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第41話 聖騎士の侵攻

「今回の意見をまとめると、聖騎士はここが国ではなく魔王の拠点だと認識していて、陛下が国民を捕虜として取っていると。それで陛下との対談と捕虜の解放を求めているという事…ですね」


 オニマルが俺の事を陛下と言っているのもけじめであり、敬語になれていないから語尾が詰まったりしている。普通に喋ってもいいと思うのだが、オニマルなりの努力なので何も言わない。


「そうだな…とりあえず対談はしよう。というか謁見になるだろうがな。今から阻害結界を解くから聖騎士を連れてきてくれ。あまり大人数でこられても困るが、もし余った人数で街を壊されでもしたら厄介だから全員連れてきてくれ!そうだな…向かいに行くのは…オニマルとマサムネ、頼めるか?」

「任せてく…ださい!」

「了解し…ました」


 2人がぎこちない敬語で返しながらも俺に一礼してから謁見の間から出て行こうとするが、その前に1つだけ伝えなくてはいけない事があるので止める。


「待ってくれ。1つだけ伝えておく。もし仮に向こうが2人に手を出しても、こちらからは反撃しないでくれ。傷を受けても死ななければ俺が治そう。すまない」

「分かりました」

「了解です」


 2人が謁見の間から出ていく。俺が背筋を伸ばしていたのを和らげて玉座の背もたれによしかかって楽にすると、残りの4神やミラ達も少しだけ楽な体制になる。防衛班はずっと直立不動の姿勢のままで立っているので楽に休むように指示すると少しだけ力を抜いてくれた。


「ふぅ…毎回何かあるたびにこんな空気になってたら耐えられないよ…」

「我慢してくださいソーマさん。私は慣れていますが、時間が経てばいずれなれます」


 玉座の横で黙って立っていたミラが俺に声を慰めてくれる。ミラとシェンとシエラは俺と同じ国王なのだが、3人の希望で玉座ではなく玉座に座る俺の横に立っていたいと言われたのでこうなった。


「あれ?もしかしたらこの姿だと魔王としても国王としてもなめられるかな?」

「どうじゃろうな?その姿の方が案外親しみやすいかもしれんぞ?」


 ここにいるみんなは普通に話しかけてくるが、今の俺は小学生に入学したての頃の姿だ。この姿の方が全員(特にミラ達やユカリ、メイド班の女性陣)から可愛いと評判が良いのだが、もしかしたら聖騎士になめられる可能性があるかもしれない。


 ちなみに服装はいつも着ている普段着や竜の鎧ではなく、王様の様な宝石などがついている豪華な服だ。これもけじめらしい。本来の姿用しか作っていなかったのだが、この姿で過ごすなら、とこのサイズでも作った。どこかの貴族の坊ちゃまが着ると似合うだろうが俺は宝石やらが重くて肩が痛い。


「親しみやすいとかの問題じゃない気がする」

「…ソーマはこっちの姿の方が可愛い」

「だから俺を持ち上げるな!」


 シエラがサイズの合わない玉座に座っている俺を軽々と持ち上げる。多分この姿に合った年齢ならまだ嫌ではなかったのだろうが、15の俺はあまり好きじゃない。子供扱いではないと分かっていてもだ。


 クランルームに避難している国民にはメイド班や内政班も一緒に避難させている。国民の心配を少しでも軽減させるようにメイド班にも訓練させる機会だ。内政班も今のうちに国民1人1人の特徴や性格を把握するいい機会になるだろう。ルーカス達もクランルームで避難させた。


 俺がシエラに持ち上げられているとシェンとミラも羨ましがるような目でシエラを見ていたが、どうやら聖騎士たちが来たようだ。


「ほら、来たみたいだから降ろしてくれ」

「むう…仕方がない。帰ったらまたやる」

「勘弁してくれ。さてと…オニマル達にも言ったけど聖騎士が何を言っても絶対に手を出すな。心の中で怒りを燃やしても構わん。だが向こうから手を出されない限りはこっちからは出すな。いいな!」

「「「はっ!!」」」


 シエラが文句を言いながら俺を玉座に戻してくれる。俺が服装と座り方を整えると他のみんなも気持ちを入れ替える。


「陛下、聖騎士たちが来たようです」

「入っていいよ」


 指示を出すと、ゆっくりと謁見の間の扉が開く。そして扉の向こうにはオニマルとマサムネ、そして白と金を基調に作られた鎧を着た大勢の騎士が立っていた。これが聖王国の聖騎士か。


 オニマル達が玉座に向かって歩みを進めると、聖騎士たちも緊張した表情で後をついていく。


「陛下、連れてきました」

「お疲れさま。下がっていいよ」


 オニマル達を脇に下がらせる。多分1番先頭にいる人がリーダーみたいな人だろう。明らかに装備が豪華だ。それとその隣の人も強そうだ。強そうといってもうちの非戦闘員であるメイド班の1番弱い人より弱いと思うけど。


「えっと…この中でトップの人は誰かな?」

「俺だ。その…玉座にいるお前が魔王…か?」


 1番先頭の人が俺の質問に答える。やはりこの人がリーダーのようだ。


 それにしても…いくら俺の事を国王ではなく魔王として認識しているとはいえ、周りの状況で少しは態度を改めようとは気づかないのかな?俺はそういう話し方でも態度でもいいんだけどさ?ちょっと防衛班と4神がお怒りなんだよね。特にユカリがさ、今にも飛び出さんばかりの感じになってるんだよ。腕がプルプル震えてる。顔も怒ってる。知らないからな?ユカリは魔法使いなのに力に関しては化け物なんだから…。


「俺の名前はソーマ。あなたは?」

「俺は聖王国聖騎士団、団長兼騎士長のブラフォードだ」

「ブラフォードさんか。えっとここには何をしに?」

「その前に貴様が魔王で会ってるか?」


 質問を質問で返された事に別に腹を立てるほど短気ではないが、魔王に対して強気だな…と俺は思った。そしてユカリがもう限界だ。勘弁してくれ。


「そうだけど…」

「では話が早い。単刀直入に言う、我々の要件は2つ。1つ目は何故貴様の様な糞ガキが魔王なのだ?それとここにであろう捕虜を解放しろ!昨日までここにいたのは分かっている!どこに隠した!」

「貴様ー!!」


 ただでさえここにいる全員が気に入っている俺の姿を「糞ガキ」と馬鹿にしたのだ。全員から威圧が放たれている。そしてユカリが俺への侮辱を許せるはずもなく、ブラフォードに向かって殴りかかろうとしている。ブラフォードでは反応できない速度だ。


「ユカリ!」


 俺はブラフォードにユカリの拳が当たる前に威圧を含ませた声で叫ぶ。ユカリは急ブレーキをかけて立ち止まる。俺の威圧は思いのほか効いたようだ。今までに見たことのないレベルでひどく怯えている。少しやりすぎたかもしれない。


 ユカリは少しずつ元の位置に戻っていく。そして聖騎士たちが何をされたか分からないまま何名か意識を失い、その場に倒れる。


「い、今…何をした…」

「すみません…うちの者が少しブラフォードさんの言葉遣いが気に触れたようで…攻撃をしようとしていたので威圧を言葉に含めて制止しました。そちらも俺を魔王だと認識しているなら少しは言葉に気を付けてください。俺は構いませんが、周りが許してくれないので」


 ユカリが行動を引き起こした事によって場の雰囲気は悪くなった。聖騎士の何人かが倒れたことで明らかに俺に敵意を向けている。これは対談どころじゃないな。さっさと要件を済ませよう。


「気絶させてしまったのは計算外でしたが…死んでいないですし、5分もあれば意識を戻すはずです。ブラフォードさんの要望に答えましょう。1つ目の何故俺がこんな姿なのかと言う事に関しては特に言う必要はありません。というよりあなた方は何か大きな勘違いをしてませんか?」

「…何が…だ?」

「聖騎士は聖王の直属の兵士なのでしょう?なぜここにいるのかは知りませんがきちんと聖王に連絡して許可や命令を受けてからここに来ましたか?」

「貴様にそれが何の関係がある」

「もし聖王に連絡していたなら聖王から魔王が新しい国を作ったと言う事を聞いていたはずなのですが…」


 どうやら魔王に使う敬語はないらしい。俺は別にどうでもいいのだが。


 俺の言葉で聖騎士たちがざわめきだす。魔王が国を作ったという事で騒いでいる騎士もいれば、聖王にきちんと判断を聞いてから来ればよかったと騒ぐ騎士もいる。


 やはり聖王に許可を得ず、更にここが国だとも知らないまま聖騎士たちは来たと言う事で確定だった。


「…ここが魔王の国だというのか?」


 ブラフォードさんは慌てふためいている。騎士長なのだから今回の責任は全てブラフォードさんが負う事になるだろう。辞任だけでは済まないかもしれない。死刑も十分にありえるだろう。


「はい、ここはリアン連合王国。魔王が中心になって最近出来た魔大陸初めての国です。ちなみにあなた方が言っていた捕虜というのはおそらくうちの国民です。アレンで奴隷市場で売られていたところを俺が買い、解放した人たちです。無理に住まわせているわけでも束縛しているわけでもありません。お互いの了承のうえです」


 ブラフォードさんは顔を真っ青にして震えていた。



 ブラフォードは頭を必死に回転させて考える。


(魔王が国を作った…だと?そんな事があり得るのか?それに合意の上で魔王の国に住むやつがいるのか?どうする?やはり聖王に連絡してから動くべきだったのか?今回の責任は俺がとらねばならない。どうせ聖騎士を辞めるのか確実だ。ならば…)


「全聖騎士に告ぐ!今この場で魔王を討伐せよ!」

「「「「!?」」」」


 ブラフォードは謁見の間で大声で叫ぶ。自分でも何を言っているか分からない。ここには標的に魔王だけではなく、多くの敵がいる。しかもほぼ全方位にだ。逃げ場などない。もし仮に魔王を運よく討伐できても他の敵に殺されて終わりだ。それに魔王の威圧で聖騎士の何人かは気絶している。


「ブラフォード、本気か?」


エリックがブラフォードに問う。エリックは最強の聖騎士としても副聖騎士長としても仲間の聖騎士をなるべく無事に聖王国に返さなければならない。それは騎士長であるブラフォードも理解しているだろう。だが今の現状では突撃しても無駄死にするだけだ。もしかしたら魔王の元へたどり着く前に殺されるかもしれない。エリックとしては今のブラフォードの命令には従いたくなかった。


「ああ、本気だ。どうせこのまま何事もなく聖王国に帰ったら聖騎士を辞めさせられるのは間違いない。もしかすれば死刑かもしれない。それならば今ここで聖騎士として魔王に挑み、勇敢に死にたい」


 ブラフォードは本気だった。長年一緒にやってきたエリックだからわかる。ブラフォードの目が本気だからだ。


「分かった。俺もお前に乗ろう。このままお前だけ死なせるわけには行かないからな!」

「あのー…何勝手に死ぬ気でいるんですかね?」


 エリックとブラフォードだけでなく、他の聖騎士も少しずつ覚悟を決める中でソーマから呆れた声が飛んでくる。


「これから貴様を殺し、出来るのならば貴様の周りの奴も殺す。そしてこの国の終わりと共に俺らも(あははは!)…何が面白い!」


 ブラフォードの言葉にソーマが笑い転げる。周りを見ればミラ達だけでなくさっきまで一触即発の殺気を放っていた防衛班も笑いを堪えている。


「いや…その勇気はすごい良いんですけど、どうやって俺に勝つつもりでいるのか気になったので。あ、もしかして聖剣とかいります?」

「は?聖剣だと?」

「はい、ここで1年前の戦争で勇者が死んだので聖剣はこちらが持ってます。勇者じゃ無ければ全ての力は出ませんけどある程度は強くなるんじゃないですかね?」

「フン!貴様の力などなくても俺たちだけで殺せるわ!」

「分かったよ。じゃあここでやるとここが汚れるから外でやろう。〈集団転移〉」


 ソーマが魔法を唱えると謁見の間にいた全員が城壁の外の草原に転移した。



 俺はどうしても笑いを堪える事が出来なかった。いやだって無理でしょ?強い人ならあの威圧で何となくの自分との戦力差を感じ取れるはずなんだけどな…ブラフォードさんの隣の強そうな人は気づいていたみたいなんだけどな…。


 それと俺は既に手は打った。〈集団転移〉を使う前にカルロスに「お前だけ竜の島に送るからその後竜化して今あったことを聖王国に行って聖王に伝えてきて」と命令を出しておいた。


 防衛班の班長と副班長、メイド班のメイド長には念話専用の指輪を渡した。内政班の班長はオニマルらしいのでもうすでに渡してある。


 〈集団転移〉を使った後に特に動けなくなるとか意識を失うと言う事はなさそうだった。やはり前回の昏睡状態は精神的なもののようだ。


 聖騎士の人達はいきなり場所が変わったことで驚いている。俺ら全員は1度は転移を体験しているから驚きもしない。


「俺の魔法で場所を移した。そこに城があるので遠くに行っていない事は分かると思う。ここでやろう」


 完全に敵対すると分かったのなら敬語を使う必要もない。


「ソーマさん良かったんですか?もう少し平和的に解決する方法があったんじゃないですか?」


 ミラが不安そうに尋ねてくる。ミラの言う通り最初の方にユカリが暴走しなければ平和的に解決できたかもしれない。


「それはユカリに言ってくれ。ユカリが暴走したおかげだ」

「それはそうですけど…聖騎士さんがかわいそうです」


 多分ミラは聖騎士が俺にボコボコにされることを心配しているのだろう。俺と聖騎士との差は大きすぎる。今は子供の状態だからリミッターを付けていないというのもあるだろう。というよりリミッターを付けても慣れたらただのブレスレットと変わらないからみんなリミッターはつけていない。


 数日おきに慣れたからと言って重さを調節するのは結構疲れるのだ。


「かわいそうって…まあ否定はしない。だから俺は安全かつ平和的に解決するさ。向こうの何人かは女性だからな。女性に手は出さないのが俺のモットーだからな」

「何を話している!ここなら心置きなく戦えるんだろう?行くぞ!」

「まあ待て」


 少し上から目線で話す。もうこいつらの戯言に付き合うのは疲れた。全てを話そう。


 こうして俺の“言葉”での聖騎士との戦いが始まった。

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