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第38話 狂気

「「キャーーソーマ様ー!」」


 城に帰った俺を待ち構えていたのはどこで知ったのかは知らないがメイド服に身を包んんだ総勢90名の角を生やした竜人のメイド班だった。


 その90人ものメイドがユカリに肩車されている俺を奪い取ろうと壮絶な戦いを繰り広げていた。その姿は新春の福袋に群がる主婦のよう。


「やめろ!ソーマ様は私のだ!」


 ユカリが全力で俺をメイドから守っている(俺をずっと肩車していたいからだろう。)が、さすがに1体90の数の暴力には勝てない。


「「「あ…」」」

「あ…」


 俺は1人のメイドに飛ばされてユカリの肩から離れて空を舞い、メイドたちとユカリの群がっていないところに落ちた。


「…痛てぇ…」

「大丈夫ですか!?ソーマ様!」


 ユカリが駆けつけてくる。そしてユカリがメイド班を睨むと、メイド班は怯えてしまった。


「貴様ら!ソーマ様になんてことをするんだ!ソーマ様を奪い取るつもりか!」

「いえ…私たちは…ただソーマ様のかわいらしいお姿をこの目に収めておきたいな…と思っただけでございます。そんな奪い取ろうとはしておりません!」

「このメイド班にはメイド長はいるのか?」


 ユカリとメイドたちの口論を気にも留めない俺はメイド長がいるなら挨拶をしておきたいな、と思ったので探してみる。


「はい!私が一応メイド長なるものに就かせていただいております!“エオラ”と申します!」


 どうやらメイド長はユカリと張り合っていた人らしい。光のエレメンタルドラゴンなんだと。大体偉い職はエレメンタルドラゴンがやるみたいだな。


「そうなのか…よろしく頼むエオラ」

「はい!家事の事ならば私らメイド班に何でもお任せください!」

「分かった」

「ソーマ様どこに行くんですか?」


 俺が立ち上がって歩こうとするとユカリに止められた。それも馬鹿力で。


「離してくれ…これから先は俺とお前は一緒に行けない」

「トイレですか?それともお風呂ですか?どっちでもご一緒します!」


 すみません…トイレだけは勘弁してください。いくら子供の姿でも見られてはいけないところがあるので…はい…。そこを見られたらお婿に行けません。


「風呂だよ!」


 俺はユカリの腕を振り払うと全力で風呂場まで走る。


「あ!ソーマ様!」

「私たちも追います!」

「「はい!」」


 俺の後をユカリとエオラが追い、その後ろをメイド班が追うという捕まったらかなりまずい鬼ごっこが始まった。


「やめろー!くるなー!」


 子供の姿だからじりじりとユカリたちとの差が縮まっていく。やばい!捕まったら俺は多分そのまま風呂に直行させられて脱がされる。それだけはご勘弁を。


「フフフ…そろそろ追いつきますよ?」

「うわーー!くるなーーー!」


 もして曲がり角を曲った瞬間〈ワープ〉でメイド班の1番後ろに転移して止まる。そしてそのままこっそりと逃げようとしたら…いた…ミラ達3人が。


「あれ?ソーマさんじゃないですか。どうし…ふぐ!?」

「静かにしてくれ!今俺は命の危機にさらされてる。とりあえず転移するぞ」


 俺は3人の体に触れ、俺の部屋に転移する。部屋に転移するととりあえずベッドにダイブした。もう疲れた。


「どうしたんじゃ?マスターが命の危機を感じるなどそうそうない事じゃぞ?」

「…ソーマどうしたの?」

「済まん。今ユカリとメイド班のフルメンバーに追われてた」

「…何でですか?」


 女性だという所でミラ達目から光が消え、嫉妬が発動する。もうマジで面倒くさい。


「だから嫉妬を発動するな。俺が風呂に行こうと思ったら全員がご一緒しますみたいなノリになって追われてたんだよ」

「それはまずいですね!ソーマさんの裸は誰にでも見られていいものではないです!」

「そうじゃな!」

「…ソーマの裸は私たちのもの」


 何かシエラの言い方が非常にまずい様に感じたのは気のせいだろう。ははは…きっと疲れてるんだよ。そういう事にしておこう。うん、それがいい。


「それで、マスターは我らに何をしてほしいんじゃ?我らと一緒に風呂に入ればいいのか?」

「違うわ!俺が風呂に入っている間俺が風呂にいないように嘘をついて寄せ付けないようにしてほしい」

「…そんな事お安い御用。でも私たちとお風呂に入らないの?」

「たまには1人でゆっくり入りたい」


 いっつも誰かと一緒に入っているから1人で入ったことが無い。今日は内政班は国民と色々してるらしいし、防衛班もオニマル達と訓練してるから後はメイド班を何とかするだけだ。「瞬光」のメンバーは冒険者をやりにだとかクランの仕事とかでアレンに帰ったらしい。


「承知した。ではゆっくりと風呂に入るといい」

「任せた。俺の命運は3人に託す」


 俺は男湯の脱衣所に転移する。もしいたらどうしようかと思ったがいなかった。そして服を脱ぎ、カゴに入れ、扉を開けて風呂場に入る。


「…1人で風呂に入るのも久々だな」


 まずは普通の風呂でゆっくりする。温度は40度前後と誰でも入りやすい温度になっている。


「はあ…極楽極楽…」


 おじいちゃんみたいなセリフを吐きながらしばらく湯に浸かっていると、脱衣所から声が聞こえた。…それも女声の。


「なんでだ?女湯はここじゃないだろ!?」


 とりあえず脱衣所からの扉の四角になる柱に隠れる。


「ソーマ様?いますかー?」


 この声はユカリだ。まずい!なんて執念深さだ。幸いカゴに入れた服は誰かに見つからないような俺専用の場所に隠してあるのでバレはしない。


 入って来るのではないか、と悪い意味でドキドキしながら待つが、入ってくる気配が無い。


「いないみたいですね」

「そうですねー。せっかくソーマ様と一緒に入れると思ったのに」

「いないのなら諦めましょう」


 そのままユカリとメイド班が帰る雰囲気になっていたその時、俺は裏切られた。


「マスターだったら風呂に入ってるぞ?」

「あ、シェンさん。…本当ですか?」

「ああ、さっき風呂に入ってくるからと言われたぞ」


 あいつー!裏切りやがった。まじか!俺が一番信頼してたのに!多分声的にミラとシエラもいるな!俺は嵌められたのか…。もうダメだ。この中に信頼できる女性はいない。全員俺の敵だー!


 女性陣がそれはもう素早く着替えを終わらせて風呂場に入ってくる。死角に隠れてるからバレ無いが、94人もの敵がこの風呂場にいるのだ。バレるのは時間の問題だ。


「マスター、いい加減出てきたらどうだ?」

「…お前裏切ったな?」


 柱の裏で決して柱から顔を出さないでシェンと会話をする。多分俺は柱の陰からでも顔を出した時には大量の神秘に覆われて死ぬ。


「裏切った?それは違うぞマスター。我は1人の女としてユカリたちの作戦に乗っただけじゃ」

「私もです」

「…私も」

「さあソーマ様?諦めて一緒に風呂に入りましょう?」


 …もうダメだ。こいつら危ない宗教並みに頭がヤバイ。俺の裸が見たいがために信頼を捨ててまで来るなんて。もう死にたい。


「分かった…俺は考えを改めたよ」


 柱から顔だけをヒョコっと覗かせる。もう女性の裸がどうのこうの言っていられない。まわりから「キャーソーマ様ー!」とか叫び声が風呂中に響き渡る。一応全員が大事なところは隠しているので安心…ではない。俺の方が安心ではない。俺は何も隠すものが無い。この柱から出たらおしまいだ。そしてそれは絶対に起こさせない。


「やっと私たちとお風呂に入る決心をされたのですね?ソーマ様」

「いや、俺はお前らとは風呂には入らない。済まないが俺はしばらく自分を闇に染めるとするよ。じゃあな」


 何となく厨二病のセリフを言って、〈ワープ〉で転移する。場所は城の1番上、俺たちの自室がある3階よりもさらに上、転移が無いと絶対に入ることの出来ない封印されし暗黒の空間。まあ屋根裏部屋だ。


 この屋根裏部屋には本当に入り口が無い。俺の設計ミスとかじゃなくてわざとそうした。そして窓もないから真っ暗だが、拷問部屋じゃない。灯りはランタンが1つ。暗いと何も見えないからとりあえずつける。


 ランタンを付けるとそこには広い空間が広がっていた。ベッドも天盤付きではなく普通のベッドがあるし、そして勉強机に何も入っていない本棚。そう、ここは俺の前世での俺自身の部屋だ。


「こんな事態に使うための用意したんじゃないんだよな…」


 ここは城を作ってすぐに用意した部屋だ。別に寂しくなったからとか何か用途があって作った訳じゃない。ただ1つの俺の記憶として思い出ではなく、形に残しておきたかった。


 ベッドに座りながらずっと裸だったのを思い出し、指輪からタオルと服を取り出して着る。


(マスター?マスター、返事してくれ!)


 シェンから指輪を使って俺に念話をかけている。でも反応しない。もう疲れたから指輪をはずして念話の通信を拒絶する。


「何だろうな…俺も頭を冷やすか…。その前に…」


 もう1回指輪を付けて、ずっと来るシェンとミラとシエラの通信を無視しながらオニマルに連絡する。


(オニマル?いるか?)

(ソーマ様か?どうした?)

(俺は今この城の女性陣と対立している。理由は…あれだ。男の大事なところを見られかけた)

(あー…そいつは俺でも怒るわ)

(それでだな?多分みんな悪気があった訳じゃないと思うんだ。悪乗りだろう。でもだからと言って俺は簡単に許すつもりはない)

(そうだな)

(だからお前ら男陣に女性陣がおかしな行動をしていたら止めてあげて欲しい。ユカリの時みたいな時や、それこそ自殺しようなんて事は絶対にさせないでくれ)


 いつでもそうだったが俺はいるだけで迷惑なんだ。元々この世界に居るはずじゃないのだから当たり前なんだ。俺がいないだけで世界は安全なのかもしれない。


(わぁったよ。俺ら全員で女性陣を監視しておく。それでソーマ様はどうするつもりだ?)

(俺はしばらく誰にも介入されない場所で頭を冷やす。指輪も外すから念話も答えられない。済まない。迷惑ばっかりかける)

(ソーマ様が人に迷惑をかけてばっかりなのは知ってるよ。そんじゃあな)

(ああ、また会おう)


 念話を切り、今度こそ本当に指輪を外す。そして精神を集中させてルシファーを呼ぶ。


「やあ、今回もまずい状況だね?」

「見てただろ?あの女性陣の狂気ぶり」

「見てたさ。酷かったね。あんなハーレムは恐ろしいね」

「だろ?俺だってこういう行動はとりたくなかったさ」

「でも頭を冷やす時間は確かに必要だね」

「ああ、どうしたらいい?」

「まあ君の言う通り頭を冷やせばいいんじゃないかな?」

「そうするよ。じゃあ切るな」

「うんじゃあね」


 俺はルシファーとのリンクを切断する。そして勉強机に移動する。そして勉強机の電気をつけるボタンを押す。すると机の面部分に映像が映し出される。ここには液晶を埋め込んである。


 そしてそれにはバレ無い程の小型の監視カメラを城中に仕込んであるものの映像が複数表示される。さすがに風呂やトイレのは無いです。監視カメラによると女性陣は俺が転移した後風呂から出て、謁見の間で何やら言い争っている。


 内容的にはユカリとメイド班が「あの時なぜ悪乗りしたのかを責める側で」、ミラ達が「あの時なぜ悪乗りしたのかを責められる側」に回って言い争っているみたいだ。どうでもいい。両方悪いからな。


「さて…俺は夜に備えて準備しますかね」


 俺は夜に向けて着々と準備を進めた。



「暗くなったな」

 

 夜になったので屋根裏…違う。何だっけ?闇の混沌の暗黒の部屋?まあいいや。屋根裏部屋から城の外に転移する。


 国民には迷惑をかけた謝罪をした後に「夜に少しお詫びも含めた催し物をするので風邪をひかないように暖かい服を着て外に出てきてもらえると嬉しいです。」と言っておいてある。


 夜にやる催し物といったらあれしかない。そうたーまやーの奴だ。まあ花火だけどね。手持ちのとかじゃなくて打ち上げの奴だ。


 指輪から花火を取り出して色々と準備する。あの市販で売っているのを再現した。プロの職人さんが作った丸い奴は無理でした。


 指輪をつけてもシェン達から念話は無かったので諦めたんだろう。そしてオニマルに「夜楽しいことやるから城のみんなを頑張って外に連れ出して。なるべく2階のテラスが良いかな。」と連絡してあるから今頃外で何があるのかと待機しているだろう。


 俺の姿を見てもらうために防壁の上に登ってライトを照らす。結構国民が出てきてくれて、歓声を上げてくれた。


 自作で作った拡音機を手に、挨拶をする。


「あーあー。えーっと、みなさん今回は寒い中集まってもらってありがとうございます。つい最近まで昏睡状態で寝たままになっていて、みなさんに多大なる迷惑をかけたことを改めて謝罪します。済みませんでした」


 こういう時は20秒から30秒くらい頭を下げるといいらしい。


「それで、今回も謝罪の意味も込めて、俺の方から少し面白いものを見てもらおうと思ったので集まってもらってます」


 そして国民には分からにと思うけど城の方を向いてこっちからは見えないけどいるであろう女性陣に向けて話す。


「えっとー、ミラ達とメイド班、そしてユカリには色々と済まなかった。あの時は怒ってたんじゃなくて只々怖かっただけです。まあそういったお詫びも今回含めて時間を取ってます」


 俺の気持ちは伝わったかな?さすがにあのやばい宗教みたいなのは怖かった。


「さて…前置きはこの辺にして、そろそろ始めます。みなさん上空にご注目!」


 防壁から降りて、草原に設置した大量の打ち上げ花火に火を付けて行く。距離が近すぎると綺麗に見えないので少し離したところでやる。


――ドーン!ドーン!


 大きな音と共に円形の花火が空に映る。花火はどこから見ても丸に見えるのは本当みたいだ。下からでも結構綺麗だ。


 次から次へと花火に火を付けて行く。多分合計で1000連はあるだろう。火をつけるのに夢中であまり花火を見る時間は無いのでただ花火が鳴る音と明かりしか分からないけどちゃんと打ちあがっているみたいだ。


 花火も1種類ではなくたくさんの種類を用意した。一般的な丸い「菊」や、たくさんの線がいろんな方向に走るように見える「椰子の木」などだろうか?俺もあんまり種類は知らないから名前を知っているのはそんなところだけど他にも変なのとかもある。全部綺麗なのは間違いない。


 クライマックスに近づくにつれて花火の打ち上がる量は増えていく。最後は一気に打ちあがり、1番大きな花火が上がった後に線を引くようにして火の粉が落下していく。


 俺の夏が終わった。

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