第35話 俺たちの国
シェンとシエラと7天竜は家を出てすぐのところにいた。何やらシェンが俺らと会ってからの話を赤以外の7天竜にもしてたみたいだ。
「おーい、2人とも。そろそろこの島から帰る時間だぞ」
「おおマスター。今ちょうどマスターたちと会ってからの話を青たちにも聞かせていたところだ」
“青”というのは7つの魔法元素の中でも水属性の適性が強いため鱗が青色の7天竜だ。青は大人しい性格であまりしゃべらない。
他にも風の7天竜の“碧”や、土の7天竜の“茶2、雷の7天竜の“黄”、闇の7天竜の“黒”に光の7天竜の“白”のように色で呼ばれているらしい。
話したことが無いのでどの7天竜が男でどの7天竜が女なのかは分からないが別に知りたいことでもないので聞くつもりはない。
話を聞かせてたって事は赤に話したことを話したのか。
「そうか。でも島から出る時間だから切りのいいところで帰るぞ。みんなを連れ帰ってから忙しくなるからな」
「承知した。それでは我らはもう帰らなければならん。ここの管理は7天竜に任せた」
(((((((は!お任せください)))))))
7天竜のピッタリ合った声が頭の中に響いた。
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「これで全員かな?」
「はい、一応確認はとってますけど多分全員です」
俺の質問にミラが息を切らしながら答える。
ミラは走ってまで呼びかけをしていたらしい。そんなに頑張らなくても時間はあっただろうに。
俺たちは昨日のように草原の岩の上に登っていて、竜人たちは草原に整列させている。整列させた方が誰も見ないけど見た目が綺麗だし、何人いるかも数えやすい。ちょうど縦が30人で横が10列だからきちんと300人いるみたいだ。
「よーし全員いるな。これからみんなを国に案内する。だが俺たちの国には昨日まで国名が無かった。だから俺たち4人の国王は昨日のうちに話し合って国名を決めた!」
今までずっと忙しくて1番大事な国名を決める時間がなかなか取れなかった。でも昨日は久々に移動式住居に集まる時間が取れたのでそこで決めたのだ。国名は既にオニマル達に連絡が行ってるし、オニマル達に情報伝達を国民たちにもしっかりするように言ってあるので大丈夫だと思う。
「これからみんなが暮らすことになる俺たちの国の名前は“リアン”連合王国だ!」
竜人たちから歓声が沸き上がる。この光景を前に見た気がする。というかリアンの意味も説明してないのに何で沸くのだろうか?
「リアンは「絆」という意味だ。だから俺は世界で1番恐れられている魔王だし、ここにいるシエラは俺を倒す宿命にあるはずの勇者だ。でも俺の考えではどんな種族でもどんな人間でも悪い心を持っていなければ平等に暮らすべきだと思う。だからこそのリアンだ」
この話をすると3人に言ったときは猛反対をくらった。でも俺は魔王だから、とか勇者だから、とかそういう概念を捨ててほしい。全ての人に伝えるのは時間がかかると思うけど国に住んでいる人たちには俺たちの事を知っていてもらいたいし、逆に知ったうえで納得してもらえないと暮らせないと思う。
そう言う事を3人に言ったら渋々了承してくれた。
「俺の事を知ってもなおリアンのために働いてくれるものは今一度声を上げてくれ!」
ここで誰も上げてくれなかったらとりあえず海に身投げするつもりだったけどそんな心配は杞憂だったみたいだ。
うおおおおーーー!!
大地が震えんばかりの声量でみんなが声を上げてくれる。気合も入っているのかみんなが右手を空に向かって突き出している。
「みんなの覚悟は伝わった。これからいろんな苦難があると思う。でも辛い時は周りの仲間に頼ってもいいし、俺たちに愚痴ってもらっても構わない。そのたびに俺はみんなが楽しんでもらえるように努力する。そうやって俺たちの絆を深めていこう!!」
うおおおおおおーーーーーー!!!
さっきよりも大きな声でみんなが同意してくれた。ここまで頼もしいなら十分だな。そろそろ転移するか。
「みんなありがとう!今から俺たちの城に転移する。動かないで待っててくれ」
ミラ達は何も言わないでも俺の体に触れてくれる。こういうところも絆のおかげだろう。
俺は魔力を集中させる。300人を城に一斉に送るように。
「行くぞ〈集団転移〉!」
草原にいる俺たちと300人の竜人が一斉に消える。
次に目を開ければそこは城の城壁の外だった。成功だ。わざわざ数人ずつ〈ワープ〉で転移させてたら結構な時間がかかるからどうしようかと思って夢の中でルシファーに聞いたら〈集団転移〉っていう高難度な魔法があると言い出したのでコツを教えてもらった。
練習は一応俺だけでしたけど全部成功だった。転移系の魔法は扱いが難しいらしく、失敗すれば行ったことも無い何処かもわからないところに飛ばされるらしい。1人の時は成功したけど300人以上の大人数でやるのは初めてだったから緊張した。
「よし、成功…した…な…?」
あれ?力が入らん。なんでだ?ちゃんと睡眠も栄養もとってるのに…。
「ソーマさん!?」
「マスター!」
「ソーマ!」
俺は〈集団転移〉を使った後、原因は分からないが意識を失った。
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「…またここか」
俺は気づけばまた精神の部屋にいた。まあ寝ている間に何回も来てはいるが、起きたままで来るのは3回目だ。
そしていつものようにルシファーが座っているので俺も横に座る。
「なあ、今回も俺は死んだのか?」
「んー、難しいね。今回に関しては僕も良く分からないかな。でも死んではいないと思うよ」
「じゃあ過労死とかじゃあないのか…」
魔力を使い過ぎると魔力が枯渇して動けなくなったり意識を失ったりするらしいけど魔力が無限の俺はそんなことにならないからな。となると〈集団転移〉に問題があったのか?
「〈集団転移〉が原因か?」
「どうだろうね。僕も何回か使った事はあるけどこんな事は起こらなかったよ」
ルシファーが使ったときは変化なしか…。じゃあなんでだろうな。というか戻れんのかな?
「俺は今回も戻れるのか?」
「戻れるよ。やろうと思えば今すぐに。でも君はしばらく寝ていたからその間に起こった事だけでも説明しておこう」
「ああ、頼む」
するとルシファーは精神の部屋に映像を表示させた。
ルシファーによると俺は1週間は寝ているらしい。ルシファーでもこんな経験は無いから原因不明との事だ。
そして俺が倒れた直後はミラ達や4神はもちろんの事、国民や竜人たちも大騒ぎになった。そして何よりも大変だったのがユカリらしい。
俺が倒れて意識不明だと聞いた瞬間大発狂してしばらくの間部屋に引きこもったらしい。そういう性格だから仕方がないとはいえちょっと怖いな。
ユカリが使えなくなった後もミラ達と残りのオニマル達で竜人の班の配属を着々と進めていたそうだ。俺がいない中でも少しずつ竜人たちも任された仕事を覚えて行っているらしい。
俺の看病はメイド班が行うはずなのだが、ミラ達がやると言い出したらしく今ではミラ、シェン、シエラの順で1日交代で看病しているらしい。
今では国の中は結構落ち込んでいる雰囲気らしい。何でもどこからか俺が意識不明の重体であるという事が国民にバレたらしく、毎日のように俺にお見舞いに来ようとする人が後を絶たないらしい。100人ぐらいしかいないのにすごいと思わざるを得ないな。
そんなわけで国民は俺が意識不明だから、とかなりのショックを受けているらしい。
ルシファーがこれらの情報をどうやって手に入れたかというと、まずルシファーは2つの方法で俺らのいる世界を精神の部屋から見る事が出来るらしい。
まずは俺は起きているとき限定で俺の視点をFPSのような視点で見る方法。そして2つ目がTPSのようにどこからかは分からないけどカメラで見るような視点で見る方法。
2つ目は俺が寝ていたりしても見れるから今回はこっちで見たらしい。音も聞こえるけど今俺の寝ている寝室でしか聞こえないから看病しているミラやシェンが交代するときの情報交換の時しか情報を手に入れられないそうだ。
「…そんなところかな?まあ僕はあんまり外の様子は見れないからミラ達から情報を集めるしかないんだけど」
「…なるほどな。いい情報もあればまずい情報もあるな。特に国民の士気が落ちているのはかなりまずい。それにユカリもか…」
まず良い情報としては国として少しずつ動き始めている所だろう。やっぱり班の動きが本格化したのが大きい。
そしてまずい情報としては俺が意識不明で寝ている事によって引き起こされた人々の士気の低下。これは国民もそうだが、特にユカリがやばい。
落ち込んでいるユカリは部屋から出ようとせず、更に食事も食べないらしい。ユカリも一応魔獣界から来たとはいえ食事をとらなければ死ぬ。人は水と食事なしで生きられるのは3日が限界らしい。水があれば1週間は持つらしいから水ぐらいは頑張って摂取していると考えれるな。
「ユカリはそろそろ持たなくなるな」
「そうだね。まだ少しは時間があるとはいえかなり肉体的にも精神的にもまずい状態なのは見なくても分かるね」
起きたらミラ達にも国民を含めたみんなにも謝罪はしなければいけないけど何よりもまずユカリのところに行ってあげるのが最初にするべきことだな。
「もう行くか。さっさとユカリの所に行って安心させてあげなくちゃな」
「うん。それが良いと思うよ。それと1つ、ソーマ君が倒れたことに関して心当たりがある」
「なんだ!?魔力か?」
何か俺が倒れた原因があるとするのならば解明しておきたい。あまりみんなを心配にさせるのは望まないからな。
「あのね?ソーマ君。君は最近気を張り詰め過ぎなんだ。こっちの世界に来た時からそうだけどずっと出来そうもない事を魔王の力を使って強引に解決したり、最初の方なんて睡眠やご飯の時間を削ってまでこの世界に適応しようとしてたでしょ?僕はそのツケが最近回ってきたんじゃないかな?って思ってるんだよね」
「………」
ぐうの音も出ない。ルシファーの言う通りだ。俺は確かにこっちに来てから少し頑張り過ぎてる。死なない事を良い事にミラ達が寝ている間も1人で特訓をしたりだとか出来もしない国王なんかになったりしたり。
最近全くと言っていいほど休めていないのは確かだった。俺自身の事を後に考えてみんなのためを最優先して動いた結果みんなが不安になるような結果が起こっているとするならばそれこそ本末転倒だ。
「…そうだな。睡眠や食事をとっているとはいえここに来てから本当に休んだな、っていう記憶が無い」
「でしょ?だからどうしろ、とかは僕は分からないんだけどさ。君自身がまずは自分の体を最優先に考えたらいいんじゃないかな?休むことも大事だよ?君は魔王だけど前世では魔王じゃなかったんでしょ?いきなり魔王とか強者らしく振る舞おうとしなくてもいいよ」
そうだな。ルシファーの言う通りだ。俺は間違ってたのかもしれない。俺が異世界から来た事を知っている人は少ないけどいないわけじゃない。それならしばらくは子供に戻ってもいいかもな。
「分かった。しばらくの間子供になってみるよ。ありがとなルシファー」
「いやいや、困ったときはお互い様だよ。それじゃあ今度は夢で会おう」
「ああ、またな」
そうして俺の意識はまた沈んでいった。
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また目が覚めると今度は城の俺の部屋だった。ベッドの天盤が見える。ベッドの脇にはミラが椅子に座ったまま寝ていた。どうやら夜中らしい。
器用だな、と思いつつもミラを起こさないようにベッドから降りる。そして違和感を覚えた。
「…?」
あれ?おかしい。こんなに俺の目線は低かったか?ベッドが床から50cmぐらいのところにあるとするならば俺の目線は100cm………まさか!
慌てて立て鏡の所に走る。それはもう全力で。足も遅くなっている気がする。というか感覚的に鏡までが遠い。
「…嘘だろ」
ミラが寝ているから叫びたい気持ちをグッとこらえたがどうしても現状を呑み込めない。
鏡に映っていたのはぶかぶかの服とズボンをはいた身長100cm程の俺。この姿は小学校に入ったときぐらいの身長だ。
なぜか俺は縮んでしまった。




