第44話 鈍感
謁見の間に戻ると、防衛班と4神とミラ達が結界のなくなった聖騎士たちに向かって威圧を放っていた。聖騎士たちはその威圧で縮こまっている。まあ王が3人とそれより強いかもしれない4神とここでは弱いけど世界では最強クラスの上級竜とエレメンタルドラゴンに周囲を囲まれて威圧されたら縮こまるだろう。
だが聖騎士たちはこれから更に恐ろしい物を体験できるだろう。…頑張れ聖騎士さん。聖王に負けるな。
「あ!ソーマさん。お帰りなさい。何で結界を解いたんで…す…か…って誰ですか?」
「ただいまミラ。この人は聖王国聖王アレクサンダーさんだよ」
「ふん…聖王か」
俺の紹介にシェンが面白そうに鼻で笑っている。何故だ?
「おお…ここがリアンの城の中か…私の国のように綺麗だな。きっと大勢のお手伝いが頑張っている事だろう」
「「「「聖王陛下!?」」」」
アレクサンダーさんの声で聖騎士たちが一斉に驚愕する。中には気絶しかけている者もいた。
「ふむ…話は聞いたぞブラフォード。で?これはどういう状況かな?説明してくれ」
「………」
ブラフォードさんは黙ってしまった。まあ自分でやったとはいえ聖王に言えるわけがないだろうな。そう思っていたからこそカルロスに頼んで伝えに行かせたんだ。
「返事は無し…か。済まないソーマ殿。全て私の不手際だ。私の命でどうか許してほしい」
「陛下!?何を仰いますか!すべては私1人の独断で行った事です!ですからどうか私の命で償わせてください!」
「…ふっ。自分から言ってくれたか」
「…あ!」
うわー…この人すげえー。演技がめっちゃうまいな。ブラフォードさんに自ら吐かせるために自分の命を簡単に捨てるのか。尊敬するわー。
そんなアレクサンダーさんの演技にまんまと騙されたブラフォードは顔を青ざめている。この人表情の変化が激しいよね。
「ブラフォードよ!貴様の命だけで他の聖騎士は救ってほしいのだな!?」
「…はい。私の命だけで許していただけるのならば」
「ソーマ殿。彼もこう言っています。私としては優秀な彼を失いたくはありません。今回はおそらくソーマ殿が魔王だから恐怖に負けたのでしょう。どうか私程度では足りないかもしれないが今回の件は水に流してもらえないだろうか」
アレクサンダーさんは俺に頭を下げて謝罪している。大国の王が小国の王に向かって頭を下げて謝る姿は国民に見られたくないだろう。それは聖騎士も同じだ。それも聖騎士と言う聖王の直属の兵士の失態だ。聖騎士たちからすれば自分のせいで聖王が頭を下げるなど目を背けたくなるような光景だろう。
「ん?ああ、いいですよ。今回は防衛班のみんなにとってもいい経験になっただろうし」
俺は一息空けて、防衛班に伝える。
「防衛班!今回の件で色々学べただろう。俺は襲われてもほぼほぼ自分1人で対処できる!だが俺は君たち全員を守ってあげる事は出来ない!だからこそ君たち自信が強くならねばならない!俺の〈霊気解放〉に意識を奪われているようではまだまだだ!今後あの経験を克服し、更なる向上を願っている!」
「「「「はっ!!」」」」
防衛班の全員が俺の方に体を向け、軍隊顔負けのみごとな敬礼をしている。アドリブだが素晴らしい対応力だ。
「わーお…やっぱうちの防衛班はすげぇ…」
逆に俺の方が防衛班の気迫に負けてしまった。俺も更なる精進が必要だな。
「あのソーマさん?その姿に戻ったんですか?」
「ああ、忘れてた。今戻すよ」
姿を変える魔法(今更だがこれに名前は無い)を使い、子供の姿に戻す。子供の姿になると、周りの俺を見る視線が1段と和らぐのだ。リラックスしているのだろう。
「あ、俺たちは聖騎士さん達に何かするとかそう言うのは無いんで、アレクサンダーさんの方で対処してあげてください」
「うむ。善処しよう」
「それと…この指輪を渡しておくので魔力を注げば俺と念話が出来ます。明日一応は聖王都でのんびり観光でもしていてもいいですか?」
「いいとも。ソーマ殿の正体は国民に知られていないからな。暴れるとか何か目立つようなことをしないのであれば問題ない。それと…私はいつ帰れるのだ?」
「分かりました。今アレクサンダーさんと聖騎士さんをまとめて王都の城に送ります。人数が多いので少し開けたところに送ります。多分謁見の間かな?」
俺は謁見の間に行ったところが無いので分からなかったが王城に100人以上入っても余裕のある場所はこの辺しか見つからなかった。あと食堂みたいなところもあったけどテーブルか何かが多すぎて〈魔力探知〉を使った〈集団転移〉の応用〈集団移送〉では送れない。
〈集団転移〉と〈集団移送〉の違いはただ転移する人物に真帆を使う側、つまり俺がいるかいないかの違いだ。
「分かった。では明日書類などがまとまり次第念話とやらで連絡しよう。それまで我が国でゆっくりしていくといい」
「はい。お互いお疲れさまでした。〈集団移送〉」
アレクサンダーさんと聖騎士のみんなが一瞬にして謁見の間から消えた。無事に向こうの謁見の間らしきところに行けたみたいだ。
この後俺はアレクサンダーさんと何を話したのかやとりあえず条約を結ぶという事を話した。
それでここまでは問題ではなかった。みんな静かに黙って聞いてくれていた。問題はここからだった。俺が明日聖王国に行くんだけど…と軽はずみで言ったら主に女性陣(ミラ、シェン、シエラ、ユカリ)が一緒に行きたい!と言い始めたのだ。
他の3神や防衛班たち男組はくだらなそうに話し合いを見ている。俺もどうでもいいから黙って聞いている。
「私が行きます!」
「いや、我だ!ミラはお留守番でもしていろ!」
「…私!」
「私です!私が1番ソーマ様とスキンシップしています!」
「な、何!?き、貴様!どこまで行ったのだ!」
「えへへ…この前お風呂に入りました!」
「「「………」」」
ユカリの自慢そうに言った言葉に3人が静まり返る。そういえばユカリには言ってなかったけ。
「何ですか?嫉妬ですか?」
「その…ユカリよ。風呂なら我もマスターと一緒に入ったことがある」
「私もです」
「…私も」
「ええ!?そんなの聞いてませんよ!?ソーマ様!どういうことですか!?」
いきなり話を振られた。面倒くさいな。嫉妬だと思ったらその程度か、と呆れられたことにユカリは大激怒だ。
「どうもこうもお前ら4神を呼び出す前に風呂に入っただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。誰が1番スキンシップをしているとかどうでもいいんだが…。どうせなら4人とも仲良くついてくるとかないのか?」
「「「「無い(です)(のじゃ)!」」」」
息ピッタリに答える程仲がいいんじゃないか。というか何故いつも誰か1人とか…全員で行くという手段は無いんだ?
「おーい、オニマル。助けてくれ」
「はぁ?何で俺に振るんだよ。こういう問題はソーマ様が解決するべきだろ?というかソーマ様も鈍感だな」
「何が?」
「女がこうやって言い争っているときはな?大体黙って見てるもんなんだよ。これはみんなソーマ様のお嫁を狙ってるんだぞ?」
「「「「!?」」」」
オニマルの発言に4人が凍り付く。彼女たちの心の悲鳴を現すなら「何勝手に真実ぶちまけてんじゃゴラァ!」といった感じか。
「はあ?嫁?俺はまだそんな年齢じゃないぞ?大体俺なんかの嫁になって何が楽しんだよ」
軽率な発言に4人はシュンとなった。まあ愛する人本人に嫁が欲しくないような言い方をされれば大体萎える。
「じゃあソーマ様は嫁いらないのか?」
「んー…あの4人が仮に嫁になってくれるなら俺は大歓迎だぞ?可愛いし、優しい、なんでも出来るし、特に俺は日常の家事ができる人とか好きだからな」
「「「「!?」」」」
またまた爆弾発言で4人の闘志に火が付いた。
「聞きました!?きっとあれは私に言ったんですよ!」
「ミラよ。何を馬鹿な事を言っておる。我に向かって言ったに決まっているだろう!」
「…私以外にありえない」
「はあ?皆さんどうかしたんですか?私以外にソーマ様が言うはずないじゃないですか!ねえ?ソーマ様」
またまた話を振られた。もう疲れてきたので男陣を連れて食堂に向かう事にした。どうせ腹が減ったら4人も頭を冷やして食堂に来るだろう。
「あ、陛下こんばんは。お食事ですか?」
食堂に行くと、メイド班班長のエオラさんを含め10人ほどが料理を作っていた。ここで防衛班や内政班、メイド班や4神たちが食事をとる。俺は王なので別の場所で食べるようにした方が良いとみんなに反対をくらったのだが、1人でさみしく食べるよりもみんなで食べた方が楽しい国に見えるだろ?と反論したら誰も返してこなくなったので結局俺もこの食堂で食べてもいいようになった。
「あ、エオラさん。はい、ちょっとお腹が空いたので。今日のご飯は何ですか?」
「今日のご飯は…お楽しみです」
「じゃあとりあえずお楽しみをください」
「はーい。じゃあ席で待っていてください」
エオラさんが何を作るのか楽しみにしながら席でまつ。特に席は決められていないので1番近いところに座った。
男陣もお楽しみを頼んだようだ。みんな笑顔で楽しみにしている。
メイド班に料理を教えてからさほど時間は経っていないのだが、何とメイド班の料理は美味いのだ。それもミラレベルで。もう1流のレストランに出してもおかしくないぐらいなのだ。
食料は4神が作っているらしいし、レシピも俺が覚えている限り書いて渡してあるのでここではこの世界特有の料理だけではなく、日本で食べられる料理もある。というか日本の料理の方が出やすい。
そしてこの城に住む全員がだいたい箸を使えるようになっていた。上達が早い。
「お待たせしました。今日は陛下がレシピを書いて下さった“カレーライス”というものです」
「カレーだとぉ!?」
「どうされましたか!?何かお嫌いなものでも?」
俺の叫びにエオラさんが驚いて聞いてきた。他のみんなも驚いて視線を向ける。
「うう…ここでカレーライスが食べられるとは…ありがとうエオラさん!」
「きゃあ!あの陛下…ここでは…その…」
俺はつい嬉しくてエオラさんに抱きついてしまった。すぐさま離す。
「あっ!ごめん。つい嬉しくなって」
「いえ、陛下に喜んでもらえて何よりです。ですがこのカレーライスは箸ではなくスプーンを使うようですね」
「スプーンの方が食べやすいからね」
「では、ごゆっくり」
「よーし、いただきまーす」
俺が食べ始めてからみんなも食べ始める。どうやらこれも国王が先に食べてからじゃないと食べてはいけない的なルールらしい。いや、普通は毒見みたいなのするんだろうけど俺に毒は聞かないからいいんだけどさ。
「…うまい。これはうまいぞ!」
いくらでも食べられる味だ。久々に食べたというのもあるが、やはり日本の料理は懐かしみがあっていくらでも食べられる。
周りのみんなからも好評みたいだ。辛さも設定できるらしく、無理して辛口を頼んだ人は辛そうだ。俺はもちろん中辛だ。この子供の味覚ではこれが限界だ。
「美味かった…ごちそうさまでした」
食べ終わって大満足の俺は皿をエオラさんに渡して、謁見の間に戻る。食事の間も4人は来なかったのだ。
想像通り謁見の間に戻っても話し合いをしていた。だが前のピリピリとした感じではなく、楽しそうな感じだ。
「何話してんの?聖王国の話は終わった?」
「あ、ソーマさん。はい聖王国はソーマさん1人で行ってきてもらう事にしました」
「我らも行きたかったんじゃが、マスターには聖王と約束事があるようじゃしの」
「…私たちが行っても足手まとい」
「と言う訳です」
結果俺1人で行くことで合意したらしい。なら最初からそうすれば良かったのにな。
「分かった。で、何を話してたんだ?もうご飯を食べに行かないと無くなるぞ?」
「そうですね。今話していた内容は内緒です」
「そうじゃな。マスターには教えられん」
「…でもいつか分かる」
「それでは私たちもご飯を食べに行きましょう」
そう言って4人は仲良く謁見の間を出て行った。とりあえずは楽しそうで何よりだった。
「何の話だったんだ?…まあいいか。いずれ分かるらしいし」
特に俺は気にせず、謁見の間を後にした。
今更ですが、この小説の「」で誰かが話していないところは基本的にソーマ視点の“俺は~~だと思った。”みたいな感じに表記されています。が、たまにこれどう見てもソーマ視点じゃないよな?っていう書き方があると思います(今回の最後ら辺ように)。その辺はちょっと…見逃してもらえると嬉しいです。結構難しいんです。ソーマ視点で書くと他人の思いを表現させることがほぼ不可能なので。




