第42話 謁見者
「まずいいか?お前らが聖王に許可を取っていない時点でここリアン連合王国の国王に戦争を仕掛けているんだぞ?お前らはもしかしたら自分たちの死だけで終わるつもりでいるかもしれんが、ここがリアン連合王国として動いている以上俺たちも聖王国に報復が出来るんだぞ?」
「騙されるな!貴様!嘘をつくな!」
ブラフォードさんは「報復」という単語を聞いて更に青ざめている。体全身が震えている。なんだ?まさか本当に国に攻撃して報復されないと思ったのか?甘すぎるだろ。頭お花畑なのか?
「嘘じゃない。今転移する時に部下の1人を聖王国の聖王の所に向かわせているよ。聖騎士たちがリアン連合王国に勝手に戦争宣言をしたことと、こっちはいつでも報復をする準備は出来ている、って言う事を伝えさせるためにな」
「!!…騙されるな!もし本当だとしてもお前らだけは俺が命を懸けて守って見せる!行くぞ!突撃ィ!」
――ウオオオオオオーー!!
全員の聖騎士が俺めがけて剣を構えながら突撃してくる。本来ならばここは防衛班かユカリかユウキが命を張って守るはずなんだけどあまりにもブラフォードさんの話が飛び飛び過ぎて反応に遅れたようだ。今になって慌てて回り込もうとしているが間に合わないだろう。
「行かせんよ!」
「…ソーマは私が守る!」
「ここは通しません!」
「どけぇ!女に用は無い!あるのは魔王だけだ!」
ユカリたちが間に合わなかった代わりにこうなるだろうと予想していたであろうミラたちが俺と聖騎士たちの間に立ちふさがる。
何か以前にこの光景を見た気がする。あの時はシェンとミラが前で向かいがブレイブソードを持ったシエラだったか?懐かしいな。でもあの時から1か月ぐらいしか経ってないんだよな。3人とも大分成長したな。俺は体だけ小っちゃくなったけど。さーて、今回も前回みたいにやってみよう。
俺は前に立ちふさがる3人の隙間から飛び出す。体が小さいから簡単に出来た。というより俺がまた飛び出す可能性も考慮して誰かが俺のほうを向くとかすればよかったのに…。成長したという言葉は撤回するべきか?
「ソーマさん!?」
「マスター!?」
「ソーマ!?」
「もらったぁ!」
ブラフォードさんが剣を振り上げて俺を斬ろうとしたその瞬間、俺からおぞましい程の殺気と威圧と恐怖を煽る霊気が放たれる。3人称で見たら波動のように飛んでいるのが見えるほど濃い霊気だ。
そんな霊気に耐えられるはずもなく、聖騎士や防衛班がバタバタと倒れていく。ユカリとミラたちはなんとか顔面を蒼白にしながらも耐えている。ユウキは…無理でした。
ブラフォードさんと強そうな人も倒れた。今回は加減しなかったから無理だったんだと思う。
俺の放った霊気は一瞬だったが、気絶した者たちに大きな恐怖を植え付けただろう。防衛班にはこの恐怖を乗り越えてもらわなければならない。俺なりの課題だな。
「はぁ…ブラフォードさんは話を聞かないな。これで良く聖騎士長が務まるよ。俺は隣の強そうな人の方が向いてると思うんだけどな」
「…ソ、ソーマさん?な、何をしたんですか?」
後ろを振り返るとミラとシエラが腰を抜かしてペタリと地面に倒れこみ、シェンは泡を吹いて気絶している。そして今になってシェンにあってすぐのころ殺意でシェンを気絶させたのがトラウマになっている事を思い出した。
「あー!シェンごめーん!」
俺はすぐさまシェンの元に駆け寄り、腹にダイブする。体が小さいし、体重も軽いからシェンなら受け止めてくれると信じていた。
「ぐふ!?…マ、マスター…?」
「ごめーん!俺の所為だー!うわーーん!」
俺はまたあのトラウマをシェンに思い出させてしまったことによる申し訳なさで泣いた。俺にはシェンにトラウマを植え付けてしまってから申し訳ない気持ちで枕をしばらく涙で濡らしていた時期があった。数日の間だったが。
「うお!?なぜマスターが泣いておるのじゃ!?」
「うわーーー!」
もう俺はただ泣くことしかできなかった。多分子供の姿だから心まで少し子供になっていたのかもしれない。ブラフォードさんとの対談が面倒くさすぎて疲れていたというのも合わさって今まででないレベルで泣いた。
そんな、シェンに抱きついてただただ泣いている見た目はガキ、中身は15のそこそこいい歳した少年を俺の名付けたスキル“嫉妬”を持つミラとシエラとユカリがじっと見ているはずもない。
「ソーマ様何をしているんですかー!?」
「ソーマさん!?私にも抱きしめてください!」
「…シェンだけずるい」
「な、何故我をそんな目で見るのじゃ!?わ、我は悪くない!」
「うわーー!俺が悪いんだー!本当にごめーんシェン!」
「…よしよし。大丈夫じゃ。心配いらん。我はもう大丈夫じゃ」
シェンが何を思ったのか泣いている俺を大きな胸に押し当てるようにして抱きしめると俺の頭を撫でて慰める。人は泣いているときに慰められるともっと泣いてしまうものなのだ。もちろん俺も例外ではない。
「うう…ぐす…ごめん…ごめんね…?」
「いいのじゃ。気にするでない。その…我も今の状況は悪くないしの」
「わ、私もソーマ様を抱きしめたい!」
「私だって抱きしめたいですよぅ!…さすがにあの胸は無いですけど…」
「…私が1番悲しい」
ユカリが今にも俺をシェンから奪おうとそわそわして、ミラとシエラが自分の胸を見て萎えている。2人の胸は無いわけではない。シエラは…無い。でもミラは一般レベルにはあるだろう。そういう風に俺が設定したんだし。でもこっちに来てシェン、ユカリとすばらしく豊かな胸を見て大きいほうもいいな、と思い始めてきてしまっている自分がいた。
「あの…これってどういう状況ですか?」
「ん?マスターが聖騎士を気絶させて我も気絶してしまったからマスターが抱きついている…という状況じゃ。見て分からんのか?ミラよ」
「いや…分かりますけど…私たち今こんなことしている場合なんでしょうか?」
「まあいいじゃないですか。ミラさんもソーマ様のかわいらしいお姿が見れて幸せでしょ?」
「…むふふー。ですね」
こうしてシェンの胸の中で泣きじゃくる俺とそれを慰めるシェンと、泣くじゃくる俺を幸せそうに眺めるミラとシエラとユカリ。という光景がしばらく続いた。
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聖王国
聖大陸の「聖」の名が聖王国から取られている通り、聖王国は聖大陸の中で1番大きな国だ。聖大陸には合計5つの国がある。だが聖大陸以外の4つの国の面積を合わせても聖大陸の3分の1の面積程にしかならない。それほど大きな国なのだが、聖王国の中にもいくつかの都市があり、1番大きな都市が国王である十王の1王聖王が住む“王都”だ。
王都も含め王大陸の数々の年も魔大陸のアレンのような街並みだ。中世を思わせるレンガ造りの建物に、広めの石造りの大通り。魔と聖だからと言って何か違いがあるわけでもない。ただ1つだけ違うがあるとするならば、王都には王城がある。
王城。それはその名の通り王が暮らす城だ。聖王国の王城は広く、王都の中心に作られている。これは万が一責められても真ん中にあるため、王城に辿りつく前に街のいたるところで時間稼ぎが出来るからである。
王城はリアン連合王国の城よりも大きく、初めての人が何も知らずに入れば間違いなく迷子になるだろう。
そして王城には様々な部屋があり、1階は主にお手伝いや執事たちが暮らす部屋などや食堂。2階には謁見の間がある。そして3階には王家の者達が暮らす部屋に王家専用の食事をする場所。とリアンの城と同じような3階構造になっている。
大きいのは高さではなく横の広さなのだ。おそらく端から端まで直線で走ろうと思えばかなりの時間がかかりそうなくらいには長い。
王都に住んでいる人はほとんどが人間だ。獣人族も奴隷として飼われてはいるが人間の数が多すぎて何割という数字では表せない。
そんな人間の中にももちろん格差があり、貧民からはじまり、平民、貴族、王家という順番だ。
貧民が2番目に少なく、平民が1番多い。貴族にも位わけはあるが大まかに分けても平民の次に多い。とは言っても、平民と貴族の数には大きな差がある。
そして王家が1番少ない。王家は聖王を中心に、血縁者のものだ。王家は代々男が王になり、王はたくさんの嫁を作る。もちろん正室と側室があって、正室は1人だが側室はその代の聖王にもよるが、多い代には数十人といた。
そのため以外にも王家の数が多い代は多い。
「陛下、これで本日の謁見は終わりです。お疲れさまでした」
王城、謁見の間で執事の1人が聖王に報告する。王都では1日に数は決まっているが、抽選で当たった者に国王に謁見出来、自分の要望や意見を述べる事が出来る。
この制度は身分に関係なく参加できるため、実施されたことで貧民の数が激減した。貧民が仕事が無くて生活に困っているので何か仕事は無いか?と聞けば大体用意してもらえるからだ。それでも貧民がいなくならないのはその抽選に当たらないか、減ってもどんどん貧民が増えていっているからである。
「うむ。では次の予定はどうなっている?」
「はっ!次は貴族たちとのお食事になっています。“アレクサンダー聖王陛下”」
アレクサンダー聖王。今の時代の聖王であり、50代ながらも数々のより良い聖王国作りを行ってきた国民想いな聖王だ。
アレクサンダー聖王が王会議に参加できなかったのは国民たちとの謁見やその他多数の執務で精いっぱいだったからだ。アレクサンダーも王会議には出たかったのだが、王会議自体世間には知られていないし、教える必要もない。そのため王家の関係者にバレないように行くのは無理だった。
「そうか…では私は一旦着替えてから向かおう」
「畏まりました。では私はこれで」
「うむ。ご苦労だった」
1人の執事が去っていく。この城には執事が30人はいる。各自担当する仕事が違っているため、アレクサンダー聖王が移動するたびにほとんど執事が入れ替わる。今の執事は謁見担当の執事だ。
「さて…貴族との食事か。どうせ行っても位を上げろと言う内容の話にしかならんだろうに。」
アレクサンダー聖王は行っても結末は見えているのであまり行きたくなかった。
「陛下!失礼します!」
たくさんの宝石が散りばめられた輝かしい玉座から立ち上がろうとしたアレクサンダー聖王はさっきの執事が大声をあげながら戻ってきた。
「ん?何か言い忘れでもあったか?」
「いえ、先ほど謁見抽選時刻に遅れてきたものが陛下との謁見を望んでいるようでして…」
「抽選時刻を過ぎているのなら追い返せばいいのではないか?それとも何か用事があった者か?」
王都は他の都市と若干離れた場所にあるため、他の都市や村からの謁見者では抽選開始時刻に間に合わない者も出てくる。そんな者たちのために謁見時刻が過ぎても多少の人数であれば普段の謁見よりも短い時間ではあるが、謁見できるようになっている。これもアレクサンダー聖王の時代になってから取り入れた方法だ。
アレクサンダー聖王はこういった思いつくが実装しなかった政策や、歴代の聖王は中々取り入れなかった、国民やお手伝い、執事たちの意見も積極的に取り入れる事で歴代最高の支持率を誇っていた。
「おそらく…ですがその者の言っている事がおかしいのです」
「おかしい?」
「はい。「俺は魔大陸のリアン連合王国から来た。陛下からの伝達を預かっているから聖王陛下に謁見願いたい」と。魔大陸に国などないはずなのにです」
「!!」
執事の報告を聞いてアレクサンダー聖王は顔を真っ青にした。
リアン連合王国。聞いた事は無いが、場所で気が付いた。
アレクサンダー聖王が王会議に行けなかったその日の夜。前もって悪魔王からの連絡が合った通り、悪魔が寝室に連絡に来た。
それによると、「魔王と竜王、英雄王、剣王の4王が協力して魔王を中心とする新しい国を魔大陸に作ることが決定された」という内容だった。その時点では詳しい国の名前などは知らなかったし、魔王の作った国だからしばらく関わらないだろう、と思っていたのだ。
(魔大陸で作られた国…それがもし魔王の作った国の者からの謁見だとしたら…)
「分かった。すぐにその者を通せ。だが場所はここではない。客人室だ。それも今までないレベルでもてなせ!」
「…は?お言葉ですが陛下。その者はありもしない国をでっちあげて陛下との謁見を望んでいるのですよ?それを受けられる上に、謁見の間ではなく客人室を使うなど…」
この執事の言っている事は合っている。もしリアン連合王国が嘘ならば謁見に値する正当な理由にはならないし、なおさら客人室という他国の貴族や王が来た時でしか中々使わないような部屋を聖王が使わせる意味がないだろう。もし本当にその国が嘘ならば…。
「つべこべ言うな!いいからさっさと通せ。いいか!その者がどんな者かは私にも知らん!だがな、もし本物だった場合対応次第ではこの国だけでなく、全世界が滅ぶと覚えておけ!」
「は…はい!いますぐ準備してまいります。へ、陛下もご準備の方を!」
「…うむ」
執事は聖王の言っている事を理解できなかったが、今まで見たことが無い程額には汗を浮かべ、慌てている姿を見て、ただ事ではない者が来たのではないか?と察し、すぐに行動を開始した。
しばらくして聖王は客人室で人生で味わったことのない緊張を味わっていた。それは具体的には緊張ではなく恐怖。それも死への。
誰だって突然魔王の手先が謁見に来た、などと言われればそうなるだろう。魔王とはこの世で1番恐ろしい生物。何よりも破壊を好み、理不尽な事で怒り、全てを破壊するまさに破壊の権化。
そんな魔王の手先がこれからアレクサンダー聖王と対面するのだ。少しでも失敗すれば国中、いや世界が滅びる可能性がある。
今、世界の命運はアレクサンダー聖王が握っているといっても過言ではない。…それが歴代の魔王の場合なら。
「連れてきました」
3回ドアをノックされ、謁見担当の執事とは違う執事の声が聞こえた。この執事は客人担当の執事だ。この執事が1番大きな重要を担っている執事で1番役割を果たす回数が少ない執事だ。他の執事の中で“ニート執事”や“居候執事”と呼ばれることもある。だがこの執事をやる者は全員が責任を持って務めてきたし、誰に聞いても誇りになる執事だ。
「い、入れてくれ」
どうしても緊張して体の小刻みな震えが止まらないアレクサンダー聖王。
「失礼する」
そういって入ってきたのは強そうな装備を着た男の人だった。ただし人間ではない。額に2本の角が生えている。竜人族だろう。
「よ、よく来てくれた。特に大したもてなしは出来ないが、どうかゆっくりくつろいで行ってくれ。それと生活上敬語というものは出来ないし習っていないので言葉遣いは良くないが許してほしい。」
「いや、お気持ちはありがたいが、私も陛下を待たせている身。まるべく話を早めに終わらせて帰らなければなりません。言葉遣いの方もお好きにどうぞ」
「そうか。まず座ってくつろいでくれ」
アレクサンダー聖王が男を座らせようとした場所、それは客人室のふかふかの豪華なソファのドアから遠い場所。つまり上座だった。
「…私が上座なのですか?」
「も、もちろん。お客人だからな」
そんなわけはない。客人だからと言って全員が上座ではない。というよりアレクサンダーは下座に座ったのは初めてだ。ここに来る客人は大抵他国の貴族か国王、それかSランクの中でも長い経歴をもつエリート冒険者ぐらいだ。そんな者達も冒険者は当然ながら、他国の貴族や国王たちも聖王国の力の強さから自分から下座に座りたがる。そのためアレクサンダーは下座に座ったことが無い。
「あの…陛下…そこは下座です」
「……分かっておる。それほど重要なご客人なのだ。だから最高級にもてなしてくれ。…頼んだ」
「…はっ」
執事とアレクサンダー聖王は男に聞こえない程の小言で話し合うと、執事はもてなく準備をするために部屋から出て行った。これでドアの脇に立っている警護兵以外アレクサンダー聖王と男しかいない。
「済まん。お前らも出て行ってくれ。私はこのお方と2人で話したい」
「で、ですが陛下。その者は武装をしています。陛下の身にもし何かあったら…」
「頼む」
「…わ、分かりました」
警護兵は見てしまった。振り向いたアレクサンダー聖王がかつて見たことのない冷や汗をかきながら必死の頼むその目を。
その目に押された警護兵は渋々部屋から出ていく。
「すまない…だが2人の方があなたも良いだろう」
「ありがとうございます。ではまず自己紹介から。私の名前はカルロス。リアン連合王国防衛班班長を務めさせていただいています」
「私は聖王国聖王アレクサンダーです。…防衛班とは?」
アレクサンダー聖王はカルロスに説明を求める。連合王国と言うのは分かる。複数の王が集まっている国だろう。防衛班と言うのが分からなかった。
「そうでしたね。防衛班と言うのは要するにリアンを守る部隊の事です。まあそちらの聖騎士…とは少し違いますか。聖騎士は確かあなたを守ったりあなたの命令で動く部隊でしたね?」
「そうだ。と言う事はそちらには国王直属の兵隊はいないのか?」
国には2種類の兵隊がある。1つ目が防衛班の様な国を守る部隊。そして2つ目が聖騎士の様な国王を守ったり、国王の命令に従う部隊だ。
「はい、おそらく陛下はまだそのような部隊は作られていないかと…と言うよりも作る気が無いみたいです」
カルロスの言う通りソーマには自分のための兵士隊を作るつもりはなかった。どう考えても誰かに守ってもらうより自分自身で守ったほうがいいからだ。そしてソーマのために働く兵士をほかの場所で働かせるほうが役に立つ。これはソーマだけでなくアレンの政府関係者全員も同じことを思っているのでソーマ専属の兵士隊は実装されないのだ。
「そうか…あ、それと事後報告で申し訳ないが魔王の復活がないかをを監視するために聖騎士隊をそちらの付近に送っていた。だが1年も音沙汰がなかったので退却させていたところだ」
「…その件に関してです」
急にカルロスの雰囲気が一変した。今までの和やかな雰囲気から真面目な雰囲気に変わった。アレクサンダーも思わず驚いたが、すぐに落ち着き真面目になる。
「…というのは?」
「そちら側の聖騎士がこちらを監視していたのを昨日うちの防衛班のメンバーが発見しました。もちろんこちらからは何もする予定はありませんでした。ですが今日突然聖騎士が全員かどうかは分かりませんが100人を超える人数で来ました」
「!?」
アレクサンダーの体から一気に血の気が引いていく。そんな報告は聞いていなかった。そもそも連絡したとしても海を経由してくるので連絡が来るまで1か月はかかるはずだ。
「最初は普通に謁見し、国民を何を勘違いしたのか捕虜だと言い張り、解放しろとの要件でした。詳しい話は謁見の間ですると説明し、連れて行くと陛下の事を「糞ガキ」だの言いたい放題。ここら辺から空気が悪くなりました。
そして騎士長のブラフォードが陛下の仰った事実を嘘だと勝手に決めつけ陛下を殺そうとしてきました。その時点で私は陛下の命令でこちらに向かうように言われたのでどうなったかはわかりません。もちろん止めたでしょうが、こちらは報復する用意は出来ているようですし、もし陛下の逆鱗に触れていた場合、聖騎士たちの命は保証できません」
「…」
アレクサンダー聖王は出来る事ならば意識を失ってでも現実放棄したかった。いくら自分が指示していなく、聖騎士たちが勝手にやったとはいえ全ては自らの責任だ。よりにもよって相手が世界最恐の存在、魔王だ。アレクサンダー聖王は自らの命だけで済むのなら済ませたい気持ちでいっぱいだった。
「何をそんなに落ち込んでいるんですか?いや、絶望しているのですか?」
「…すべては聖騎士の管理がうまくできなかった私の責任だ。私だけの命で許してもらえるとは毛頭思っていないが、それでも何とか頼む!」
アレクサンダーは頭をソファの間のテーブルにぶつけながら頼む。言い方は悪いが、自分の命だけで許してもらえるのならリーズナブルな魔王だな、と思いながら。
だがカルロスは頭を傾げていた。
「私の命?何を言っているんですか?あなたの命なんて陛下は望んでいませんよ?」
「で、では誰の命なのだ!?」
「落ち着いて下さい。言葉が足りませんでしたね。おそらく陛下は誰の命も望まれていません。お?…ちょっと失礼」
そう言うとカルロスは目を閉じて黙った。それほど長くはなかったが、この間がアレクサンダー聖王にとって1番辛かっただろう。
「…ふぅ」
「ど…どうしたのだ?」
「今陛下から連絡がありました。色々と終わったので今からこちらに向かうそうです」
「は!?ま、魔王が…聖王国に…?まさか…滅ぼしに来るのか…?」
「分かりませんがそれはないでしょう。話し方も普通でしたので」
「話し方?カルロス殿はどうやって魔王と連絡を?」
(陛下!)
アレクサンダーはどうやってカルロスが魔王と連絡をとったのか気になったところでおそらく扉の向こう側で待機していただろう護衛兵から声がかかる。
「す…すまない」
「どうぞお気になさらず」
「どうした!今ご客人との会話中だぞ!?」
(す、すみません。ですが城に子供が迷い込んでいたもので!)
「子供…?」
「もしや!」
カルロスは扉を開けて外に出る。そしてまだ6才程の幼い少年を見つけた。その少年にカルロスは見覚えがあった。いや、見覚えどころではない。それはカルロスが忠誠を誓うべき相手だったのだから。
「だから…俺は子供じゃないの」
「何を言っている!どう見ても子供だろうが」
「陛下!」
「ん?…おお!カルロスか!」
そう、ソーマであった。




