。


「なるほど。了解です。じゃあ俺はそのボディガードの代わりも務めつつ、案内される…と」

「そう言う事だ。まあ条約については案内が終わってからでも構わないだろう」

「そうですね。じゃあ案内お願いします」


 まあボディガードと言ってもこのアレクサンダーさんは筋肉もあり、昔は聖王に就く前は王族なのに自由奔放に探検していたらしい。そのため普通に戦えるみたいだ。


 アレクサンダーさんに案内されてまずは王城の中を見て回る。王城の構成はリアンの城とあまり変わらない。ただ広さが広すぎるぐらいだ。


「へえ…何だろう。うちの城とあんま構造は変わらないけど規模が違いますね」

「私が作った城ではないが、広すぎて困ることは無い。使う施設しかないからな」

「なるほど。使う施設しかないのは良いですね」

「では次は街を案内しに行こう。外に出たら国民が溢れ出てくるだろうから一応警戒していてくれ。まあ私も戦えるがな」

「分かりました」


 王城の上がり下がりする橋を渡って街に行く。街並みはアレンに似ているが道の広さが違う。馬車が2台通っても余裕で通れる。


 アレクサンダーさんの言った通り街に出た途端、まるでテレビのロケのように聖王と俺を中心に大勢が囲むという事態が起こった。みんなが「アレクサンダー聖王!」とか「聖王陛下!」とか呼びながら自分の言いたいことだけを言っている。


 これは聖徳太子でも聞き取れないだろうな、と思っていると何と結構聞いていて、答えれる場合が多かった。


「何でそんなに聞き取れるんですか?」

「ん?1人1人声の質や大きさが違うからな。それを分析すれば大体1度に5人ほどまでは聞き分けられるぞ?」

「…アレクサンダーさんすげえな」


 素晴らしい耳の持ち主だろう。やはり国王の経験もあるが、人生経験が俺と違い過ぎると実感した。どの世界も多くの人生を歩んだ方が多くの経験を得るものだ。


 だいたいの施設がアレンと同じだというのが分かったが、何やら娼館みたいなものが多くなってきた路地に出た。それにつれ、周りに集まる国民の数も自然と減ってきた。


「ここって…まずい場所じゃないんですか?」

「人によってはそうだろう。娼館もあるからな。だがここには貧民が多く住む場所がある。まあスラムだな。…というか娼館に興味があるのか?」

「いえ…興味が無いといったら嘘になりますが、うちの女性陣がいたら娼館に行く余裕なんてないですよ」

「ははは!そうか。まあ国が正式に認めている娼館もある。もし行きたいのであれば割引券ぐらいやろう」


 この人はうちの女性陣を知らないからそうやって軽く受け流せるんだ。うちにはノリで俺を気絶させる奴だっているし、女性陣の1人が俺に何かするたびに嫉妬で同じことをしようとしてくるのだ。


 全く…こんなハーレムは望んでないんだが。


「いや…いらないですって。マジでうちの女性陣怖いんですからね?」

「ふっ…うちの嫁と一緒だな」

「あ、そういえば王家の人って側室をたくさん持っているって聞いたんですけどアレクサンダーさんは何人いるんですか?」

「私は正室の嫁1人だが?」


 俺はミラから王家の人は正室と側室で嫁がたくさんいて、正室は1人でその人が第1妃だけど側室は何人もいるって聞いた。その方が跡継ぎが出来やすいからや普通にたくさん妃がいた方が楽しいから、という理由が多いらしい。


「あれ?1人なんですか?」

「ああ。あいつは他にもつくっても良いと言ってくれているんだが、私は1人だけを愛すタイプでね。娘が1人だけしかいないから正直跡継ぎに困ってるんだ。もうこの年だし、新しい子供を作るわけにはいかなくてな」

 

 何か聞いてはいけない聖王国の未来に関する話を聞いたようで少し悲しくなった。もし跡継ぎがいない場合はどうするのだろう?どこかの貴族が代わりになったりするのかな?


「じゃあ失礼な事を聞きますけど、もしこのままアレクサンダーさんが亡くなったらどうするんですか?」

「そうだな…その前に娘には結婚してもらって跡継ぎと言うか孫を作ってもらえればもし男だったら就かせられるな。若くてもうちの執事たちは皆優秀だ。きっと問題は無いだろう」


 意外とアレクサンダーさんも未来の事は考えているみたいだ。娘さんが結婚しなかったらの場合は…考えない方が良いな。


 そんな会話をしながらしばらく歩くと娼館が立ち並ぶ通りを通り過ぎて古臭いような貧相な感じのするアレンのスラム街に似た街並みが見えてきた。


「ここが貧民街だ。ここには危険な国民もいる。特に危害は加えてこないと思うがもし加えてきたら捕らえてくれ」

「分かりました」


 先ほどまでいた平民だと思われる人たちが気づけばいなくなっている。そして少しずつボロボロの服を着た人たちが周りを囲み始めた。だがあまり元気はない。というか生気がない。


「やっぱり…こういう人たちはなるべく減らしたいですね」

「そうだな…私の代から本格的に取り組んではいるのだが、貧民を減らしても平民から貧民になる者の数が後を絶たなくてな。どうしようもないのだ」

「俺の国の国民も全員奴隷市場にいた人たちでした。その人たちを買って解放した結果100人余りに人が俺の正体を知りながらも暮らしてくれています。俺は国王としてはまだまだ未熟ですが、そんな俺でもこういう貧富の差の現実をどうにかしなくてはいけないと思っています」


 俺も出来るなら貧富の差を無くした世界を作りたいとは思っている。だがそれは難しい。全て平等にすれば良いのではないか?と思うかもしれないがそういう誰かが管理した完全に平等な社会は長くは持たず、大抵最悪な方向に進みだす。そのため世の中に貧富の差があり、楽するものと苦労するものがいるのが当然でありそれが1番世界が効率よく平和的に回るのだ。


「時間はかかるだろうがお互い頑張っていこう」

「はい、こちらこそ少しでも力になりたいです」


 この後特に何か大きな出来事は無く、貧民の人達から色々と情報を集めて来た道を戻った。 


 また大通りに出ると先ほどのようにたくさんの人に囲まれた。俺の方も慣れてきてしまった。


「もう大体いつものルートは通ったのだが…ソーマ殿は何か信仰する宗教はあるかね?」

「宗教?いえ、特に」

「そうか…無いのであれば教会などは行かなくても大丈夫だね?」

「あ、大丈夫です」


 宗教は地球と同じく神を信仰するものらしい。ここでは女神“セーラ”という女神を信仰するセーラ教が1番人数がいるらしい。宗教関係は布教やらで大変そうなのでうちの国には取り入れたくない。


「他にも王都には闘技場などがあるが、その辺はまた後で見てもらおう。では次は聖騎士や警護兵を鍛える訓練場を案内しよう」

「訓練場はこれから本格的な物を作ろうと思っていたので参考にします」

「うむ。参考にしていい国を作ったらいい」


 アレクサンダーさんについていく。それと同時に国民も付いていくが、王城へ行く橋の所に辿りついたところでバラバラに散っていった。さすがに王城までついていくと罪になるみたいだ。不法侵入みたいな罪らしい。


 王城の右側へ続く道を歩くと、小さくはない円形の訓練場らしき建物があった。やっぱ訓練するための建物は円形の方が見やすいという点で優れているみたいだ。競技場とかドームも円形だからな。この時代だからコロッセオみたいなだけであって。


「この中で普段聖騎士や警護兵が訓練している。今日は聖騎士だな。昨日いた聖騎士もいるだろう。だが怒らないでほしい」

「もちろんです。もう終わったことにぐだぐだ言うほど悪い魔王じゃないですよ」

「それもそうだな。悪い魔王ならこの言葉遣いの時点で死んでいるだろう」


 アレクサンダーさんは敬語を使えない。俺みたいに苦手とかじゃなくてこういう喋り方以外したことが無いのだ。国の王様だからしょうがないな。言葉遣いを突っ込むほど短気じゃないつもりだ。


 訓練場の中の上から見るスペース(一般の所ではなく、王家専用の豪華な場所)に入ると昨日見た顔ぶれの何人かも一緒になって木製の剣で立ち回りなどの訓練をしていた。もしかしたらこういう訓練の様子も参考になるかもしれないからオニマルを呼ぶべきだったと今思った。


 ここの王家専用スペースは目立つので聖騎士の目にも留まる。昨日いた聖騎士は俺を見た瞬間訓練の挙動がおかしくなっていた。そんなに怯えなくてもいいだろうに。


 訓練の様子を見ていると、1人だけ聖騎士の鎧をつけていない女性が見えた。動きやすい服を着ているが、とても高そうな赤色の服だ。


「…誰ですか?あの女性」

「“エミリー”…今日もここで遊んでいるのか」


 アレクサンダーさんは玉座に座って肘を頬にあてて溜め息をついている。


「あの女性はエミリーって言う名前なんですか?」

「あいつは私の1人娘だ。昔の私と似ていて動くことや戦う事、冒険することが好きでな。目を盗んではここで訓練するのだ。聖騎士も王家には逆らえんのだ。渋々やっているのだろう」

「え!?アレクサンダーさんの娘さん!?」


 確かに似ている。アレクサンダーさんと似た金色の髪、髪はポニーテールで動きやすく纏めている。そして顔立ちも非常に整っている。さすがにシェンやユカリには負けるが普通に可愛いだろう。そしてなんと20歳らしい。


「…あいつには早めに結婚してほしいのだが、中々相手がいなくてな。向こうからお見合いは来るのだが、全てエミリーは断っているのだ。私が勝手に決めて人生を決めてしまうのは違うと思うのだ。ソーマ殿はどう思うかね?」


 正論だ。王家になれば政略結婚などがあるが、それは結ばれるお互いが望んだことではない。親が勝手に自分の利益のために子供の意思を無視して決めているのだ。それは子供の人生を決めている、言い方は悪いが子供を自分の道具として扱っているのと同義だ。


「俺も政略結婚とかは反対です。人生を共にするパートナーはお互いが好意を寄せあっている者同士がなるべきです。それを親が利益のために勝手に決めるのは違うと思います」

「やはりソーマ殿も同じか。となるとあいつは一生結婚相手を作らないかもしれない。それだとまずい」


 アレクサンダーが再び跡継ぎの事とかで悩み始めた時、エミリーさんが俺とアレクサンダーさんに気が付いたようだ。


 アレクサンダーさんを見て嬉しそうな表情をした後、となりで立っている俺を見て何か不機嫌そうな表情を見せ、どこかに行ってしまった。

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